第十九話 厄災の前奏曲
もっと上手く書けた気がする。絶対
今後出る23.24.25がお気に入りです
「なんだ、これは!幻覚か!?」
視界一面に、蒼の分身が幾重にも重なるように現れた。まるで空気そのものが割れ、光の層のように蒼が波紋を描いて広がっていく。兵士たちは思わず身をすくめ、馬は驚きで後ろ脚を跳ね上げた。最初は三体しかいないと思ったが、瞬く間に数十の蒼が現れ、混乱は頂点に達した。
「……なんだ、これは!?」
甲冑の装飾が豪華な隊のボスらしい兵士も、眼前に展開される異形の光景に言葉を失う。手にした剣をちゃんと握りしめるが、幻覚の波に心を奪われ、動きは鈍くなっていった。
しかし、混乱は敵だけではなかった。
「……ん?みんなが居ない、、」
蒼が後ろを振り向く。幻覚の範囲を誤ったらしく、自分の仲間にもかかってしまっていたのだ。蒼の顔に一瞬、焦りの色が浮かぶ。
その隙をつき、馬上の兵士が剣を振り下ろした。
「……隙あり!」
光の残像をすり抜けるように振るわれる刃は、あまりにも速く、蒼の想定を超えていた。しかし、シドウの反応はそれ以上に速い。重心を低く落とし、逆手に構えた太刀で斬撃を受け止め、兵士を吹き飛ばす。
「くっ、やるな……」
「そっちこそ、、こっちだって蒼の技を見極めるのに苦労したのに……お前早いな、」
(蒼、能力の範囲ミスるな、、)
シドウは愚痴を心の中で呟いた。
「そんなの、解析能力で1発だわい、」
互いに息を切らしながらも、視線は鋭く交錯する。
「そうか、来い!」
「いいだろう、」
幾つもの火球が空間を切り裂く。熱と光が周囲を照らし、乾いた空気が振動する。だが、その軌道の先に、兵士の死体が転がり込む。火球は無情にも無効化され、地面を叩きつけるように弾かれた。
「おい!俺様を忘れるな!」
イバラは叫びながら、死体の間を縫うように前へ出て拳を振るう。
「おい、おま……」
シドウが制止しようと手を伸ばすが、イバラは無視して馬から男を引きずり下ろし、顔面に連打を浴びせた。
「くっ、なんだ!お前……」
その残虐なまでの動きに、シドウは思わず息を呑む。
「はぁ、、こんなんでいいのかよ…蒼、止めるぞ」
「...はいはい、」
二人は冷静さを保ちつつ、イバラを制止した。死体は無造作に転がり、戦場の静寂に一瞬の重さを添えている。
――――――――――
(やばい、、やばいかも!)
俺は内心めっちゃ焦っていた。ヴァルヴィス、奴の力は異常すぎる。蒼白星で攻撃を受け流すのが精一杯で、魔力の残量も限界に近い。肩に乗るクロがアシストし、紫色の稲妻を放つが、ヴァルヴィスはわずかに身を翻し、容易く避ける。
「小賢しいな……」
そして、俺の小指が無情にも斬り落とされた。再生しようにも、太刀に施された力が邪魔をし、再生能力が封じられる。ヴァルヴィスは俺の戦法、能力を完全に把握し、距離を詰めてくる。
厄介極まりないな、
ーー同時期ーー
「めんどくせぇ!神を侮辱するな!
ほんとによぉ、、ぶっ殺してやる!」
聖騎士の緑、ヴァンプが大剣を振り回し突撃する。
「ッチ……」
アヌビスは舌打ちをし、槍を生成して直ぐに大剣を受け止めるが、
その際の衝撃によって、辺りに亀裂が入る。
(なんで力だよ、、
コイツ聖騎士っていうか、魔物じゃん!)
重心を前に移して勢いで吹き飛ばす。だが、受け身を取ったヴァンプは即座に反撃態勢へ移った。
ーー同時期ーー
「悪魔!聖騎士の討伐対象!」
エレンは、そう言いながらアスに向かって、攻撃を放つ。
素早い剣技、まるで舞っているかのように無駄のない動き、
だが、アスは全てを見通していた。
「おお、危な、そんなもん?聖騎士!」
アスは近づいて来たエレンの腹部に向けて、魔力弾を叩き込む。
吹き飛ばされて、ヴァンプと違い受け身を取るのが少し遅れてしまった。
「……!」
だが、アスは気付かぬ間に足に小さなナイフが刺さっていた。
これは、特殊な加工をされており神聖魔法が掛かっている。
そのため、アスにとっては天敵だ。
「やったな、」
足を刺され、先ほどより早く動けなくなった今、エレンに勝機がある。
エレンは直ぐにアスに向かって距離を詰め剣を振り下ろす。
3人とも、斬られる……その時だった。
《ふむ……腕の欠損に小指の欠損、血はあたりに降り注いでいるな、、借りるぞ。身体……》
魔力の形が変わり、瞳は赤く染まり、髪も血の色に変化する。目の下から首にかけて、血が垂れて来たかのように赤い線が描かれていく。
白い服は漆黒の動きやすい服に変化し、血液が一瞬にして地面から二人の聖騎士の耳を貫いた。
「お前、、まさか……」
ヴァルヴィスは攻撃を止め、口を開く。
「腕が落ちたか……脳を狙ったつもりだったんだがな……」
ヴァンプとエレンは直ぐに標的を変え、耳を抑えながらもヴルドに向かってくる。
ヴルドは、クロをアスの方へと投げ飛ばす。
三体一。
「選手交代だ……3人の聖騎士まとめて相手してやる。」
「バケモノが……」
「バケモノ?違うぞ、俺は魔王だ……」
ヴルドは邪悪な微笑を浮かべ、血と魔力を纏い、戦場に立ち尽くす者すべてに恐怖を刻みつけた。




