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第四十三話 突破

なんかバフォメットの技、うまくルビできなかったの許してください。

何度やってもダメでした、

「………戦力差、量はかなりいるんだな。」


 ルシアンの低い呟きは、戦場の喧騒に溶けながらも、確かな緊張を孕んでいた。

 視界の先、ヴェルデンの森の縁から這い出すように現れたのは、異形のモンスター群。


 四足歩行。

 だが、獣とは到底呼べない。


 骨格は歪み、関節の位置もおかしい。

 皮膚はまだらで、ところどころが硬質化し、まるで無理矢理“繋ぎ合わせられた”かのような姿。

 数も異常だった。森の影から影へ、波のように増えていく。


(……ヴェイド以外にも、アイツも絡んでるのか、)


 この異様な造り。

 この統一感のない狂気。

 ルシアンは一瞬で“意図的に造られた存在”だと見抜いた。

 考える時間はない。

 既に第3部隊の側面へ、モンスターの一団が回り込んでいる。

 一先ず、第3部隊で迂回しにきたモンスターをボコボコにする。


 ルシアンは静かに右手を掲げた。

 空気が、歪む。


 掌の上に集束していく魔力は、深い紫色。

 炎でありながら、熱よりも“生命を削ぐ気配”を先に感じさせる禍々しさだった。

 脈打つように揺らめく火球は、まるで血液を宿しているかのように重い。


紫命血焔ブラッド・ノクターン……」


 その名が告げられた瞬間、

 紫の火球は無音で放たれ、次の刹那。


 地面が、抉れた。


 爆発ではない。

 存在そのものを削り取るような衝撃が、一定範囲を丸ごと消し飛ばす。

 モンスター達は悲鳴を上げる間もなく、肉片すら残さず霧散した。


 だが、それでも


「……量が多いか。」


 煙が晴れる前から、次の影が迫ってくる。

 その様子を、第2部隊の後方、やや離れた位置から見ていたバフォメットは即座に察知した。


「|邪典焔葬《グリモワール=ブレイズ》……」


 詠唱と同時に、大地から黒い柱が突き上がる。

 炎というより、禁忌の呪文が形を成したようなそれは、触れたモンスターを次々に飲み込み、圧縮し、消滅させていった。

 遠くから、バフォメットは余裕のある笑みを浮かべ、視線だけをルシアンに向ける。


「あの奴……持ち場のことを心配せい、」


 援護された。

 そう理解してなお、ルシアンはわずかに眉を動かす。


「……余計なお世話だ。」


 それを見ていた配下達は、揃って息を呑んだ。


「焔!!」

「アテナ!!魔王怖い……!」


 二人は思わず抱き合い、紫の魔力が残滓として漂う方向を警戒する。


「あなた方……協力者ですよ?

 私たちもここを抑えますよ……」


 呆れながらもサマエルが前に出ながらそう告げ、どこからか取り出した両手剣を手に持つ。

 刀身は漆黒。光を吸い込むような質感で、明らかにただの武器ではない。


「ほう…… 伝説級(レジェンド)かやるな!悪魔。」


「魔王様にそう言われるとは、嬉しい限りです。」


 一礼した次の瞬間、

 サマエルの剣閃が走り、迫っていたモンスターの首が容易く宙を舞った。


 その隣では、クロムが無言で前進する。

 一撃一撃が重く、踏み込む度に衝撃波が発生し、地面が波打つ。

 それだけで、森への侵入路が物理的に封じられていく。


 そして、

 ルシアン、バフォメットの主戦力配下、

 そして一部の獣人族・エルフ達は、間隔を空けてヴェルデンの森に展開した。

 本来は集結する予定だった。

 だが、この数だ。

 一体でも抜けられれば致命傷になりかねない。

 夜の森は、モンスターが少数となると見つけにくい。


 そのため、

 ルシアンとバフォメット、数百の配下、戦闘に長けた獣人族が前線の第2・第3援護。

 その他は城の周囲へ配置。

 溢れたモンスターを見逃さない。


 ロバートを含む三人は城に残り、

 怪我人の対応、戦況の把握、そしてノクスの魔法による伝達で、

 作戦指示が即座にリアルタイムで全体へ行き渡る体制を整えていた。


 前線から届く情報は刻一刻と変わる。

 だが、混乱はない。

 すべてが整理され、必要な指示だけが正確に送られていた。


「ほらほら、他の獣人達何してんだ?行くぞ!森を

 死守しろ!」


 狐の獣人であるイナリの声が、戦場に張り付いた緊張を裂いた。

 その一声で、躊躇していた獣人族たちが一斉に動く。

 武器を構え、牙を剥き、モンスターの群れへと突撃していった。


「グルァァァッ!!」


 応えるように、モンスター達が咆哮する。

 理性のない叫び。

 ただ破壊するためだけの声。


「……グゥ゛……グル゛゛……」


 一人の獣人族の前に、異形の影が立ち塞がった。

 距離は、数歩。

 逃げ場はない。

 その獣人は、既に武器を失っていた。

 刃は折れ、柄だけが震える手に残っている。

 恐怖で腰が抜け、足が言うことを聞かない。

 この人数だ、それぞれ強い性能の良い武器ばかりを用意する事はできなかった。

 その為多少もらい武器などにどうしてもなってしまう。


(死にたくない……)


