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第二十四話 友達

 ――生徒会室――


「君たち3人か……うちの魔法実践テストで学校創設以来初めての満点を叩き出したのは……」


 静まり返った生徒会室に、低くよく通る声が響く。

 高級感のある木の机に肘を置き、組んだ両手の向こうからこちらを見据えている男。

 茶色い髪は整えられ、青い瞳は冷静な光を湛え……だが吊り目で鋭さも持ち合わせる。

 レガリア学園の生徒会長、アレクシス・モルテスその人だ。


「しかも、そのうちの一人は赤点だ……」


 アレクシスの視線がまっすぐ俺に突き刺さる。

 俺は居心地悪く、背筋にひやりとしたものを感じる。


 筆記テスト28点。

 彩に助けてもらい、なんとかそれだけ取れたまぁ、赤点である。

 だが実践では、いつもどおりの感覚でやっただけで満点だった。


「……なんで、筆記は赤点なのに、実践テストの方では満点?」


 隣に立つ金髪の女性――カミラ・ローゼン副会長が、長い髪を揺らしながら俺を見る。

 その瞳は厳しく、俺に向けられる。


「変わった人なのだな。」


 アレクシスは微笑み、俺を興味深げに観察する。


((変わりすぎ、、と言うかさすがうちの主人だな))


 アスカとドウジの視線が横から刺さる。

 まるで「誇れ」と言わんばかりだ。恥ずかしい。


「一応、私たちはあなたが不正したのではないかと調べたのですが……」


 カミラの言葉が落ちた瞬間、

 隣の二人――アスカとドウジが、雷に撃たれたように目を見開いた。


「は!?ある……コウキが!?」


「そんな事するわけないだろ!!」


 二人は、俺が言う前に全力で庇う。

 その声に嘘はなく、真っ直ぐで、胸が熱くなる。


「わかっている。調べた結果不正はない。」


「まぁ、本当にあなたが変わった人、、と言う結論で収まりました。」


 カミラは淡々と告げるが、瞳の奥にわずかな笑みがあった。


「こちらとしては、今年は優秀な生徒が入ってくれて嬉しいだけさ。

 話は以上。行っていいよ」


 アレクシスは柔らかく締めた。

 意外にも話しやすい人物で、俺は肩の力を抜く。


 赤の1組のアレクシスは剣技トップ。

 青の2組のカミラは筆記満点、実践98点。

 どちらも学園の頂点に立つ化け物じみた実力者。


 そんな相手に、「あと2週間で辞めます」とか……

 絶対に言えない。


 ――――――――――――――――――――――――


「にしても、お前ら全て満点なんてやるな、、」


「いやいや、、主人、あの筆記初歩中の初歩ですよ?」


「そうそう、何万年も生きてる身として、、

 わかって当然!逆にあれがテストなんて、人間は時代が止まってるって話、、」


 三人で廊下を歩く。

 昼の日差しが窓から差し込み、光の帯が床に伸びる。

 そんな中で交わされる、どこか楽しげな会話。


「おう!ドウジ!どうした?生徒会室なんかに呼び出されて、、なんかしたか?」


 振り返ると、短髪で活発そうな男が駆けてきた。

 息を弾ませながら、笑顔で手を振っている。


「ああ、紹介する。

 席が近くて友達になった...」

 ドウジの説明を端折るその男、

「リガルド・ヘイゼン!

 よろしくな!」


 リガルドというらしい、、

 にしても、ドウジに友達……。

 涙が出そうになるほど嬉しい、成長したね、ちゃんと人と話せたんだね、、


「よろしくー、コウキです。」


「おっ!よろしくっす!」


 自然と笑顔が浮かぶ。

 ふと横を見ると――


「ところで、、アスカは友達いないのか?」


「ギクッ!」


 アスカの肩が跳ね、視線が逸れる。


「別に、、作ろうとしないだけだし、、」


 その声音にはどこか寂しさが混じっていた。


「ああ、、すまん。

 まぁ、無理に作らなくても、、」


「……うるさい!」


 アスカは逃げるように走り去っていった。

 ミスった、まじミスった。

 今のは俺が悪いな、カバーする前にカウンターを打たれてしまった。

 そこに、ちょうど一人の少女が近づいてくる。


「コウキ!どうしたん?ハナシキコカ?」


「カタコトだぞ?」


 タイミングが悪いのか良いのか、空気の読めない軽い声が響く。

 彩だった。


 ――――――――――――――――――――――――


「……ん、このパン美味しくない……」


 裏庭のベンチ。

 アスカは無表情でパンを噛んでいる。

 一人きりで食べる昼食は、やはり味が薄い。


「友達……なんて、いるかな、、」


 ふと呟く声は弱く、小さかった。


「おや!アスタロトではありませんか〜?

