番外編 クリスマス!
本編のヴェイドとの戦闘より少し前としてみてください。
時系列的には大体三十話の終盤あたりだと思います。
光歴25年、12月24日。
そうです。
みなさんメリークリスマスです。
こちらは異世界、それでも俺が元いた世界の文化はこちらにも影響している。
つまり……
「ハッピーメリーヴァレンタイン!
お菓子くれなきゃ、お年玉あげないぞ!?」
勢いそのままに俺の扉をぶちあけてきたのは、
焔だった。
部屋の空気が一瞬で騒がしくなる。扉の前に貼ってあった“入る時には3回ノックを!!”という張り紙が、ひらり、と床へ落ちた。
「焔?なんか色々混じってるぞ?」
「あれ、違ったっけ?」
狐のお面に加えて、場違いなくらい深々と被ったサンタ帽。
焔は妙に誇らしげで、しかし完全に方向を見失っていた。
「メリークリスマスね?焔……」
後ろから静かに訂正を入れた蒼も、同じサンタ帽を深く被っている。
朝の冷たい空気が、外の景色をさらに際立たせていた。昨晩降った雪が城の外を真っ白に染め、窓からは凛とした景色が広がる。
「………朝ごはん食べるか、」
呆れ半分に言うと、机の上に丸まっていたクロが俺の肩へぴょん、と飛び乗った。
焔、蒼、クロと共に、まだ暖房の効いていない廊下を歩き、一階の食堂へ向かう。
食堂に着くと、まるで知らない家に来たかのように空気が違った。
大きなクリスマスツリー、暖炉の周りには靴下、天井には簡易的な飾り。いつもよりすこし温かい光が広がっている。
《俺の城が随分と盛り上がっているな……》
ヴルドが重々しい声で辺りを見回した。
確かに……賑やかだ。
「パパ!!」
勢いよく横から体当たりされ、俺は少しふらつく。エルだ。
小さな体で全力だった。
「どうした?」
「サンタさん来るよね??」
不安と期待が混ざった瞳を向けられ、俺は自然と食堂を見渡した。
焔、蒼、イバラ、エル、アテナ、クロ、スイ……皆一様に赤いサンタ帽をかぶっている。
一方で、俺、アス、シドウ、サマエル、アヌビスは何も身につけていない。
気づいてしまった。嫌な予感が確信に変わる。
朝食はやけに豪華だった。
サマエルが静かに料理を運んできたが、その皿の上には、どう見ても朝ではない肉厚のステーキ。
俺は無言でサマエルを見る。
サマエルは近づき、声を潜めて耳打ちした。
「赤い帽子を着けている方々……まだプレゼントの所有枠がある人です。」
チッ……やはりそうか。
プレゼントなんて用意してねぇ。
いや、本来プレゼントってサンタが......と考えかけてやめた。この世界にサンタは来ない。あっちの現実世界の方で手一杯なのだろう。
なら、、俺がやるしかない。のか、、
「ライト。アスが話があるって……」
片付けをしていたシドウが近づき、俺は小さくため息をつきつつ個室へ向かった。
「ライト、待ってたよ〜」
「主人様、じゃあこれ着てね。」
アヌビスが差し出したのは、赤の誰が見てもわかる、あの服。
袖に白いふわふわがついた、あの人の象徴。
「ちょっと、本格的じゃない?」
「じゃあ、夜行ってこい!サンタ!」
「それぞれの欲しいものは聞いといたんで、渡してください。」
はいはい……。
――――――――――――――――――――――
元マルシオン。
冷たい風が小屋の隙間から容赦なく吹き込み、木の床を震わせる。
「うう、寒っ………ヴァルヴィスさん、こんな時まで魔王の件?」
雪を払って入ってきたラグノスの声に、机で何かを書いていたヴァルヴィスの手が、音もなく止まる。
「……自分で言ってなんですが、聖夜の夜ですよ?」
「……聖夜の夜、そうだな、、、
今日ぐらいは……ダークの誕生日だった、」
ラグノスは胸中で頭を抱えた。
(墓穴掘ったなぁ……)
「サンタはいな……まぁ、腐っても聖騎士がそういう事は言ってはダメか、、いるな。」
「ケーキ買ってきたんで……」
その夜、ラグノスは酒の入ったヴァルヴィスの愚痴を黙って聞き続けた。
――――――――――――――――――――――
熱い地獄のような大地、魔王城。
灼熱が地面から立ち昇り、遠くの空気が揺らめいて見える。
「なんです?」
「バフォメット!!あれ、ルシアンは?」
サタンの声はいつものように無駄に元気だ。
呼び出されたバフォメットは汗ばみながら答える。
「偵察に行くとか言ってましたよ、サンタさん」
「サタンだ。
ヴェノムの件か……
ま!それは置いておいて、クリスマス!だよ?元気よく行こうぜ!!」
(熱苦し……)
本音は飲み込み、心の中でだけ呟く。
「いいですが、早めに上がりますよ、
配下達のプレゼント買わないと、リリスとスコル、マルキオールの……」
「おやおや、サンタさんは大変だな……」
(ていうか、魔王がサンタするな、)
(ていうか、魔王がクリスマスを楽しむな、)
心の声だけが二人の間ですれ違うが、どちらも言わない。
結局、彼らもこの日だけはクリスマスを楽しんでいた。
「ま!プレゼント交換会しようぜ!」
「……長くは居れないですよ?」
――――――――――――――――――――――
レイン王国、レガリア学園。
冬の冷たい空気に包まれた校舎はどこか静かで、装飾だけが季節を主張していた。
「会長、どうします?学校主催のクリスマス会……」
「無しだ。
毎年出ている。今年ぐらいはいいだろう。それに今年は先客がいるから、」
「そうですね、」
静かに頷くカミラ。
そこへ扉が勢いよく開いた。
「会長!ケーキゲットしました!」
「プレゼントも用意できてますよ、」
リガルドとイザベルが満面の笑みで入ってくる。
「おう!待っていた!こっちも準備オッケーだ。」
「会長、はしゃぎ過ぎては……」
「今回ぐらいはいいだろ?」
「……まぁ、許可します。」
アレクシスは子供のように喜び、カミラは頬を赤らめた。
四人で机に豪華な料理を並べ、小さなクリスマス会が始まった。
「魔王様は大丈夫かな、」
紅茶を置きながらアレクシスが言うと、皆が頷いた。
「アイツらなら大丈夫っすよ!」
「彩ちゃんも元気でやってるといいですね。」
(皆応援してるぞ、魔王。
好きなだけ、ドンぱちしてこい。コウキ!)
――――――――――――――――――――――
マルシオン跡地。
かつての激戦の空気は残っていない。あの戦いをなんとか耐えた静かな、しかしどこか寂しさを抱えた酒場が一軒。
「クリスマスで賑わってるな、マスター」
リアナが席に座り、マスターが微笑む。
「ええ、おかげさまで、」
その隣にロイが腰掛け、同じ酒を注文した。
「いいかい?」
「ええ、」
二人は軽くグラスをぶつけ、静かな音が広がった。
(あんたらが来なくなって、寂しいよ……)
マスターはふと、古びた新聞を見つめる。
そこに写っていたのは、冒険者パーティの記事だった。
「……いいね、やっぱこいつらは、」
懐かしさと敬意を込めてマスターはそう呟いた。
――――――――――――――――――――――
25日朝。
「おお!!主人!みて!手袋!」
アテナが勢いよく駆け寄り、両手を広げて見せてくる。
本当に嬉しそうで、こちらまで頬が緩む。
焔と蒼には魔道書、アテナには手袋。
クロには特製お肉。
イバラにはシドウ似のぬいぐるみ。
スイにはアスタロト似のぬいぐるみ。
エルには……俺似のぬいぐるみ。
予想外だったが、皆が喜んでいるのを見て、まあいいかと思えた。
とはいえ、疲れた。
中でもイバラは、扉の前で自分が眠りにつくまでサンタを捕まえるために、張っていて怖かった。
「我が君!」
「主人様!」
「「ライト!」」
その時振り返ると、アス、がプレゼントを持って立っていた。
その隣に、アヌビス、シドウ、サマエルがいる。
「はい!クリスマスプレゼント!
お疲れ!魔王!」
アスが代表して俺に渡す。
「……ありがと、」
箱を開けると、温かい色の古い腕時計が入っていた。
「……ありがと、」
「喜んでもらえてよかった、」
静かに、穏やかに俺たちはまたクリスマスを楽しんだ。
配下達も、そしてヴルド、
ダークには、、
「誕生日おめでと、、メリークリスマス……!」
《...おめでとう、》
ん?なんか聞こえた、ヴルドが言ってくれたのかな、
気のせいか?
あいつが言うわけ、、言ってくれてたら嬉しいけどな、
書いてて結構楽しかった。




