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第十八話 能力

 なんだ、こいつ……雰囲気が今までの奴と違う。


「……魔王、あんたが本丸かな?」


 目の前で、ヴァルヴィスが太刀の柄を返し、逆手に構えた。その動きは、剣士というより、獲物を仕留めるためだけに研ぎ澄まされた獣のようで、空気が一瞬にして冷え込む。次の瞬間、燕返し――刃が疾風のごとく走り、俺の首筋を正確に狙った軌跡が白く残った。


 その一撃に、ヴルドが叫んだ。


 《逃げろ!ライト!お前じゃ勝てん……!》


 いつになく焦っている。その声色だけで、俺の背中に悪寒が走った。こいつ、やっぱり桁違いにヤバい。


 直後、影のように動いたアヌビスが、真っ黒い槍を生成し、そのまま槍投げの軌道でヴァルヴィスへと放り投げる。黒槍は空気を裂き雷鳴のような音を生んだが、ヴァルヴィスは軽く首を傾けただけでそれを躱した。


 そのわずかな時間に、アスが俺の腕へと手をかざす。ふわりと温かい光が広がり、一瞬で肉が盛り、皮膚が張り、指先まで再生していく。


 …マジかよ、そんな能力持ってたのか、


 驚く暇すらなく、空中のヴァルヴィスは姿勢を崩さぬまま、影のように俺へ距離を詰めてきた。その速さは目で追うのがギリギリだ。


 仕方ない……残しておきたかったが、使うしかない。


 俺の視界が一瞬だけ金に染まる。瞳が黄金に変わったその瞬間――


 ヴァルヴィスの目の前から、俺たちが掻き消えた。


「……? 全員居なくなった……逃げたか?」


 声だけが、消えた空間に残る。


 俺たちは、かろうじてマルシオンの端の外れ――森との境目近くまで逃げることに成功していた。アスとアヌビス、クロを抱えるようにしての強引な転移。胸が焼けるような疲労が押し寄せ、膝が笑う。


「あっぶねぇ……アイツなんなんだよ……」


「主人!やるな、、」


「逃げれたのか、にしてもいつの間に……?」


 配下たちが一様に困惑して俺を見る。そりゃそうだ。ほとんど瞬きする間もなかったはずだ。


 だが、その安堵は――たった一つの足音で破られる。


 ザッ……ザッ……


「見事だ。良い判断力だが、、魔力をかなり消費したろ? 時を止めるとか言う、大技を披露したもんな?」


 振り向くと、ヴァルヴィスが背筋を伸ばして歩いてきていた。追ってきやがった。しかも、完全に解析済みの顔で。


「……くそ……」


 俺は蒼白星を握り直し、構えを取る。


「君たち量がいるな、なのでこっちも用意した………」


 ヴァルヴィスが片手を上げると、森の陰から二つの影が現れた。黄色の聖騎士と緑の聖騎士――ダークを捕まえたやつと、リアム達を拘束したやつだ。


「お前ら、アイツらの相手をしろ。クロ、俺の肩に乗れ援護を頼む。」


 クロが肩に飛び乗る。魔力を節約するため、クロの補助が必要だ。


 アヌビスは緑の聖騎士へ。アスは黄色の聖騎士へ。


 俺とクロは――ヴァルヴィス。


 《死ぬぞ、》


 ヴルドが吐き捨てるように低く告げた。


 死にかけたら、お前に身体の所有権を渡す。

 あくまで自論だが、コイツならどうにかしてくれる。

 ……そう信じるしかない。


「……魔王、あんたの能力万能で何種類かあるな? けど、、全て秩序に則っている、戦闘用じゃない……」


「あっそ、気づいたからなんだ?」


「お前の能力……それぞれの星の力、“星界律(せいかいりつ)”だな? 今の時を止める操作は、そうだな……土星の力。土星は太陽系の中で二番目に質量が大きい、魔力の消費も大きいよな?」


 ヴァルヴィスがにやりと笑う。その笑顔が、まるで俺の中を覗き込んでいるようで不快だ。


 厄介だな、コイツ……


 ――――――――――――――――――――――


「……速さだけか、?」


「ああ!!」


 別の戦場。木々の間を駆け抜けるように響いたのは、アテナの渾身の拳が男へと叩き込まれる音――のはずだった。だが男は、片手を軽く上げただけで、その拳を素手で受け止めて見せた。


(なるほど、あの男……Sランクですね、)


 サマエルは冷静に剣を弾きながら、男の動きを細かく解析していく。


 その少し先では、焔が弓の男との距離を詰められずにいた。矢は高速で放たれ、その軌道は風すら捕まえられないほどの正確さで焔の顔を狙ってくる。


「素顔厳禁だっつうの!」


 焔が手から大量の火球を放つが、弓の男はひらりひらりと避けていく。


 森の奥では、スイが武器も持たず逃げていた。


「女が一人、あっち行ったぞ!」


「魔王の仲間だろう!殺せ!」


「なんで、こんなことに!!」


 スイは泣きそうになりながら、ぎゅっと目をつぶり――


 大きな口を開けた。


 次の瞬間、周囲にいた騎士たちが、一瞬でその口の中へ吸い込まれた。


「ごくり……ん? 騎士さん達は?」


 ……スイ、恐ろしい子。

 自分でもその力を自覚していないようだ。


 一方、アテナは剣の男と殴り合いを続けていたが、攻撃がまったく当たらない。


「おらおら、そんな程度か!」


 挑発され、アテナはさらに力任せに振りかぶる。だが単純ゆえ、全て読まれてしまう。


 そこで――


「アテナちゃん!選手交代!」


 焔が声を張り、アテナと瞬時に位置を入れ替えた。弓の男は入れ替わりに気づくのが遅れ、目の前に現れたアテナの拳を避けきれずに顔面へ直撃。吹き飛んだ弓をアテナがキャッチし、そのまま破壊する。


「ふんふん、あたし強い!」


「ほぉ!、やったね、アテナちゃん。」


 焔はすぐに剣の男へ向き直る。


 男は焦り、剣を振り下ろす――が、その刃は空中で止められた。


「くそ、人が変わったからって……」


「これぞ、神業……うちは人じゃないよ、神様だから!」


 焔の手が軽く上がると、男の前に大量の焔の幻覚が現れ、何度斬っても消えず再生し続ける。


「なんだ、、何が起こってる……!」


「それは、幻覚……お馬鹿さん。」


 焔が指を鳴らすと、本物の炎が男を包み、灰へと変えていった。


「よし、完了!」


 焔は満足げに微笑む。


(なるほど……それぞれの役にあった敵に変えたんですね、賢いじゃないですか……)


 サマエルは静かに感心した。


 ――一方その頃――


「おい!なんでこうなった!」


「シドウ様!どうなってるんだ!」


 シドウと蒼の周囲には、どこから湧いたのかわからないほど大量の兵士が現れつつあった。二人の表情には焦りと苛立ちが混じり、戦場はさらに混迷を極めようとしていた――。

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