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第十五話 動き始める陰謀

 ーーマルシオン王国の酒場にてーー


「なぁ、アイツが勇者の一行か?」

「しらねぇよ……」


 昼下がりの酒場。

 薄暗い店内に、ランプの明かりがぼんやりと揺れている。

 木のテーブルは酒で濡れ、床にはこぼれた麦酒の匂いが染みついていた。

 隅の席で、酔いどれた男たちが小声で囁き合う。

 視線の先には、自分の髪を乱したまま椅子にもたれる一人の女――リアナがいた。


「……なんだ?アイツら、」

 気づいたようにリアナが目を細める。

 赤らんだ頬、手には空になったグラス。

 朝から飲み続けている彼女の声は、かすれていた。


 元勇者ライトの仲間。

 そして――裏切り者の一人。


 もう一人の仲間、ブルータスは今、

 マルシオン王国の城で

 “ヴェルデンの森”から観測された異常な魔力の調査にあたっている。

 そして最後の一人は――。


「リアナ……ここに居たのか、」


 背後からかけられた声。

 振り返ると、茶髪の男が立っていた。

 背は高く、メガネの奥からは冷静な眼差しが、だが微かに疲れを宿している。

 元勇者パーティの司令塔、ロイ。


「なんでアンタがここにいるの?」

 リアナが眉をひそめる。

 その顔は真っ赤で、目の焦点もやや合っていない。


「飲みすぎたな、リアナ。まだ昼だぞ?」

「そんなの関係ないでしょ、、」


 ロイは軽くため息を吐き、隣の席に腰を下ろす。

 二人の間には、長い沈黙が流れた。

 ――魔王を倒して以来、彼らは顔を合わせていなかった。

 ブルータスは過去を気にしていないようだが、リアナとロイだけはまだ心に残っていた。


「君はまぁまぁ、ノリノリだったと思うけど……

 演技力も凄かったじゃないか?」

 ロイが皮肉混じりに言うと、リアナは苦笑した。


「あれは……ライトには恩があったからね、結構な……罪悪感を押しつぶすため、ああしたの。

 あの子はいい子すぎるから、こっちから拒絶しないとダメよ。」

 そう言って、リアナはもう一杯を注ぎ、口に流し込む。

 瞳の奥には、後悔と懺悔が滲んでいた。


「君は最後まで反対してたもんね。

 ただ、ライトがあのままだと聖騎士とかになって国に利用されるのが嫌だった、

 ブルータスはお金と名誉のためだけど、君は違ったんでしょ?」


「どうだかね……もっといい方法は絶対あったのに……」

 リアナは呟き、空になったグラスを指で回した。

 その指先は震えていた。


 ロイはしばらく黙っていたが、やがてポケットから一枚の紙を取り出す。

「なにこれ?」

 リアナが受け取り、紙を広げると、細かい文字がびっしりと並んでいた。

 見慣れた筆跡――ロイのものだ。


「それは、僕が全て考察したんだ。

 読めば分かるけど、君を見つけたから直接言うね。

 予想だけど、ライトは生きている。

 そして、前に僕たちが倒した……正式にはライトが倒したあの魔王が復活した可能性があるが、、

 周辺にいたある程度話すことができる賢い魔物や、近隣のエルフに聞いたところによると、、

 姿は少し変わっているが、目撃情報が...」


 まだ全てを言い終わるよりも速く、リアナの手が止まる。

 息を呑み、震える声で叫んだ。


「行きましょう!」

 彼女は勢いよく立ち上がり、ロイの手を掴む。

 酒気が抜けたように、瞳は真っ直ぐだった。


 だが、ロイの顔は暗い影を落とす。


「けど、マルシオン含めた周辺諸国は近いうちにその魔王がいるかもしれない魔王城を攻め落とす、可能性がある。

 現に聖騎士までもが動き始めているんだ。

 ライトが無関係とは思えない、復活した可能性がある魔王と繋がりがあれば、バレた段階で直ぐ処刑だ。

 勇者でも、多分...」


「あっそ、、だから?

 その魔王城に置き去りにした、、

 謝りたいの。

 それだけ、、許してもらわなくていい、ただ伝えたいだけ。

 身勝手だと思うけど、あなたもそうでしょ?」


 リアナは金貨をカウンターに置いた。

 立ち上がる仕草は、もう酔っ払いのものではない。

 決意を宿した背中に、ロイが小さく笑う。


「分かったよ、でも……そう簡単にはいかないかも……つけられたか……」


 ロイが視線を入口へ向ける。

 そこには、緑のマントを羽織った大柄な男が立っていた。

 マントの背には白い十字の紋章――聖騎士団の印。


「ったく、国王もめんどくせぇな……

 聖騎士は何でも屋じゃねぇっつうの、」


 男は背に負った大剣を抜き、金属音を響かせる。

 その一言に、空気が一変した。


「……はぁ、派手なことはするなよ、前にもこう言うのがあったんだから……」

 酒場のマスターはそう呟いた。


「はい、気をつけますよ……」

 ロイはマスターに目を向けそう言った。

 そうしてロイは杖を構える。


 ――――――――――――――――――――――


「おーい!

