表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/62

第四十一話 3代悪魔

「ダメ!」


 叫びと同時に、空気を裂くような音が響いた。

 次の瞬間、眩い光が一直線に伸び、ライトの胸を容赦なく貫通する。


 焼け付くような光に、視界が白く染まる。

 衝撃で空気が震え、耳は一瞬、何も聞こえなくなった。


 それでも

 ライトは、倒れなかった。


 アスの目の前に立ち、光の攻撃を受け止めるように、必死に踏みとどまっている。

 だが、限界は明らかだった。膝がわずかに折れ、力を失った身体が、ゆっくりと前に傾く。


 鈍い音を立てて、主人が地面に崩れ落ちる。


 手を伸ばそうとしても、足が動かない。

 声を出そうとしても、喉が張り付いたように息しか漏れない。


 目の前で倒れる主人を、

 僕はただ見つめることしかできなかった。


 ――――――――


「……はっ!

 また、夢………濃くなってきた、、」


 跳ね起きた瞬間、心臓が激しく脈打っているのがわかる。

 背中には冷たい汗が伝い、呼吸が浅く、乱れていた。


 見慣れた天井。

 石造りの城の一室、自分の部屋だ。


 隣を見ると、柔らかな寝息を立てて、スイが眠っている。

 薄く差し込む朝の光に照らされ、安心したような寝顔だった。


「アス様?」


 小さく身じろぎし、スイが目を掻きながら上体を起こす。

 眠気の残る瞳で、心配そうにアスを見つめていた。


「起こした?ごめん……」


「いいえ、、」


 それだけ答えると、スイは再び布団に身を沈め、すぐに規則正しい寝息を立て始める。

 アスはその様子を一瞬だけ見つめ、静かに息を整えた。


 乱れた髪を手早く整え、着替えを済ませる。

 冷たい水で口をゆすぎ、歯を磨くと、少しだけ現実に戻れた気がした。


 部屋を出て、城の階段を降りる。

 足音が石段に小さく響き、下へ行くほどに人の気配が濃くなっていく。


 階段を降りきると、そこにはいつもの光景が広がっていた。


 主人であるライト。

 その周囲に集まる配下達。

 そして魔王のクレア。


 さらに今日は、他の魔王であるルシアンとバフォメット、その配下達、

 加えて獣人族の村人達の姿まである。


 ざわめく声。

 武具の擦れる音。

 戦の前特有の、張り詰めた空気。


 その中心にいるライトを見るたび、

 脳裏には、あの夢の光景が鮮明に蘇る。


 最近は特によく見るようになった。

 現実と見分けがつかないほど、リアルな夢。


 胸の奥に残る不安を、必死に押し込めながら、

 アスは出来る限り気にしないようにして、ライトに近づいた。


「ライト!」


 声をかけると、ライトはすぐにこちらを振り向き、いつものように笑う。


「おう!アス、

 今日の夜、もうじき、攻める。多分あっちもそろそろ動く時期だと思うから、」


 その笑顔は、夢の中で倒れた姿とはあまりにも違っていて。

 だからこそ、アスの胸に溜まっていた緊張が、ほんの少しだけ和らぐ。


「そっか……がんばろうね、、」


 言葉にすると、かすかに震えが混じった。

 それでも、ライトは気づかないふりをしたまま、軽く頷く。


 みんなと一緒にいれるこの日々。

 何気ない会話、当たり前の朝、並んで立つこの距離。


 それが、一生続けばいい。


 アスは、心の底からそう思っていた。


 ――夜――


 夜の城前は、静かすぎるほど静まり返っていた。

 月明かりの下、石畳の冷たさが足裏から伝わる。

 ライトは城門の前に立ち、配下達を一直線に並ばせ、さらに他の魔王の配下達も正面へと整列させていた。


 ルシアンの配下、その主戦力となる三人

 セリス、グラウ、ドラム。

 彼らの背後には、鎧の擦れる音を抑えた五百名の軍勢。

 統率は取れているが、空気は張り詰めている。


 バフォメットの配下達も同様だった。

 リリス、スコル、マルキオール。

 それぞれが異質な魔力をまとい、後方には三百名の兵。

 獣人族の村人達、エルフ達も加わり、数だけ見れば決して小さくはない。


 だが

 ライトは、はっきりと分かっていた。


(相手は三万の軍勢……いけるか?

 これ、、)


 魔力量の総量、兵の質、経験。

 どれを取っても、こちらが不利だ。


「バフォメット!ルシアン!クレア!」


 ライトの声が夜気を切り裂く。

 三人の魔王が前へ出る。


「なんだ?何か文句か?」


 ルシアンは腕を組み、余裕を崩さない。


「いや、これ足りる?」


 ライトの率直な問いに、空気が一段重くなる。


「私も思っていましたが、これ……キツイのでは?

 ヴェイドは、ある程度こう言ったことが得意。

 ですが、ヴェノム殿は初めて、、無理では……」


 バフォメットの声は冷静だが、完全な同意だった。

 計算の上での「無理」。

 それが一番、残酷だ。


「その為に、魔王がこうして四人もいるんだろ?

 僕もいるし!いざとなったら……」


 クレアが軽い調子で割って入る。

 その瞬間、三人の魔王の意見が真っ直ぐ揃った。


「「「それはダメ。」」」


 即座に三人が否定する。

 迷いはない。

 当然だ。


 クレアが出れば、戦争ではなく消滅になる。

 敵も、味方も、地形も関係なく。


 その時だった。


 重い足音。

 空気を歪ませるほどの、猛烈な魔力量。


 ……来た。

 しかも、隠す気はない。


(間違いない、わざと、、これは威嚇だ。……)


 ライトはすぐに理解した、

 相手は、こちらの準備が整う前に心を折りに来ている。


「攻めてきた?」


 誰かが呟く。


「予定より早いな!仕方ない、もういい!

 とにかく作戦通り、隊に分かれて出来る限りの時間稼ぎをするぞ!」


 ライトの声に、全軍が動き出す。

 迷いは捨てた判断だ。

 第2、第3にルシアン、バフォメットを配置し、戦線を広げる。


 全面戦争。

 ついに、始まった。


 ひとまず、僕は第4に……


 そう考えた、その時。


「アス!どうした?顔色悪いぞ?」


 背後から、クレアの声。

 いつも通り、やけに近い。


「……別に?なに?」


 少し、食い気味になってしまう。

 自分でも分かる。

 余裕がない。


「別にいいんだけどさ、、3代悪魔。」


 背中を、軽く押される。

 冗談めいた力なのに、やけに重い。


「うるさいよ、」


 本音が、つい口をついた。

 言われたくない言葉だった。


 三代悪魔。

 人間から恐れられる最も強力な悪魔、その1柱



 一先ず、主人であるライト達と一緒に、

 ヴェイドの城を目指した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