第四十八話 世界の変化
今年も終わりです。ここまで読んでくれてありがとうございました!今年はお世話になりました!
今年最後の話です。第48話お楽しみください。
良いお年を!
勿論、1月1日の12時台に第49話を投稿します。
”双魔同体“──それは、一つの肉体に二つの魂が共存し、互いに干渉し合いながら存在する禁忌の状態。
肉体の中心で二つの魔力が常にぶつかり合い、わずかに空気が歪んで見えるほどの異様さを帯びるもの。
“星界律”──それは、この世に存在する全ての惑星の性質と能力を強制的に借り受け、己の魔法体系として扱うことを許す、世界の根幹すら踏み抜く規格外の力。
星が持つ重力・熱・軌道・理・生成と破壊、そのすべてを術式に変換できるという、まさに世界側が恐れるべき能力。
にもかかわらず、それらでさえこの世界の禁呪の中の“一つ”に過ぎないという事実が重くのしかかる。
「え、なんで?」
思わず声が漏れた。胸の奥にざらりとした違和感が広がる。なんで、それらが禁忌なのか、、、
強いから?
「昔からのお堅いルールさ、精神が不安定になる。魔力も不安定、いつかお前自身がお前を壊すかもしれない。」
サタンはゆっくり立ち上がり、影がこちらに伸びてくる。彼の足音は大理石の床を重く打ち、王の威圧感をそのまま響かせていた。
そして間近まで来ると、大きな手が俺の頭に触れた。冷たいのか熱いのか分からない、不思議な感触。
「まぁ、そうなったら俺たちがお前を殺す。世界が壊れるのはまずいからなぁ。………耳怪我してるのか?」
頭を撫でる手が耳元に触れようとした瞬間、俺はその腕を掴んで引き下ろした。
「そうか、、勝手にしろ。ただ、俺はまだ死ぬ気はないしこの世界を元々壊す気でいる。問題ある?」
わざと軽く言い放つと、サタンは一瞬だけ目を細めた。
「大問題だが、、まぁここにいる魔王達だって利害が一致しているだけ、お前みたいに滅ぼそうとしている奴はいる。勝手にしろ、都合が悪かったら止めるだけだ。」
サタンは肩をすくめ、ゆっくりと席に戻った。
「昔からあるルールに則るのは俺は嫌いだ。何かあったらすぐ止める。それでいいよな? ネメア、」
「サタンが言うならいいけど、、」
ネメアは肩を落としながらも従うように下がった。
そこからは、各魔王が治める城や領地の境界線、互いの干渉範囲、国としての体裁など、政治的な話題が続いた。魔王たちの声と魔力が渦巻き、空気が熱く濁った。
一時間ほどして、サタンがパン、と手を叩いた。
「そろそろお開きにする。」
「え〜もう終わり?」
クレアが頬を膨らませたが、サタンは苦笑しながら宥めた。
「まぁ、近々また開くさ」
魔王たちの集会はそのまま幕を下ろす。
俺たちが巨大な黒い門に歩み寄り、揺れる闇の膜へ足を踏み入れようとした瞬間、
背後から低い声が響いた。
「お前に二つ言っておく事がある。」
振り返るとサタンが片手を上げて制止していた。
「なに?」
再び席に向かい合って座ると、妙な緊張が走った。
「一つは魔法についてだ、魔法の種類、系統というのは幾つかある──」
サタンの声は淡々としていたが、目は鋭く、魔王としての経験を語る重みがあった。
破壊系統、属性系統、神聖魔系統、呪詛系統、
時間系統、空間系統、精神系統、生命系統、
契約系統、死霊系統、神名冠系統、魔王系統、
禁呪系統。
列挙される度に、まるで背後に象徴となる幻影が立ち現れるかのような圧があった。
「主なこれだ。上手く使えよ?」
「長いな。でもそんなこと分かってるよ、?」
(まるで俺が全部使えるかのように言ってるけど、使えないし、覚えられないよ?)
ため息が落ちる。
「はぁ、お前は本当に軽口を叩くな、クレアにそっくりだ。」
あんなヤツと似てる、それはそれで心外だ。
《ほんと、案の定というべきか、そっくりだぞ?》
ヴルドが追い討ちをかけてくる。
泣いちゃうよ、?
「それで、? 後一つは?」
「人間をうまく使え、世界を滅ぼすならな? それと、人間の恨みを無闇に買うな、殺し過ぎるな。アレだったら威厳を見せて逆らえなくしろ、そっちの方が世界を新しくするには早い。」
「……? ありがと、、なんでそこまで言ってくれるんだ?」
疑問は当然だった。サタンが俺に肩入れする理由などない。
「……まぁ、平和が望みだ。」
その目は嘘をついていない静かな色をしていた。
「だが、その平和を守れるなら、さらにより良くなるならお前に賭けてみても面白いと思ってな、アスタロト、お前が主人として信用してるんだろ?」
言われて振り向くと、アスが不機嫌そうな顔で腕を組んでいた。
「お前に会うとほんと面倒くさい。」
「昔からの仲だろ?それより俺の右腕にならないか?直接の火力なら俺とトントンだろ?」
え、うちの子そんな強いの……?
