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第三十四話 謎の男

どっかで見たことのある題名、、

「あそこが、ヴェルデンの森?

 ど田舎な所に住んでるんだなぁ……」


 青髪の少女、魔王クレアは、断崖の上に立ち、風に揺れる髪を押さえながら遠くの深緑を見下ろした。

 森は雲の影を受けて濃淡を変え、中心にぽつりと古い城が顔を覗かせている。


「ヴェイド、

 君はどこからあの城を見てるの?」


 彼女は薄く笑い、瞳の奥に妖しい光を宿す。

 そのまま霧が散るように、輪郭を崩して姿を掻き消した。


 ――ダンジョンの中で――


 湿った石畳に足音が響く。

 酸味のある土の匂い、天井から滴る水。

 その中で、俺は叫んだ。


 うお!

 ヴルド!クロムとか言うこの騎士、バカみたいに強いぞ!


 黒鉄の鎧をまとい、仮面の奥の目だけが淡く光る騎士・クロム。

 一挙手一投足に無駄がなく、こちらの動きより一瞬早く反応する。

 全ての攻撃が読まれてるし、パワーも見かけによらずスピードも段違いだ。


 《俺の数少ない配下だ。

 強いのは当たり前だろ?手札が多いんだから、どうにかしてみろ。》


 無理があるだろ!


 悔しさを押し殺し、俺は蒼白星を強く握りしめた。

 刃がわずかに震え、金属音が反響する。


 一歩踏み込む。

 俺の身体の内側で熱が噴き上がり、瞳の色はオレンジ色に染まった。

 星界律、、火星を使う。


 蒼白星の刃に炎が宿り、尾を引きながらクロムへと突き進む。

 瞬間、辺り一体が派手に爆発した。

 火柱が石壁を焦がし、吹き飛んだ瓦礫が床を跳ねる。


 《いくら頑丈だからって、壊れるものは壊れるぞ?》


 ヴルドが嫌味のように告げる。


 反省してます。


 爆煙が晴れ、俺は思わず息を飲んだ。

 だが、クロムは微動だにせず無傷で立ち尽くしている。

 炎の跡だけが足元の石を黒く焦がしていた。


 コイツ、ほんとバケモンか?


「中々やるわね、主人様……」


 ノクスは足を組んで座りながら、退屈しなさそうに戦闘を眺めている。

 その隣では、アテナが腕を組んで眉をひそめ、イバラが膨れた顔でそわそわしていた。


「アイツ、俺様より強いんじゃないか?

 っていうか、、俺様が主人様と組み手の筈だったのに!」


 足をバタバタさせながら、イバラは静かに駄々をこねる。


「あたしの気持ちがわかったか?」


 アテナは肩をすくめ、どうだと言わんばかりの表情を浮かべる。


 そんなこんなで、俺たちは生活をしていた。

 魔王になって、だいぶ経った。


 昼過ぎになり、俺は自分の玉座に淡々と座っていると、ゆっくりと門が開いた。


 改めて思う。

 この城、防犯設備が整っていない。

 だって、門が開いたら直ぐに玉座で、

 魔王パッカーンだもん。


「おお?

 ほほ!!これが魔王か……」


 門から入ってきたのは黒髪の男。

 整ってない髭が顎に少し生えており、どう見ても一般人だ。

 手には酒瓶、歩き方はふらふらで目が虚ろ。

 顔はやや赤く、酒場から出てきた酔っ払いそのものだった。


「誰だ?」


 俺がそう問いかけると、男は俺を見つめたまま、膝から崩れるように倒れ込んだ。


「いや……え?

