第二十話 内なる魔王の反撃
ヴルドに向かって、ヴァルヴィスは地面を蹴り、砂利を蹴散らしながら素早く距離を詰める。
太陽の光が刃を反射し、まるで光の帯が走るかのようだ。
首に剣を突きつけたその瞬間――
「……綺麗な太刀筋だな、」
低く響く声とともに、ヴルドは太刀の先端を指先で掴む。
力をほとんど使わず、ヴァルヴィスの全体重を片手で持ち上げ、空高く投げ飛ばす。
空中でヴァルヴィスの体が回転し、砂埃が舞い上がる。
(……!、力だけでこれか、、
予想外だな、……)
ヴァルヴィスは空中で身をねじり、受け身を取りながら地面に着地する。
腕や足を滑らせるように動かし、砂煙の中で身を低くかがめる。
「参の斬・輪断……」
囁くように呟き、ヴァルヴィスは回転斬りを繰り出す。
太刀が空気を切り裂き、鋭い風の渦が周囲の土や小石を巻き上げる。
そのまま突進し、ヴルドの片腕を切り飛ばす。
しかし、切断された腕は再生し、元の形に戻る。
「ほう……素早く動く。それも正確に相手に当ててくるか、」
ヴルドは感心したように目を細め、血色の瞳に淡い光が宿る。
その瞬間、左右から影のような速度でヴァンプとエレンが斬撃を仕掛けてくる。
「邪魔だ!」
「あ?」
「うそっ!」
ヴルドは両手を広げ、指先から赤黒い血を一滴垂らす。
その血は空中で弾け、目の前で爆散。
ヴァンプとエレンは、風に巻き上げられるように吹き飛ばされ、地面に激突し、砂煙と破片が四方に散る。
「ったく……アスタロト!お前達は城に戻っていろ!
その俺が持てない蒼白星?とか言うやつを持ってな!」
「ああ?でも、、主人の許可が!」
「アイツがそう指示したんだよ!」
アスたちは不満そうに荷物をまとめ、振り返ることなくシドウの元へ戻っていく。
空気には焦燥と緊張が漂い、戦場の静寂が残る。
「これで、二人っきりだな……」
「俺の部下を……気持ち悪いな、」
「ん?安心しろ、アイツらはギリギリの状態で生かしている。」
その瞬間――
ヴルドの体が一瞬にして硬直し、拳に赤黒い血の膜が張り巡らされる。
光の加減で膜がうっすら光り、力が凝縮されていることが視覚的に分かる。
ヴァルヴィスはすかさず太刀で防ぐも、拳の衝撃が刃を震わせ、ヒビが蜘蛛の巣のように走った。
「くっ、」
「吹き飛べ!」
ヴルドの拳から衝撃波が放たれ、空気が裂ける音とともに風圧が辺りを巻き上げる。
ヴァルヴィスはその衝撃に押され、砂煙と瓦礫が飛び散る中、宙に浮かぶように吹き飛ばされた。
衝撃の余波が地面を叩き、近くの石や破片がまるで雨のように飛び散る。
そのまま吹き飛ばされたヴァルヴィスの体は、町の中心部、マルシオン王国の王城まで一気に運ばれてしまった。
「大丈夫だろうか、、」
玉座に座る王は、出陣した騎士たちを心配していた。
城内の空気は緊張に満ち、瓦礫が崩れる音と遠くからの爆発音が鳴り響く。
「王!
聖騎士、ダーク=ヴァルハルトが処刑され、囚われていた勇者一行が脱走……」
兵士が息を切らしながら駆け込むも、ヴァルヴィスが吹き飛ばされた瓦礫の下敷きになり、息絶えてしまった。
「王……逃げて下さい、」
瓦礫を押しのけながらヴァルヴィスは立ち上がり、必死に王に忠告する。
「お?お前がここの王か…………要らんな。」
一瞬でやって来たヴルドの瞳が血のように赤く光り、王を見据える。
「貴様!何も……」
言いかける間もなく、ヴルドは血液を力強く飛ばし、王もろとも爆発が巻き起こる。
城壁は轟音とともに振動し、瓦礫が天井から降り注ぐ。
「……そう来るか、」
ヴァルヴィスは瓦礫の間で剣を握り直し、呼吸を整える。
その間にも、城の壁や床が裂け、崩れていく音が絶え間なく響く。
「ほら、構えろ。お前がやり易いようにする。」
ヴルドは片手を前に突き出し、人差し指と中指を立てる。
指先から光のような血の膜が放たれ、空気を切り裂く。
「こうやるのか?斬……」
ヴァルヴィスの目が見開かれ、脳裏に衝撃が走る。
体が自然に前に進むが、脳内では焦燥が炸裂する。
(斬撃技も使えるのか!?)
「……は、!」
突如、城全体が巨大な刃で刻まれるかのように裂け、瓦礫が四方に飛び散る。
ヴァルヴィスは崩れた瓦礫の山の下敷きになってしまった。
マルシオン王国は、その瞬間、完全に崩壊してしまった。
「終わったぞ、ライト……」
ヴルドの力は体から抜け、元の俺の姿へと戻る。
俺はただ立っているだけなのに、国家は壊滅状態。
取り敢えず、アスと合流しよう。
瓦礫と煙の間を抜けようとしたその時――
見覚えのある強烈な魔力が、森の方からこちらに向かって、今俺の後ろで感じとれた。
「森の方から強い魔力を感じて来てみたら、、
王国の方からそれを上回る魔力を感じた。まさか、お前だったとはな……ライト!」
目の前に現れたのは、俺を裏切ったパーティメンバーの一人、ブルータスだった。
まさか、こんなに早く再会できるとは。
「……」
「どうした?ライト、俺は今からお前を殺すが、、
お前はまさか躊躇うのか?ほんとに……お人好しだな。」
ブルータスは嘲笑混じりに煽ってくる。
「いや、よかったよ。
一番最初に復讐できるのがお前で、、ぶち殺すのは俺のほうだ。やろうか、」
「……いいぜ、」
アスタロトがここに居ないのは残念だが、
お前が復讐への道を開いてくれた。
今の俺は複雑だが、楽しめている、と思う。
こいつの首を、持って帰ろう……
俺は笑顔で優しい瞳でブルータスを見つめた。