「誰がお前なんかの右腕になるか、べー
僕はライト一筋だから、」
アスはそう言いながら俺の右腕に抱きついてくる。
舌を出し、サタンを挑発しているようだ。
「ライト……か、釣れない奴だな、もう少し素直だったら可愛がってやるのに、」
「殺すぞ。」
「お前なら出来そうだな?」
空気がギラリと火花を散らす。サタンは余裕の笑み、アスは完全に牙を剥いていた。
「ほら、帰るぞ。話は以上ですよね?」
シドウが間に割り込んだ。
「ああ、勿論。」
シドウはアスの腕を掴んで引きずる。
「シドウ!離せ!あいつに1発お見舞いを……」
「はいはい、帰るぞ」
サタンはその様子を見て小さく笑みを漏らした。
「しかし、いい配下だな。良く手懐けたものだ。三代悪魔の一柱である悪魔アスタロトに、
鬼の王である酒呑童子。だろ?」
「まぁね、でも俺は手懐けてない。あいつらが来たんだよ。アスタロトに酒呑童子。俺の自慢の配下だ、アイツらに何かしたら俺はお前でも容赦しないけど?」
「……そうだな。ほら、さっさと帰れ。満点、合格だ。」
黒門を抜け、異界の空気が薄れていく。背中で門が閉じる音が響いた。
その残った部屋にはサタンと──帰ったはずのクレアがいた。
「どう?」
「敵対出来る訳ないよな、星界律持ちなんて今も昔も予想してなかった。チートくんだね。」
サタンは酒瓶を揺らしながらにやりと笑う。
「そういえば双魔同体の話し出したのに、星界律には一切触れなかったね。話さなくてよかったの? 始祖と、死相、僕のこと……」
クレアが自分を指差す。
「まだ早い。いずれ話す。お前は会えてよかったな、」
「いい奴でよかったよ!」
二人は静かに酒を注ぎ直した。
するとサタンが少し真剣な表情になる。
「それはそれとして……」
「最近、世界が震えている。不安定にあるんだ、
転生者、転移者が増えている、いろんな時代、世界からだ。ライトが関係しているかもしれない、警戒しろよ?」
「分かってる。」
クレアは短く答えた。
世界はすでに、動き始めていた。
ーーーー
遠い砂漠──地平線が揺らぎ、乾いた風が制服の裾を激しく揺らす。
砂に足を取られながら、二人の男女が歩いていた。
「なんなの!?どこここ?」
女は汗まみれの前髪を払い、怒りと困惑に満ちた声を上げた。
「そんな体力使うような大声言わないでくださいよ、元は俺たちが死んだのが問題でしょ? ヴェノムっていう魔王を倒す。そしたら“復活”させてもらえるって……」
男は眉一つ動かさず淡々と答える。
「そのヴェノムってのはどこにいるのよ!!」
女は喉が枯れそうなほど叫び、空に向かって拳を振り上げた。
とある海岸──
岩場の上、白波が砕ける音が静寂の中に響く。
正座した老人が、一振りの刀を膝に置き、周囲に倒れた盗賊たちの亡骸を前に目を閉じる。
「魔王ヴェノム……誰のことか、ともかく、倒さねば……」
白髪の長髪が海風になびき、皺だらけの指が刀の鍔をゆっくり撫でた。
世界は今、混乱に沈んでいる。
魔王ヴェノムを倒すために選ばれた異世界の者たち死者が勇者として送り込まれ続ける。
天使側も追い詰められ、判断を誤りつつあった。
そしてその全てが、ライトへの“怒り”を蓄積させる事になる。
元マルシオン領土、
「魔王ヴェノム、準備はできた。聖騎士として、生かしておけない世界を平和にする。これより、魔王討伐についての作戦会議を始める、」
ヴァルヴィスは重々しい声で宣言した。
サタンの人間の恨みを買うな、これを伝えるのが少し遅かったのかもしれない。
伸び放題の髭、荒れた目元。年月の重さがその姿に滲んでいる。
集まった聖騎士たちもまた真剣な表情で彼を見つめていた。
「魔王を、、ようやく、ここで断ち切る。ライト……待ってろよ。」
(お前を地獄に送ってやる、)
ヴァルヴィスの胸に燃えるのは、純粋なる復讐心だった。
後半戦入ります。
って言っても、もうゴールは見えてますので、一先ず
これで第三章:魔王群像篇が終わりです。




