表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/61

第四十四話 正面衝突

28日に最新話をあげます

「魔王……!」

 一人のエルフがそう言って、ヴェイドを見つめる。

 張りつめた森の空気が、その一声で震えた。


「エルフか……」

 ヴェイドはゆっくりと振り向く。

 振り返っただけなのに、周囲の風が止まったように感じる。


 そこには一人のエルフが、両手をかざし風属性の魔法を放つ。

 青白い風が渦を巻き、木々の葉がざわめく、

 しかし。


 だが、すぐにヴェイドによって腹部を切られてしまう。

 音さえ聞こえない速さ。エルフは衝撃に息を呑み、その場で崩れ落ちる。


「っ……!」


「属性系統、効かん。

 準備運動にもならんわ、」


 そう言って刀を鞘に収める。

 刃が鞘に収まる音だけが、静かな森に響いた。

 エルフは、その場に倒れこんでしまう。


「お前が魔王か……」

 その時、森の奥から低い声が響き、影が歩み出る。


 姿を現したのは、大柄な狼の姿をしたバフォメットの配下であるスコル。

 毛並みの間から黒い魔力が立ち昇る。


「喋る犬か?」


「……!」

 スコルは唸り声をあげ、地面を蹴った。


 その時、スコルが体当たりを仕掛ける。

 大木が揺れるほどの突進、だが。


 ヴェイドは直ぐに避け、高く足を上げ蹴りを喰らわす。

 真横からの一撃に、スコルの巨体が宙に浮く。


 スコルは吹き飛ぶが、着地と同時に魔力量が上がっていく。

 呼吸が荒くなり、全身の毛が逆立ち、空気が震え始めた。


 ヴェイドと距離を離し、


黒牙衝(こくがしょう)!!」


 スコルの咬み技が、距離を取ったはずのヴェイドの腕を削る。

 風を切る黒爪のような衝撃波、確かに届いた。


 距離を取りつつも、あのヴェイドに攻撃が入った。

 勝てる、、スコルはそう感じた。


 だが、ヴェイドがスコルに向かい手をかざす。


 その瞬間、スコルの前足が吹き飛んだ。

 光のない爆ぜる力が直撃したのだ。


「……これでおあいこか?」


 スコルは朦朧とする意識で、その場に倒れ込む。

 ヴェイドは攻撃をわざと喰らったのだ。

 相手である、スコルが少しでも勝てると錯覚させるために……


 倒れた前足から、黒い脈のようなものが心臓に向かって広がっていく。

 腐食だ。

(ここまでか、、何もできてないじゃないか……

 バフォメット様、)

 スコルには悔いが残った。


 だが、、


「いや……お前はよくやったよ!」


 その時、森に銃声が響く。

 乾いた一撃が、夜気を裂いた。


 ヴェイドは自分の眉間を正確に狙った銃弾を、間一髪で避ける。

 弾丸が背後の木を抉り、木片が散った。


(なんだ、この男……

 気配が察知できなかった、というか、魔力がない?)


「チッ、仕留め損なった……」


 《異変は察知できたかい!?》


 ノクスからそう伝達が来た。

 ロバートは、異変に気づいたのだ。


 ヴェイドにいくら余裕があるからと言って、ずっと玉座に待機しているのか?

 いや違う。もしロバート自身がヴェイドのように戦争好きな魔王なら……

 余裕があればあるほど、戦場に赴き好きなだけ楽しむ。


(やはり単独できたか、、)


 ロバートはナイフを使い、一気に距離を詰める。

 刃が月光を反射し、一直線に魔王へ向かう。


(この動き……)


「お前聖騎士か!」


「昔の話か?」


 ロバートは一か八かで、ここまで一人で来たのだ。


 《魔王がいるなら直ぐ下がれ!》


 ノクスがそう忠告をする。


 だが、ロバートは理解していた。

 先ほどからライト達からの伝達がほぼ来ていない。

 もしヴェイドが関係しているのなら、


(コイツが何か遮断したりしているかも、、なら

 ここから早いとこ追い払う!)


