第四十九話 友好的魔王
明けましておめでとうございます。
今年も作品達をよろしくお願いします、
今回、あんまり物語進まなかったです。
アストラル・バルハラ砂漠
地平線まで続く砂海が、太陽に照らされて金色に揺れている。砂風は頬を刺し、乾いた空気は喉の奥を焼くようだった。
そんな過酷な土地に建つ、唯一のオアシス都市。その中央に、砂岩で組まれた巨大な建物、冒険者ギルドがある。
昼間でも薄暗いギルド内では、砂漠帰りの冒険者たちが酒を片手に疲れを癒していた。壁には依頼書がぎっしりと貼られ、カウンター前では行列ができている。
その一角で、妙に目立つ声が響いていた。
「だから、、何回も言ってるでしょ、」
「ですから、その要件がここでは通じません。」
受付嬢が困り顔で対応し、向かいの女性はテーブルを叩きながら顔を真っ赤にしている。声の強さで周囲の冒険者が振り返るほどだ。
「あんたが悪いんでしょ、あんたが悪い!
通じないのはこっちとそっちの言語能力!
ほらさっさと……
上のもんよべや!!」
語尾が突然低く落ち、響くような威圧感を帯びた。
「また変なのが来たぞ……」と、常連らしき冒険者が肩をすくめる。
「はぁ、」
女性の同行者らしき青年が、頭を抱えるように深いため息をついた。
「ねぇ知ってる?IQが20違うと、会話が成立しないんだよ、!」
「………」
青年は顔を覆った。もういたたまれない、といった様子だ。
「あの、恥ずいっす。
それに、それ多分俺らが下の方っす。」
「え!?」
女性がぎょっと目を見開く。
その反応がまたギルド中の視線を集めた。
(この人、ほんとだるい。
これ以上この世界でどんぱちやらせるわけにはいかないな。)
男は眉間を押さえながら心の中でつぶやく。まるで“保護者”のようだった。
――――――――――
場面は変わり、魔王城。
「我が君!お帰りなさい!」
サマエルが深い礼をしながら出迎えた。城門は黒曜石のように光り、吹き抜ける冷気と静寂がどこか荘厳さを感じさせる。
帰る場所があるというだけで、胸の奥がじんわりと温まる。
「おう!今帰った!
で、他の配下達は?」
そう尋ね、城へ足を踏み入れようとしたとき
「やぁ、遅かったな。」
「待ちくたびれたぞ、ヴェノム殿。」
バルコニーの陰で、紅茶とコーヒーを嗜む影が二つ。
ルシアンとバフォメットだった。くつろぎすぎだろ。
「なんでまだいるんだ?」
「おい、戦い援護してやったのになんでそんなに早く帰って欲しそうなんだ?」
ルシアンがわざわざ顔を近づけてくる。洞察力が無駄に高い。
なんで分かるんだよ。
「分かるに決まっているだろう、」
「なんでわかんだよ!」
まるで心を読まれている気分だ。いや、本当に読んでるのかもしれない。
二人は負傷者の迎えが目的だったらしい。
死者ゼロ。その事実だけで胸が軽くなる。
「そうか、さっさと帰宅してくれ」
「お前覚えてろよ」
ルシアンが不穏な笑みを浮かべて去っていき、続いてバフォメットも配下を連れて退場した。
今度お礼の品でも持って行こう。
まぁ、よし、静かになった。
「じゃあ、これからどうする?」
「世界を滅ぼしましょう」
サマエルが清々しく頭を垂れる。さらっと世界滅亡を提案するのはやめて欲しい。
魔王にはなったけど、いきなりそれは極端だ。まず準備が必要だし、敵も多い。
そこで、まず数人の魔王を味方に引き込むことに。
クレアやサタン、ルシアンやバフォメット以外で、頼れそうなやつ。
そのため、俺は連絡先を受け取っていた魔王達で使えそうなやつに声をかけていった。
「あ、もしもし……」
「んだよ?」
ネメアだ。猫科獣人族の魔王で、評議会で俺に拳をぶちかましてきたやつ。
「お前のこと、オレさま嫌いなんだよ!」
うわ……ストレートに嫌われてる。
まぁいい、これでも前世はまだ陽キャ側だ。これぐらいならどうにかできる。
「今からそっちいくわ!」
「は?」
そうして急遽、ネメアの領土へ向かうことに。
同行者はアテナ、イバラ、アス。
理由は単純。“ネメアと同じ匂い”つまり、頭の回転が独特なタイプが揃っているからだ。
ネメアの領内は王国に近い位置にあり、門周辺には獣人族が大勢暮らしていた。温厚そうな顔つきの者も多く、活気のある街並みだった。
「お待ちしておりました。ヴェノム殿」
年配の獣人が深々と頭を下げ、俺たちを城へと案内する。
城内は獣人族らしく、分厚い毛皮や木材を使った暖かな装飾が並び、外とはまるで別世界のように居心地が良い。
案内された2階のバルコニーでは、ネメアがソファーでくつろぎ、配下が数人控えていた。
「主人様!同じ匂いがする!獣人!」
アテナがテンション高めに叫ぶ。確かに“アホな匂い”は似てる。
《そういうことじゃないだろ……》
ネメアは気づくと、座るよう手で促してきた。
「よぉ、悪いな呼んでもらって……」
「それはいい。同じ魔王だ。」
思ったより友好的だ。
しかし、その次の言葉が衝撃だった。
「それよりいいのか?お前今色んな人から命狙われてるだろ?」
「え?」
理解が追いつかず、硬直する。
「え!知らないのか?」
ネメアは目を丸くし、耳をぴんと立てた。
そのまま、俺が知らない“重大な事実”を語り始めた……




