表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/66

第三十七話 復活

「エル、逃げろ!」


(なんで、こうなったんだよ……

 いや、ダーク(アイツ)なら、こうしたよな!

 聖騎士だから、、いつからあんな腐ったんだよ、

 ヴァルヴィス!)


 ロバートは歯を食いしばり、逆手に握ったナイフに力を込めた。

 足元の地面は抉れ、瓦礫と血の匂いが混じる。

 正面に立つザグリオンは、まるで城壁のような体躯でこちらを見下ろしていた。


 ロバートは躊躇なく地を蹴る。

 体格差など最初から承知の上だ。

 勝てるのは、速度だけ。


「粉々にしてやる!」


 怒号と共に、ザグリオンの巨大な剣が唸りを上げて振り下ろされる。

 空気が裂け、地面が震える。

 だがロバートは、刃が触れる寸前で体を捻り、紙一重で回避した。


 パワーは圧倒的に向こうが上。

 だが、その分動きは鈍い。

 ロバートは削られた地形を踏み台にし、高く跳躍する。


 狙いは一点――

 ザグリオンの顎。


 ナイフが深々と突き刺さる。


「くっ、、人間が!!」


 怒りに歪んだ咆哮。

 ザグリオンは苦悶と共に剣を振り回し、力任せの一撃を叩き込もうとする。


「なにっ……」


 確実に当たる軌道。

 だが、次の瞬間――その剣筋は不自然なほど綺麗に逸れた。


 理由は分からない。

 だがロバートは迷わない。


 ザグリオンの腕を踏み、反動でさらに高く跳ぶ。

 視界いっぱいに広がるのは、敵の顔。


「お返しだ、、

 エル!見なかったことにしろよ!」


「わかったよ、ロバート……」


 ロバートは空中で銃を構える。

 一瞬の静寂


 銃声が鳴り響いた。


 弾丸は寸分の狂いもなく、一直線に。

 空中という不安定な体勢にも関わらず、その一発はザグリオンの眉間を正確に撃ち抜いた。


 巨体が、糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる。

 地響きと共に、戦いは終わった。


「ふぅ……疲れた、、

 依頼は達成か……」


「そうだね!」


 エルはすぐさま駆け寄り、ロバートの前に立つ。


「にしても、お前手伝えよ!」


「え?別に、、ロバートを信用してるからね〜」


 そう言いながら、エルは静かに生成していた槍を小さく収束させていく。

 光が消え、武器は跡形もなく消失した。


 ⸻


「お帰り〜」


 俺は、城へ戻ってきた二人に向かって軽く手を振る。

 エルは俺を見つけると、満面の笑みで大きく手を振り返してくれた。


「ったく、やられたよ、」


 ロバートは不服そうに肩をすくめる。

 その瞬間、俺の視界が金色に染まった。


 瞳が変化し、魔力が流れる。

 ロバートの傷は、まるで最初から無かったかのように塞がっていく。


「……ありがとよ、」


 ロバートはそう呟き、俺の隣に静かに立つスイへと視線を向けた。


「その、、悪かった。

 色々……」


「あ……大丈夫です!

 あんまり無茶しないでくださいね?」


 スイは柔らかく微笑み、そう答える。


 ……なんだかんだ、いい奴じゃないか。

 謝れるというのは簡単だ。

 だが、誰にでも出来る事じゃない。


 やっぱり決めた。


「配下にする。」


「あ?」


「ダメ?」


 俺が聞き返すと、ロバートは一瞬目を丸くした後、静かに笑った。

 それは、エルを落として爆笑していた時の下品な笑みではない。

 初めて見る、どこか肩の力が抜けた表情だった。


「ダークは、お前を信用したんだろ?

 ヴァルヴィスをいつか納得させる。

 アイツが信用したお前を俺も信じてみるよ。」


 こうして、初めての人間の配下が出来た。


 ヴァルヴィスの件はまた今度話す、とロバートは言い残し、

 城の中へ入り、他の配下たちに一人一人挨拶と謝罪をして回ったらしい。


 俺の前に、エルがやって来る。


「パパ!」


「活躍見てた、初仕事にしては上出来だ。

 SSランクさん?」


「へへ〜、いつかパパを追い越しちゃうよ?」


「やってみろよ、待ってる。」


 俺はエルの頭を撫でる。


「主人様!俺も撫でて!!」


 肩の上から、いつの間にか現れたクロが身を乗り出す。


「お前はいつも撫でてるよ。」


「ええ〜」


 落ち込むクロを見て、エルがくすっと笑い、代わりに頭を撫でていった。


 ⸻


 夜。

 どこかの丘に、ひとつの墓が佇んでいた。


 風化した古い石碑の前に、花を持った黒髪の男が立っている。


「ヴェイド様、お時間です。」


 黒いアイパッチ、紳士然とした装いの男は、石碑の前に黒薔薇を供える。

 その瞬間、花は腐り落ち、赤い瘴気が地上へと溢れ出した。


「配下達、3万の軍勢が主人様をお待ちです。

 そして、そろそろ200年ぶりの魔王評議会が始まります。」


「そうか……」


 地面が割れ、地下深くから姿を現す影。

 筋骨隆々の巨体、両腕に絡みつく鎖。

 真っ赤な瞳と髪、死人のように青白い肌。


「ん?ヴルドの気配が見つからんな。」


「主人様が寝ている間に、ヴルド様は封印、元勇者のヴェノムという魔王の身体の中に入り込んだようです。」


 ヴェイドは嘲るように笑った。


「ふん、我が弟とはおもえんな。

 自分の力を過信するからそうなるのだ。

 にしても、元勇者、、まさか今度の会議

 そいつも出るのか?」


「恐らくは……賛成派が多く居るみたいです」


「席はないよな、ヴルドの事だ。

 こちらを殺しにくるかもしれん、、恨みを買いすぎたか……」


 顎に手を当て、思案するヴェイド。

 禍々しいオーラを纏い、差し出された愛刀を受け取ると、二人は城へと戻っていった。


「ヴルド、、落ちぶれたな」


 その一部始終を、遠くから見つめる少女がいた。


 魔王クレア。


「なるへそへそ、、という事は、一つの身体に魔王が二人……面白そうじゃん!

 それも、中にはヴルドのやつか、、いいね〜、

 そんな事例は、西のところと数百年前の魔王以来居ないんじゃないかな……」


 転移魔法が発動し、景色が歪む。


「サターン!!」


「クレアか、転移魔法でいきなり現れるな、心臓に悪いぞ?」


 玉座に座るサタンは、目を輝かせるクレアを見下ろす。


「めっちゃ面白そうな情報を入手した!

 ヴェノムさ!一つの身体に二人の魔王があるんだって!!」


「ん?双魔同体(そうまどうたい)か……」


「かなり珍しいよね?しかも、ヴェノムは人間だよ?

 双魔同体って事は、ヴルド追い詰めたってことじゃん?

 それって、人間だと何年か前の刀を使ったサムライ?だっけかの奴以来じゃない!?」


「そうだな。

 ヴルドのやつ、そんな事言ってたな。どうするんだ?」


「明日にでも会いにいく!」


「気が早い、まだやめておけ……」


 制止する間もなく、クレアは姿を消した。


「だろうなと思ったが、、

 待て……この気配、ヴェイドか、、復活しやがったか?

 ……......何千年ぶりだ、ここまでメチャクチャで面白いのは、、」


 サタンは静かに笑った。

 久方ぶりの混沌に、胸を高鳴らせながら。

 クレアには内緒でね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