 本当に、、あなたの部屋ゴミだらけですよ?

 アスタロト、あんな美しく儚く、かっこいい我が君を見つけたこと、

 何かを見抜くと言う面で、スイさんも含めね、あなたの見る目だけは本当に尊敬しますよ、」


 脳裏に浮かんだのは、包帯で目元を覆った悪魔サマエル。

 嫌なタイミングで思い出してしまう。


(くそ、汚いものを思い浮かべてしまった。

 あいつが友達とかご免だな、

 ......暇だな、、久しぶりに未来でも見よっかな、、)


 パンを飲み込み、立ち上がろうとしたその時――


「ねぇ、あんた本当に魔力ないの?」

「コネで入ったんじゃないの?」

「ハハハッ、それやばいわ!」


 視線を向けると、女子生徒二人が一人の少女を囲み、追い詰めていた。


「人間ってめんどっ」


 アスカは呆れ、通り過ぎようと――


「まぁ、、本当なんで来ちゃったんだろ、、」


「は?アンタ誰?」


 いじめていた女子生徒が睨む。


「立ちなよ、ホラ……」


 アスカが手を差し伸べる。

 だがその瞬間――


「キモイんだよ!」


 アスカの頬に拳が叩き込まれた。


「ハハッ!ヤバすぎ、、」


 一拍。


 アスカの瞳から、光がすっと消える。


「……ったな?」


「え?」


「僕を殴ったな?

 僕を殴って笑ったんだ、、

 それがどれほど命知らずのことか分からないの?」


 邪悪な笑み。

 空気が凍りつく。


 直後、爆発音が裏庭を揺らした。


 地面は抉れ、土砂は舞い上がり、

 いじめっ子二人は悲鳴もなく吹き飛んでいく。


 煙の中、アスカは膝を抱えて震えていた少女の前に立ち――


「君、大丈夫か?

 名前は、、?」


「えっと、、イザベル・フォスター……

 助けてくれて、ありがとう。」


 ピンク色の髪、紫の瞳。

 アスカの前で、彼女は弱く笑った。


「えっと、、なんか入学してからずっとあんな感じで、少し親がお金持ってるってだけで私、魔力なくてコネで入ったんじゃないかって言いがかりつけられて、、

 よかったら、、友達になってくれない?」


 友達。


 先ほどまで嫌だったその言葉が、胸の奥で光を帯びた。


「うん、、友達……いいよ、」


「やった!」


 と、その時――


「おいおい!裏庭からすごい音がしたぞ!」

「これは、、1組の生徒、、問題児が倒れてるぞ!?」


 教師たちが駆け込んでくる。


 そしてアスカは、たとえいじめを止めた正義であっても、

 授業外の魔法使用と重傷者発生のため――

 1週間の停学となった。


 ――寮内――

 停学3日目。


「……ライト、ガッカリするかな、

 僕は学園向いてないね……」


 毛布にくるまったアスカの声は、枯れていた。


 俺が行けば、余計に重くなる。

 だから――


「ドウジ……」


「なんです?」


 指差せば、彼はすぐ理解する。


「……わかりました。いってきますよ」


「頼んだ。」


 ドウジは静かに歩み寄り、アスカのそばに座る。


「ヘマをしたくらいで落ち込むな。

 それにお前のやったことは、勇気あることだ。

 ヘマじゃないさ、それだけで俺たちは失望したりはしない。」


「……でも、、」


「一緒の主人にここまでついてきただろ?

 あの人は、そんな心狭くないぞ?

 お前が一番分かるだろ?」


 その言葉が胸に落ちる。

 アスカはしばらく黙り――そして、笑った。


「………そうだね、、

 そうだよね!なんてったって、僕が認めた主人だし!

 僕が世界を滅ぼそうって誘ったわけだしね!」


 完全に復活したらしい。

 単純で、かわ、、、まぁいい奴だ、


 俺は安心し、彩との約束を思い出す。

 訓練場へ行かなければ。


 そしてアスカとドウジは、俺の話題だけで楽しげに語り合っていた。

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