 今後のため、ロバートはなんとかこの森を死守しなければならない。

 それに、、ここにいると言うことは……


「お前の考えている通りだ、近くにいたエルフに獣人族は再起不能にしている。

 安心しろ、死んではないさ……弱者に興味はない。」


 ヴェイドはまるで、こちらの考えを全て読んでいるかのようにそう答える。


「クソが……」


 ヴェイドはロバートのナイフを受け止め、腹部を殴る。

 鈍い衝撃がロバートを吹き飛ばす。


 岩に当たる直前、、


「間一髪……大丈夫ですか?」


「スコル!!」


 ロバートを受け止めたのは、バフォメットの配下マルキオール、リリスだった。


「配下共が集まったか……面倒だな、」

 ヴェイドが吐き捨てるように言う。


「……オラ!!」


 ヴェイドが直ぐに、後ろから首を切ろうとした剣を受け止める。

 金属音が弾け、火花が散った。


「グラウのバカ!なんで、不意打ちなのに声出しちゃうの!」


「しまった!!流石魔王……やるな!」


「グラウ殿……気を付けてください、」


 そうしてやってきたのは、ルシアンの配下セリスにグラウ、ドラムだった。

 ロバートは安堵した。


 これならいける、、

 だが、油断は命取りだ。


「俺のことは気にするな、城に戻るぞ……」


 隙を見て、リリスがスコルを逃す。

 スコルはスイとノクスのいる城へと戻った。


 そのついでに、ノクスはあたりの怪我をした獣人族にエルフも連れて戻ったのだった。


 リリスの白い長い髪が、月に輝く。


「……スコルをあそこまで、、許さない。」


「そうか……数は6と言ったところか?

 全員まとめてこい、相手してやる。」


 ヴェイドは黒刀を抜き取り構える。

 その気迫に、森の空気が揺らいだ。


 《そっちどうなってるの?……》


 呆れながらノクスがロバートにそう問いかける。


「……すまん、少し遅くなる。

 早く上がるわ。」


 そうして、六人一斉にヴェイドに向かっていく。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ライト!」

 クレアが俺の名前を呼ぶ。

 その声に、胸の奥の緊張が一気に引き締まった。


 ああ、気づいている。

 俺たちが今いる所、ヴェイドの魔王城だが、そこには空席の玉座、過去の遺物の数々。

 壁には古代文字が刻まれ、魔物の標本のような物が静かに並び、常に小さな魔力の渦が空気を揺らしている。


 だが、なにやら気配がする。

 重たい魔力……俺の胃の底をぐっと掴むような圧力。


「おやおや、人様の家にそんな人数で………しかも土足で来るなんて迷惑極まりないですよ?」


 俺たちの入ってきた扉からそいつはやってきた。

 カツ、カツ、と硬質な靴の音が響き、まるで舞台に役者が登場するかのような存在感だった。


 そして、扉の鍵を閉める。

 ゆっくりと、確実に。

 閉ざされた空間に、逃げ道はない。


 どうやら……


「出す気ないみたい。」

 エルが先に言ってくれた。

 そのようだね。


「……主人様!!」

 クロが俺を見つめる。

 瞳が震えている。完全に護衛モードだ。


 そんな眼差しで見るな、特に作戦なんてないんだから……

 少なくともロバートとの通信が取れないのが難点だ。


「……ミスった、予想できたのに。」

 アスがひとり頭を抱えている。


 入ってきた男、

 黒髪のセンターわけに黒いアイパッチ、紳士然とした黒の装い。

 身長がやけに高く、ドア枠をくぐるだけで絵になるほどスタイルがいい。

 背筋はまっすぐ、動きは静か……だが圧が重い。


 間違いない、四天王の一人だ。


「主人、アイツの名前は、アムドゥスキアス。

 悪魔だよ。」


「ん?誰かと思えば、、アスタロトではありませんか!

 何故誰の下にもつかない、ついたことのない

 貴女が、その方に?」


 どうやら、二人は知り合いみたい。

 アムドゥスキアスの笑みは丁寧だが、どこか刺があった。


「ライト。

 ここは、僕が止めるよ、シドウと合流して……

 それと、高所には気を付けて……」


 アスは目を細くさせ、こちらを見つめる。

 普段の軽さはなく、戦闘者としての色が全面に出ていた。


「お、おお。

 任せた!」


「……うん。」


 俺はアスにグータッチをして、その場を任せることにした。

 アスの拳は、いつもより熱かった。


 俺とクロ、エル、クレアは窓を突き破り外に出る。

 冷たい風が一気に吹き込み、城内の重苦しさが薄れた。



 城内には、アムドゥスキアスとアスだけが残った。


「そう来ますか、、変わりましたね。

 3代悪魔と言われ、人間に恐れられた貴女が……」


「あの二人の話はやめろ。とりあえず、早いとこあんたボコるわ。」


 アムドゥスキアスは少し冷や汗をかく。

 アスの魔力量が、段々と主人の俺……そしてルシアンやバフォメットを上回っており、

 自分の主人であるヴェイドをも凌駕していたからだ。


(この感覚……殺気、久しぶりですね。

 貴女にここで勝つ、)


 アムドゥスキアスは拳を握りしめる。

 悪魔二人の衝突。空気が震え、魔王城の床石が微かに浮く。


 無音のまま、二人は地を蹴った。


 アスの動きは光のように速く、アムドゥスキアスは影のように滑らかに躱す。

 拳、蹴り、魔力の奔流が交差し、城内がまるで嵐の中心のようになった。


 刹那、黒い魔力の衝撃が交わり、

 振動が窓を割り、天井から砂粒が舞った。


 戦いは、一瞬たりとも目を離せないほど激しい。

 悪魔二人の正面衝突だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