第五十四話 天使と悪魔についての話
上げ直しです。最後だけ追加しました
しばらく土日以外は7時台か8時台にあげます
「裏切り者……居ないと思う。」
その一言を落とした瞬間、薄い緊張の膜が破れたように、全員の視線が一斉に俺へ向いた。焚き火の火が揺れ、配下たちの影が壁に伸びる。
《何故そう思う?》
ヴルドの低い声が頭の中に響く。
まさか真っ先にお前が聞いてくるとは思わなかった。
……まぁ、理屈じゃない。ただ──居るって思いたくない。それだけだ。
俺の脳裏には、こいつらと過ごした時間が次々とよみがえってくる。
初めてのクリスマス騒ぎ、プリンを巡る大乱闘、等々、
思い出の断片が暖炉の炎みたいに揺れて、胸に刺さる。
俺の最大の強みはこいつらだ。
そして最大の弱点もこいつらだ。
それほど大切な存在で、だからこそ──疑いたくなかった。
「それに……慎一郎の狙いは、きっと俺たちの仲違いも含んでるはずだ。裏切りには注意する。でも一番いいのは……誰も裏切らず、喧嘩もなく、慎一郎をぶっ倒すこと。手伝ってほしい」
言い終わると同時に、俺は自然と頭を下げていた。
普段なら絶対にしない仕草だ。だからこそ、空気が変わった。
隣に座っていたアスが、口元を吊り上げて横目で俺を見る。
部屋の明かりが彼女の瞳に反射して赤く光った。
「ライトの願いを聞かない配下が、この中に居ると思ってんの?」
アスはわざとらしく俺の顔を覗きこんでくる。
挑発でもなく、信頼を試すでもなく……ただ、嬉しそうに。
「やりますよ。最低でも世界滅ぼすまでは、仕えます」
シドウはいつもの穏やかな笑みを浮かべる。
焔が勢いよく立ち上がり、拳を突き上げた。
「やるっきゃないね!」
……最高じゃん。
思わず心の底からそう思った。
全員の顔が誇らしくて、眩しいくらいだ。
「それで、どうするんだ?」
ロバートが腕を組んで俺を見る。
だが、それに答える者は誰もいない。目を逸らし、視線を泳がせる。
──つまり、“何をすべきか分からない”ということだ。
「と、とりあえず……慎一郎や、この子みたいに刺客を大量に送り込んでくると思う。まずそれをどうにかしないと……」
俺は隣に座る雫の髪にそっと手を置いた。
雫は小さく肩を揺らし、俺の手の下でこくりと頷く。
「では、私は周辺の探索……それとサタンに何か聞いてきます」
サマエルが静かに立ち上がり、コートの裾を翻す。
「頼む」
「お任せを……我が君」
その背中が闇に消えかけた瞬間、気になる単語が引っかかった。
……ん?
今、サタンって言った?
「サタン?」
「ええ。私、サマエルはサタンとは古くからの友人ですので」
悪魔同士の古い縁、というやつか?
いや、そんな軽いノリで言っていい名前じゃないだろ。
……まぁ、いいか。
気を取り直して、俺は全員に指示を出す。
「お前らも聞き込み頼む。それと獣人族の村の防衛を強化しろ。
ネメアから連絡が来たら即報告だ」
「はい!」
「任せろ!」
元気のいい声が部屋に響いた。
少し胸が軽くなる。
よし。じゃあ……
「雫、俺の部屋来い」
「うん! お兄ちゃん!」
雫はぱたぱたと俺の後ろをついてきた。
部屋に入ると、外より少し冷えた空気が肌に触れる。
「……雫。これから命を賭けることがあると思う。
今のうちに、帰りなさい」
雫がぱちぱちと瞬きをした。
「どうやって帰るの?」
……それが分かってたら、俺だってこんな長く異世界にいるわけないんだよ。
「それは……どうにかする」
絶対無理だろうな、と思ったけど言わなかった。
「私、戦えるよ!ね、アル!」
雫がスケボーの上で寝そべっていた黒猫を呼ぶと、猫はゆっくり体を起こし、尻尾を揺らした。
「まぁ、そうだな……」
──喋った。
は?
え?
めっちゃ欲しい。
《要らんわ》
ヴルドが冷静にツッコんでくる。
「誰?」
猫が胸を張って答えた。
「俺はアザゼル!堕天使で、今は雫の保護者だ!猫の姿なのは訳あって、、弱ってるだけ!」
声は少し低く、どこか誇らしげだ。
「雫は強いのか?」
「強いぞ。星の力が少し使える」
「私、水星と月と金星!」
雫は嬉しそうに胸を張る。
「天使が言ってたんだ。俺様は雫を見つけて飛び込んだ!」
なるほど、アルは雫を守るために勝手に同行しているわけだ。
にしても、星の力……俺の星界律が使えるってこと? なんで?
《お前の前の肉体の心臓を移植したと言っていた。関係はあるかもな》
……やっぱりそこに繋がるのか。
「一つ頼みたい。
戦力がもう少し欲しい。悪魔でも天使でもいい。仲間になりそうな良いやついないか?」
俺がそうアルに聞いてみる、アルは少し悩んだ末に答えてくれた。
「いるにはいるが……ミカエル、ルシファー、ベルゼブブ。
でもアイツらは“他の世界”にいる」
他の世界?
「なに言ってんだコイツ」
「セリフと内心逆だぞ?」
危ね。
アルは尾を揺らしながら説明を続ける。
どうやらアルが言うには、世界は一つじゃない。
天使や悪魔は複数ある世界を自由に行き来できる。
悪魔と天使は世界の創造される時からいるため、どの世界にある悪魔、天使もそれぞれこの世には一体しか存在しないのだ。
そして彼らは記憶をそれぞれ共有しているため、他世界の者達の経験も己のものとして扱える。
賢い悪魔などは、他の世界の悪魔が見た他の世界の魔法を使ったりもするそう、
「……ってことだ。なぁ?アスタロト……」
アルが言い終わった瞬間、扉の外から声がした。
「あれ、バレてた?」
アスがクッキーをかじりながら部屋に入ってくる。
「本当なの?」
「うん。そいつの言ってることは本当」
アスは肩をすくめる。
「アスタロト……」
「なに?雑魚」
挑発癖のあるアスらしい言葉が部屋に響いた。
……色々わかった。
そして雫が戦えることも。
俺は深く息を吸い、次にすべきことを探すのだった。
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「それで、、話というのは、、」
集団の中ある老人がら1人そう話を切り出す。
ヴェルデンの森から遠く離れたある王国、そこの階級の高い者たちが一斉に一箇所に集められた。
「なんだ、そう緊張することじゃない……
禁呪に関して一つ問いたい、そして………お前たちの王国を、取るため………会談といこうじゃないか、」
ある一室に集められた一同。
長い机の上には、豪華な食事、
そして目の前にいたのは、慎一郎そしてその一味。
彼らは、次の作戦をすでに始めていた……




