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第四十五話 相方

しばらくは12時台固定にしようと思います

 ヴェイドの城が悲鳴を上げる。

 本当に、そう“聞こえた”。

 黒曜石の柱に亀裂が走り、壁面は蜘蛛の巣のように崩落寸前。

 玉座の間には粉塵が漂い、天井からは細かな石片がばらばらと落ち続けていた。


 原因は、

 いま目の前で激突している 二人の悪魔 に他ならない。


「お前、ヴェイドの四天王だな?」

 アスが笑みを浮かべ、軽く首を傾けて言う。


「だからなんですか?アスタロト!」

 アムドゥスキアスは額から流れた血を手で拭い、

 ひと息で止血しながら、上空に佇むアスタロトを睨み上げた。


(“厄介”この言葉は、彼女のためにあると言っても過言ではない)

 アムドゥスキアスは心の中で呟いた。


 ────────────────────


 ーー数分前ーー


 黒い大理石を敷き詰めた広間。

 その中心で、玉座に深く腰掛けたヴェイドが、

 自分の隣に立つ最初の配下を静かに見つめていた。


「アムドゥスキアス、準備はできているな?」


「はい。」

 淡々とした声だが、迷いは一切ない。

 その返事に、ヴェイドはゆっくりと頷く。


「では、戦争を始める。

 我輩は少し、敵陣に行って楽しんでくるとしよう、」


 微笑みを浮かべる主に対し、アムドゥスキアスは短く宣言した。


「アスタロトという悪魔は、私が摘みます。」


「……勝手にしろ、」


 興味がない、という態度だった。

 なぜ悪魔たちがあれほどアスタロトを恐れるのか、

 ヴェイドには理解できていない。


 アムドゥスキアスがその思考を見透かすように、

 一つ忠告を落とす。


「もしも、、居た場合。遭遇した場合、お知らせください。一番、舐めてはいけない。気をつけて、」


「わかっておるわ、」


 ヴェイドは確信していた。

 アムドゥスキアスは負けない。

 そして同時に、アスタロトの実力を軽く見ていた。


 ────────────────────


 現在


「そんなもん?」

 アスが楽しげに微笑む。


 アムドゥスキアスは、砕けた床を蹴り、最短距離で拳を叩き込む。

 しかしアスタロトは、風の流れのようにそれを躱し、

 回転しながら足を振り抜いた。


 蹴りは正確に急所を捉え、

 アムドゥスキアスの身体は壁に叩きつけられ、

 城はさらに大きく軋んだ。


 アスタロトは軽やかに玉座へと腰を下ろす。


「う〜ん、うちのヴェノムが座っている玉座の方が座り心地いいかな?」


「ヴェノム……あなたの主人ですか?」


「そうだけど……」


 アムドゥスキアスは瓦礫を払いながら立ち上がり、

 心の中で呟く。


(なんで、、コイツは……)


「負け確……知ってましたが、私は魔王ヴェイドの相方、負けを確信してもそれでも貴女を倒す!」


 その瞬間。


 城中にラッパとトランペットが混じったような、

 異様な“号音”が響き渡った。


「号冠昇華ごうかんしょうか……」


 アムドゥスキアスの額から、禍々しくも神々しい

 一本角が生える。

 魔力が暴風となって周囲を揺らし、

 アスタロトの髪さえ揺らした。


「強くなったね。」


「貴女に言われても嬉しくないですよ……」


 視線が交錯し、空気がひび割れるほど屈強な緊張が走る。


「じゃあ、僕は魔王ヴェノムの相方。

 勝ちを確信しているけど、それでも君に本気で向き合おう。」


「……わかりました!」


 アムドゥスキアスが指を鳴らし


破号衝(ブラストホルン)!」


 放たれた衝撃は空気を圧縮し、

 窓ガラスは一斉に砕け散り、

 アスタロトの足元が大きく歪んだ。


 直後、アスタロトが肉薄する。


 だが、それよりも速かった。


哀嘩音(ディスコードノート)


 空気が一瞬だけ沈黙し、

 次に響いたのは不協和音。

 アスタロトの動きが明らかに鈍る。


(精神支配か……)


 アスタロトの身体が大きく弾かれ、

 城とは反対方向へ吹き飛ぶ。


 速度、瞬発力はアムドゥスキアスが上。

 破壊力、戦闘IQはアスタロトが上。


 その差が視覚で理解できる衝突だった。


「終わりです、」


 手をかざし、技が放たれようとしたその瞬間、、

 アスタロトが微笑んだのが見えた。


強制解除(きょうせいかいじょ)!」


 アムドゥスキアスの魔法が、まるで初めから存在しなかったかのように消える。


 アスタロトが距離を詰める。

 アムドゥスキアスは新たな技を仕込む。

 だが、


虚星転流(きょせいてんりゅう)……」


 アムドゥスキアスの魔法陣が吸い込まれた。

 アスタロトが静かに微笑む。


「防げる?」


 アスタロトの唇がゆっくりと開き、


黒界歪滅(こっかいいめつ)


 視界が黒に落ちた。

 空気が押し潰されるように震え、

 周囲の大地が静かに“削られていく”。


 爆音も叫びもない。

 ただ、世界そのものが消えていく。


 アムドゥスキアスは吹き飛ばされ、

 身体は傷つき、意識が薄れていく。


 アスタロトは周囲を歩き回り、

 やがて見つけた。


 仰向けに倒れたアムドゥスキアス。

 片腕が失われ、胸元には深い衝撃痕が刻まれている。


鳴冠盾(レゾナンスシールド)……なんとか防いだんですがね、」


「なぁ、お前の実力ならいいと思うけど、

 うちに来る?主人も……」


「断ります。主人は裏切らない。」


 アムドゥスキアスは静かに空を見上げながら言う。

 その瞳に迷いはなかった。


「だよね、悪魔はそう言う。知ってたよ。」


 アスタロトは隣に座る。


「貴女には勝ちたかった、勝てないと分かっていても……一つ最後に聞かせてください、私は時期に死ぬ。その前に……」


「ああ、なに?」


「何故、貴女程の悪魔が、主人と慕い誰かの味方につくのですか?他の二柱の真似事ですか?」


「、、まぁいいか、笑うなよ?

 それはね……………」


 アスタロトは空の星を見上げ、

 ゆっくりと語り始めた。


「ハハッ……そうですか、貴女も意外にバカなんですね。」


「バカ言うな、だから言いたくなかったのに、」


 頬を軽く膨らませるアスタロト。

 アムドゥスキアスは微笑んだ。


「……そうですか、、知れてよかった。」


 アムドゥスキアスは心の底からそう思った。


(ヴェイド様、先に行きます。

 ご武運を……)


「アムドゥスキアス?」


 返事はない。


「そう、、じゃあ行くね。

 それと、僕に言われても嬉しくないかもだけど、案外楽しめた、強くてカッコいいじゃん……

 さて、おなか減った。城戻るか……」


 アスタロトは伸びをしながら、

 静かに歩き出した。


 ────────────────────


 戦場 ヴェルデンの森付近


 シドウ率いる第2部隊は気づいていた。


「なんで、あの化け物がここに居るんだよ、

 いつの間に……」


 剣を振るいながら進むシドウ。

 枝葉が舞い、血ではなくモンスターの破片が散る。


 その先に、


「ん?

 お前が、ここで一番か?いや、バフォメットが居るのか……」


 そこに佇んでいたのは、魔王ヴェイドだった。

 黒いマントが風に揺れ、圧力だけで周囲の魔物がひれ伏す。


 シドウは一気に斬りかかる。


 ヴェイドは腕を軽く動かすだけでそれを受け止め、

 鍔迫り合いへと持ち込む。


「城付近にいた連中は片付けた。

 今頃治療を受けているか、死んでいるだろう。」


「クソ魔王……」


 刃と刃が擦れ、火花が散る。

 2人の力がぶつかり、地面がひび割れる。


「中々の強さだな。来るか?うちに、

 四天王がもう二人しかいないんだ。お前を加えてもいい……」


「悪いが、浮気はできない。

 主人一筋なんでな……」


 シドウは素早く距離を取り、構え直す。


 ヴェイドが軽く目を閉じた。


「……そうか、、ん?

 ………逝ったか、アムドゥスキアスよ、」


 その声には、わずかな哀悼が滲んでいた。


 そして、

 ヴェイドが一歩前に踏み出す。


 土煙が舞い上がる。


 二人の激突が、これから始まろうとしていた。

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