 思考はそれだけだった。

 だが、モンスターにそんな感情は関係ない。

 大きく顎を開き、喉奥から腐臭混じりの息を漏らし踏み込む。


「よっ!」


 軽い声と共に、影が割り込んだ。


「……アテナ、!」


 間一髪。

 モンスターの動きが止まり、首が不自然な角度で宙を舞う。

 駆けつけたのは、アテナだった。


「城へ戻って手当を受けて!」


 迷いのない指示。

 助けられた獣人は、何度も頷き、振り返ることなく城へと駆け出す。


「ほほ〜!アテナカッコいい!!」


 焔のからかうような声が飛ぶ。


「うるさい!」


 即座に返すが、どこか満更でもない。

 その時、


「……ズ゛……ゴォ……」


 森の奥から、異様な呼吸音が響いた。

 耳に残る、不快な低音。

 それだけで、空気が変わる。


「あれは、、、四天王だな。」


 ルシアンが、視線の先を指し示す。

 ”四天王”、ヴェイドが作った主戦力になる配下四人。

 そこに現れたのは、狂犬のような姿をした存在。

 肉はただれ、骨が露出し、歩くたびに不自然に軋む。

 大きさは成人男性一人分ほどだが、

 その存在感は周囲のモンスターとは明らかに違っていた。


 骸獣将(ネクロ=ベヒモス)

 種族は、屍界合成獣ネクロ・キメラ


「ネクロ=ベヒモス……」


 サマエルは、その姿を見た瞬間に理解した。

 構造、再生条件、核。

 解析は一瞬で終わる。


 そして、考えるより先に動いた。


 サマエルの一撃が、ネクロ=ベヒモスの腕を吹き飛ばす。

 体勢が崩れ、地面に転がる。


 だが……

 次の瞬間、失われた腕が再構築された。

 あまりにも速い再生。

 周囲に散らばるモンスターの屍が、魔力として吸い上げられているのが見て取れた。


「不死身、か……」


 ルシアンが、興味深そうに呟く。


「ヴォ゛ォ゛ォ゛――!!」


 ネクロ=ベヒモスが咆哮を上げる。

 知性は低い。

 だが、敵意と執念だけは異様に濃い。


「……知能は低い、少しめんどくさいですが、楽勝ですね。」


 サマエルは冷静だった。

 そう判断し、両手剣を振るい、細切れにする。

 それでも再生する。

 だが、それは想定内。


「……焔!」


 サマエルの合図と同時に、上空から焔が降り注ぐ。

 周囲一帯が焼き払われ、屍は炭と化す。

 ルシアンは即座に動き、森に燃え移りかけた火を消化する。


「火事でも起こす気か?」

「てへぺろ!」


 焔は舌を出して微笑む。

 冗談で済む状況ではないが、

 それでも戦場の空気は一瞬だけ緩んだ。


「ギ……ギチ……ギ……」


 それでも、再生。


 ネクロ=ベヒモスは執念深く立ち上がり、

 一直線にサマエルへと飛びかかった。


 回避は間に合ったと、思ったが……サマエルは腕を噛まれてしまった。

 噛まれた部分から、腐食が始まる。


「そう来ますか、わかりました。」


 一切の躊躇なく、

 サマエルは自らの腕を切り落とす。

 そして、新たな腕を再生させ、

 手を前に出し、静かに唱える。


「貴方は私を怒らせました。

 犬………嫌いなんですよね、黒雨葬送ブラック・レクイエム


 その瞬間、

 ネクロ=ベヒモスは、音もなく闇に呑まれ、

 跡形もなく消え去った。

 再生などする余裕もなく、消えてしまう、


「最初からなんで、そうしなかったんだ?」


 一部始終を見ていたアテナが問いかける。

 彼女の右手には、モンスターの頭が握られていた。


「焔の火力でやりきれるかと思っていました。

 それと、もう少し他の対処があったのですが、、

 噛まれて腹が立ちました。」

「めんどくさ。」

「………」


 焔の一言に、誰も反論せず、

 クロムは黙々と残敵を制圧していった。


 ――――――――――――――――――――――


「主人。四天王また一人倒したって、」


 アスの報告は簡潔だった。


「ああ、、知ってる………」


 もちろんだ。

 見ていた。

 だが、それよりも……


 俺たちは、もっと厄介な事態に直面していた。


 ヴェイドの城。

 最上階。

 玉座の前。


「どうするんだ?ライト!」

「パパ?」


 そこにあったのは、空虚だけ。

 誰もいない。

 最悪だ。

 なぜ、予想していなかった。


 いや、

 予想できていた……はずだ。

 俺は即座にロバートへ連絡を取る。

 だが、返答はない。

 伝達が、届かない。


 ――――――――――――


「城付近、制圧だな。

 魔王ヴェノム、まんまと引っかかったな?」


 邪悪な笑みを浮かべ、

 ヴェイドは愛刀を腰に携え、拳から血を滴らせていた。

 既に、ヴェルデンの森を抜け、

 ヴェイドは今、城の前に立っている。


 戦局は、裏返った。

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