 すぅー、スイ!」


 状況が飲み込めず、俺は慌ててスイを呼んだ。


 ーーーーーー


 魔王城の医療室。

 最近になって偶然見つかった“未探索エリア”の一つで、白い石壁と革張りのベッドだけが整然と並んでいる。

 静かだが、どこか機械的な冷たさのある部屋だ。

 案外この城は、広いのである。


 俺はそこで、城門前で倒れていた謎の男を寝かせていた。


 ベッドのシーツがわずかに揺れた瞬間──


「……!!どこだここ!!」


 男が跳ね起きるように上体を起こした。

 眠気や酔いの影は一切なく、目がパッキリと開かれている。

 呼吸も荒く、状況を理解しようと周囲をキョロキョロ見回す。


「えっと、あんた人間だろ?

 何の用?ずいぶん酔っていたみたいだが……」


 俺が問いかけると、男は眉をひそめて鼻で笑った。


「ん?何言ってんだ、何も飲んじゃいねぇよ、」


 ……いや、あれシラフかよ。

 酒じゃなくて素であのテンションなのか。


 男は布団を跳ねのけ、俺を真っ直ぐに見据える。

 その目には迷いがなかった。


「あんたもまだ一応、人間だろ?

 単刀直入に聞かせてもらうが、

 ヴァルヴィス・グランツ・ヴァルハルトを知ってるよな?」


「………」


 忘れるわけがない。

 ヴァルヴィスは、俺が出会った中でもトップクラスの強さだった。

 剣技は“芸術”と呼べるほど洗練されており、思い返すだけで背筋が伸びる。

 その"息子"も、同じ血を継いでいる。


 そこへ──


「ええ!人間さん起きてる!!」


 看病していたスイが医療室に飛び込んできた。

 驚きで身体がぷるんと震え、勢い余って元のスライムの姿へと戻ってしまう。


「怖がらなくても、いい。

 スイ……おいで、」


 俺はスイを安心させるため、丸いスライム状態のスイを両手で抱え、膝の上へそっと乗せた。

 柔らかくて、ほんのり温かい。


「で?ヴァルヴィスがどうかしたか?」


 男は深く息を吸い、胸を張って言い放つ。


「アイツは、俺の元親友だ。

 なぁ、魔王様……交渉だ。

 俺を配下にしてくれないか?」


 口元は不敵に吊り上がり、だが目の奥は妙に真剣だった。

 そのギャップが逆に不気味にも見える。


 ……人間の配下。

 嫌だ。率直に言えばリスクしかない。

 裏切る可能性もあるし、寿命だって俺も人間だから思っていたが、配下たちとは比べ物にならないほど短い。


「……嫌か?」


 男が眉を寄せる。


「勿論。

 裏切られた経験があるんでね。悪いな、バイト先とかじゃないからさ……そう簡単にはいかねぇんだよ。」


 俺はそう言ってスイを抱き上げ、部屋を出ようとした。

 その瞬間、背中に声が飛んでくる。


「俺は頭がいい。

 作戦とか、全部アンタの指示か?

 負担が減ると思うが……」


「悪いけど、頭に関してはもう優秀な悪魔がいるし、黒犬の神もいる。だから、大丈夫。」


 それを聞いた男はわずかに肩を落とし、だが再び顔を上げる。


「……あまり言いたくないが、銃が得意中の得意だ。

 ほんとだぞ!!」


「別に疑ってないよ……」


 ……なんだコイツ。

 必死すぎるだろ。

 ここまでして配下になりたい理由は、さすがに気になる。


 ……仕方ない。他の配下たちと相談するか。


「お前の処遇は、配下たちと話す。

 だから、スイをここに置いていく!

 変な真似はするなよ?」


「ええ!!主人様!」


 スイは元気よく返事をした。

 悪いが、スイ。今回は監視役だ。


「ああ、わかった。」


 男はゆっくりと頷いた。


 部屋を出る前に、俺は振り返って訊ねる。


「名前は?」


「ロバート・ヘルム、元聖騎士だ。」


「……聖騎士、、わかった。」


 扉が閉まりかけたそのとき──

 ロバートは唇を噛み、低く呟いた。


(ダーク……仇は取るぞ。)


 握られた拳の震えと、押し殺した怒りが空気を震わせていた。

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