第六話 新たな配下達と黒い影
――前回のあらすじん!――
黒竜倒すやん?
↓
配下になって、少女も救って、世界滅ぼす予定がなんか村一つ救うやん?
↓
その村のみんな恩を返そうとしてるやん?←イマココってわけ。あらすじん終わり。
じゃ、本編行こか
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本編
「いや、ほんと大丈夫なんで!魔王なんで、自分!」
俺は両手を軽く上げながら、迫ってきた村人たちに向けて大声で叫んだ。
周囲は静まり返り、鳥の鳴き声すら止まる。
焦げた木の匂いと、まだ漂う煙の中で、村人たちの顔が順にこちらを見上げた。
魔王という言葉に反応したのか、やはりタブーだったのか、そう思った。
だが――返ってきた言葉は予想の斜め上だった。
「「なら、私たちを魔王様の配下にして下さい!」」
………何言ってんの?
村人達は真剣な表情をしている。冗談ではなさそうだ。
俺が固まっていると、ヴルドが隣でふっと鼻で笑い、軽く肩をすくめた。
《大量の配下が手に入ったな》
静かに、しかし皮肉めいた声音。
振り返れば、村人たちは次々と膝をついていた。
いや、いやいや、待て待て……!
大量だけども、大量すぎるわ!
俺は内心でツッコミながら、周囲を見渡す。
腰の曲がった老人、農具を持った男、小さな子どもを抱えた母親。
どう見ても“戦えない”村だ。
この村人達戦えないだろ……
だが、その瞬間、頭の中で何かが閃いた。
ん?待てよ。
俺は少し顎に手をやり、考え込む。
別に戦えるのが配下だけとは限らないよな。
食糧、武器、生活物資――。
よくよく思えば、俺たちはそれらをほとんど持っていない。
流石に、滅ぼすべき人間から買うのは嫌だし……。
俺は目の前の村を見渡す。
木々に囲まれ、川も近い。畑も広く、家々の煙突からはまだ火のぬくもりが残っている。
クロが原因の火事かも知れないけれど、、
ここの村人達に製造、そして食糧を提供してもらおう。
幸い、俺の城からこの村までは俺が行けば秒で着く。
森だし、自然豊かで使えるだろう。
「……じゃあ、配下として時折俺たちに食べ物を提供してくれ、あと武器なんかも作れれば欲しいかな、」
俺がそう言うと、奥の方――崩れかけた石の家から、杖をついた老人がゆっくりと歩み出てきた。
白い髭が風に揺れ、瞳には確かな光が宿っている。
「魔王様……助けてくれた御恩、あなた様に忠誠を誓います。」
静かな声だったが、村全体に響き渡るような重みがあった。
どうやら、ここの村長のようだ。
「ああ、世界滅ぼす魔王だけど、本当にいいんだね?」
俺が片眉を上げて問うと、村長は穏やかに微笑み、頷いた。
「ええ、私共としては魔王様の配下としていればおそらく少しは他の人間や魔物達からの、嫌がらせなどは避けられると思いますので……」
なるほど、盾みたいな感じね。
確かに、そういう理屈なら村側としても得がある。
条件も食べ物や武器の確保だけ、まぁいいか。
「わかった、じゃあここは俺の領土の一部にする。
もし誰か俺について聞かれたり、害を成してきたら、ここは魔王ヴェノムの領土と伝えてくれ。」
「はい!」
村人たちが一斉に頭を下げた。
その声は重なり合い、どこかの儀式のように響いた。
そうして、新たに大量の配下ができた。
……が、それよりも今、俺の裾を引っ張って離れない奴が一人いる。
先ほどからずっと、俺のすぐそばに張り付いている少女だ。
俺の身長は170ぐらいだけど、この子は160ぐらいかな。それよりも少し小さいかも、
獣人族特有の柔らかな耳が、ぴくぴくと動いている。
村を見渡せば、筋肉質な若者たちが木材を運び、子どもたちは尻尾を振って走り回っている。
この村全体が“ケモ耳と尻尾”を持つ獣人族の村らしい。
「この子……」
俺が視線を落とすと、少女は俺の服をぎゅっと握り、離れようとしない。
その金色の瞳が、まるで懇願するように揺れていた。
……ならば仕方ない。
「連れてっていいかな?」
俺がそう言うと、村長はしばし沈黙し、少女と俺を交互に見つめた。
そして、深く頷いた。
「だめ!ライト!」
突然、背後からアスの声が響く。
振り向けば、アスが両手をばたばたさせながら、怒ったように俺の前に立ちふさがった。
「なんでお前が断るんだよ……」
俺が呆れ混じりに言うと、アスは頬をふくらませ、視線を逸らす。
だが、そういえばこいつは、未来を見通せるんだっけか、、
村人たちは小声でざわめき、少女は俺の袖をさらに強く握りしめた。
いや、こいつ多分嫉妬してるだけだ。
そうして――俺は、この少女を城に連れて帰ることにした。
――魔王城――
俺がこの子を連れ帰って来たわけ――それは、さっきの言葉だ。
「行く宛がない」と、アテナが呟いたあの一言が、妙に胸に残っていた。
あの村の人たちは全員、もう俺の配下。
中には、早くも俺を“崇拝”し始めた奴までいる。
……早すぎだろ。
俺は玉座に腰を下ろした。
両脇には、シドウとアスが無言で控えている。
肩の上には、丸っこくなって眠そうなクロ――あの暴走したドラゴンが、今や小さなゆるキャラ姿で乗っている。
目の前には、もじもじと両手を握りしめながら立つ少女。
名はアテナ。
彼女は耳と尻尾をぴんと立て、緊張したように視線を泳がせていた。
村長の話では、あの村の中でも男たちを凌ぐ筋力を持っているらしい。
「えっと、、アテナ?」
俺が声をかけると、アテナは一瞬ぱっと顔を明るくし――次の瞬間、満面の笑みで俺に飛びつこうとしてきた。
「おっと……!」
その直前、シドウが素早く俺の前に出て、片腕を広げる。
「なんで、主人様! 、、お前誰だ!?」
シドウはアテナの腕を掴んで止めようとするが、
アテナの尻尾がピンと跳ねた。
次の瞬間、空気が一気に張り詰め、アテナが軽く腰をひねる。
ドゴォン――ッ!!
シドウの身体が弾かれたように宙を舞い、壁に叩きつけられる。
床石が砕け、砂煙が立つ。
「嘘っ、」
俺は思わず立ち上がり、口を半開きにしたまま固まる。
……投げ飛ばした。あのシドウを。
だが、アスはまるで予想していたかのように、退屈そうな目でその光景を見つめていた。
「やっぱりこうなるか」と言いたげな顔だ。
アテナは再び俺に抱きつこうと両腕を広げ、一直線に駆けてくる。
その動きはまるで猛獣の突進。
だが、アスが片腕を上げるだけで、空気がねじれる。
透明な壁のような魔力の膜がアテナの前に展開し、ぶつかった瞬間、アテナの体が弾かれた。
「なんだ、これ!」
アテナは混乱しながらもがくが、アスの魔法の拘束から抜け出せない。
床に光の輪が浮かび、アテナの足を縛りつけている。
「落ち着け、話を聞かせてくれ。」
俺は手を軽く上げ、アスに目で合図する。
魔力の拘束が少しだけ緩まり、アテナが息を整えた。
そこで、ようやく彼女の事情を聞いた。
――アテナの両親は、あの村を襲ったクロの暴走で亡くなったという。
もともと父は数年前に亡くなり、母も病に伏せていた。
彼女にはもう身寄りがなく、村の誰かが引き取ろうとしたものの――アテナ自身が拒んだらしい。
理由はひとつ。
「自分の力が強すぎるから」だ。
その力で誰かを傷つけることを恐れ、アテナは自ら距離を取っていた。
そんな時に、俺が現れた。
アテナは俺の強さを見て、“この人なら自分を制御できる”と思ったらしい。
だから、俺の配下として生きたいと。
別にいいが……戦闘員としては、あまり出したくない。
この城にいる以上、いつ何が起こるか分からない――俺は魔王だしな。
「アテナは若い、別に戦闘員以外でも……」
俺がそう言いかけた瞬間、アテナが顔を上げて叫ぶ。
「ダメだ!主人様の役に立ちたい……力は強いし、戦えるぞ!」
真っ直ぐな瞳。
その強い意志に、俺は言葉を詰まらせた。
そこへ、壁の破片を払いながら、シドウがふらふらと立ち上がる。
頬に擦り傷をつけたまま、彼はアテナの前に立ち、低く告げた。
「主人にタメ口の時点で、配下になれるか!」
シドウは睨みつけるようにアテナを見た。
しかしアテナは、ふん、と鼻を鳴らし、そっぽを向く。
その態度に、アスが小さく笑いを漏らした。
「……わかったよ、アテナ。
じゃあ、俺直属の配下として認める。戦闘面でもお前を俺は頼る場面が来ると思う、その時はしっかり戦え、だが死ぬな。いいな?」
俺がそう告げると、アテナはぱっと顔を輝かせて、尻尾をぶんぶん振った。
「うん!」
その笑顔は、あの戦闘時とはまるで別人のように無邪気だった。まだ若い、できれば怪我もさせたくないが仕方ない。
こうして、アテナという新たな配下ができた。
――夜――
城の上層。俺の部屋の窓からは、夜空に無数の星が瞬いている。
蝋燭の明かりが静かに揺れ、机の上には地図と羽ペン。
俺は窓際に腰を下ろし、外を見ながら、机の上に座っているクロへ問いかけた。
「なんで、あの村を襲ったんだ、それも今更。
お前のその性格からして、何もされてない村を襲わないだろ?」
クロは小さな前足で頭をかきながら、目を細める。
紫色の瞳が、どこか曇っていた。
「俺は、分からない。
急に、とてつもない怒りが湧いて、気づいたら主人様と戦ってた。」
「そうか、、」
俺は短く呟き、視線を夜空に戻す。
星々がゆっくりと流れ、風がカーテンを揺らした。
何かあったのか、あるいは何者かに干渉されたのか。
だが今は、詮索しても意味がない。
今は――配下を集め、体制を整える方が先決だ。
俺はベッドに身を預け、クロを頭の横に寝かせた。
小さな体が、ふわりと温かい。
「……おやすみ、クロ。」
「おやすみ、主人様。」
静寂。
外では風が塔を撫で、遠くの森で梟が鳴く声がした。
そうして、俺とクロはゆっくりと眠りについた。
そんな時、雲の切れ目から、ひときわ濃い闇が降り立つ。
月明かりを遮るその影は、人の形をしているが、風すら避けて流れるほどの“異質”な存在だった。
銀の瞳が地上を射抜く。
その視線の先――ライトがクロと部屋で静かに眠っていた。
「フフフ………アスタロトの奴、私に内緒でこんな面白い事をしていたとは……一声かけて欲しいものですね、、」
男は唇の端をわずかに吊り上げながら、愉快そうに呟く。
彼の声は夜気に溶け、まるで風そのものが囁いているようだった。
やがて、黒い翼が音もなく広がる。
月を背に、男は静かに舞い上がった。
その銀の瞳は、まだ地上の少年を見つめ続けている。