 ダークからなんか来てるぞ!」


 アスの大声が、広い石造りの廊下に反響した。


「いや、ライト……今村に遊びに行ってる。」


 ゆっくりとした声で返したのは、城内の広場で素振りをしているシドウだった。


(いや、世界滅ぼす魔王が村に遊びに行くって……)

 アスは思わず心の中でツッコみ、額に手を当てた。


 ため息をひとつ吐くと、自室へ戻る。


 アスの部屋は、まるで古代と現代が混ざり合ったような混沌とした空間だった。

 剣や鎧が壁に並び、その隣には人間界で拾ってきた絵画、そして――大量の趣味道具。

 机の上には魔導書の横にギター、楽譜、さらに何故か模型まで積まれている。


 その部屋の隅で、丸く小さなスライム――スイが跳ねていた。

 透き通った体が、ランプの光を柔らかく反射する。

 そして、水色の長い髪を持った少女の姿になると、


「アス様!ギター聴きたい!」

 スイがそう言って部屋の隅のギターを指差した。


「へへ、スイも聴きたいのか、いいだろう。

 音色……奏でちゃいます…」


 自信満々の笑みを浮かべ、アスはギターを構える。

 だが――


 ポンッ。


 軽い音だけが鳴った。

 和音にもなっていない、ただの弦のミス。

 ミュートだ。

「まぁ......今度ライトに教えてもらおう、」

 アスは苦笑しながら肩をすくめた。


「そうですね!」

 スイは無邪気に頷く。


 そんな他愛もない時間を過ごしていた時、

「……おい、誰かいるか?」

 低く、落ち着いた声が扉の向こうから響いた。


「トイレじゃないんだから、、」

 アスは小さくため息をつき、ドアノブを回した。


 扉を開けると、そこには黒髪の青年――アヌビスが立っていた。

 なにやら、少し戸惑っているようにも見える。


「えっと、、何の用?」

 アスが尋ねると、アヌビスは腕を組んで言った。


「いや、部屋どこだ?」


 どうやら、彼は自分の部屋が分からず、最古参のアスを頼ってきたらしい。

 この魔王城は果てしなく広く、部屋数も膨大だ。

 それゆえ、迷うのは新人の常。


「アヌビスの部屋か……一階だっけ?

 うーん、ついて来て」


 アスは立ち上がり、スイが後ろから小さく「いってらっしゃい」とスライムの姿で跳ねた。


 二人は石畳の廊下を歩く。

 壁に灯る魔法の灯りが、二人の影を長く伸ばした。


「ここ、」

 アスが軽くノックもせず扉を開ける。


 途端に――目の前には白い便器。


「おい、絶対違うだろ……」

 アヌビスが呆れたように眉をひそめる。


「おっと、間違えた!トイレだった!」

 アスが大声で笑う。


 とんだ冗談である。


 しばらくして、ようやく一階の端にある扉の前で足を止める。


「ここかな、隣は左がサマエルで、右がアテナね。」


「上じゃないのか?」

 アヌビスが不満げに問い返す。


「上は、奥の左から図書室、ライトとクロ、僕とスイ、シドウ、イバラ、焔と蒼、だからさ。

 じゃあね。」


 アスは軽く手を振り、自分の部屋へ戻って行った。

 その背中が角を曲がると同時に、静寂が戻る。


(……まぁいい。入るか……)

 アヌビスはため息混じりに扉を開けた。


 ――が、静寂は一瞬で破られた。


「サマエル!音楽がうるさい!

 天国と地獄を流すな!特に夜に!」


「あなたには分かりませんか?

 その時間に、聞くこの音楽の良さが!捗るでしょ!何事も……」


 部屋を挟んで響く怒鳴り声と高笑い。

 壁が小刻みに震え、まるでこの階だけ別世界のようだ。


「ええ……これに挟まれんの?」

 アヌビスは顔をしかめ、重たく扉を閉めた。 


 ――――――――――――――――――――――


「ライト!手紙届いてた。」


 アスが玄関を開けた瞬間、息を切らせてそう言った。

 手には封蝋付きの手紙。村の夕焼けを背に、軽く汗ばんだ額を拭う。


「誰から?」

「ダークかららしい。」


 名前を聞いた瞬間、俺は思わず眉をひそめた。

 ダーク――あの皮肉屋の天才。敵とも味方とも言えぬ、あいつのことだ。


「なになに?」

 封を切り、手紙を開く。独特の癖字が並び、どこか鼻につくような文体だった。


「やぁやぁ、能力頼りの魔王君。

 武器の調子はどうだい?うまくいったか?

 ……あんまあの後にこう言うのは嫌なんだけどね、少し嫌な予感がするんだ。

 その為この武器を念の為君に預けるよ」


「……まったく、口の利き方は変わらないな。」


 俺は小さく呟きながら、文末に描かれていた魔法陣に指を当てた。

 淡い光が手紙全体を包み、空気が震える。

 そして、光の中から――銀黒の金属が姿を現す。


 片手で扱えるダークの愛銃。

 無機質な光沢を放ちながら、テーブルの上に「カラン」と音を立てて転がった。


「……お前の銃かよ。」

 俺は溜息を吐きつつ、銃を拾い上げた。

 手にした瞬間、ひやりとした重みが掌を伝う。


 銃口からは弾丸ではなく、光を放つ仕組み――かつてダークが俺に向かって使っていた武器。

 その構造を見ただけで、あの嫌な記憶が蘇る。


(“あの後”ってことは……俺が蒼白星を手に入れるために頑張ってた時のことか。)

 思い出す。

 あの時、ダークは”武器とは持ち主が信用できる1番の仲間でありその人の意思”

 なんて言っていた。

 信用や意思――そんなものを語っていた奴が、どうして今さら俺に銃を託すんだ。


「ほんと、何考えてるんだか……」

 呟きながら、一緒に付いてきたホルスターを腰に装着し、銃をそこへ収めた。

 窓の外では夕暮れの光が沈み、夜が世界を染め始めていた。


 ――――――――――――――――――――――


 夜 マルシオン王国


 月が雲に隠れ、街は青黒い闇に包まれていた。

 王都の裏路地、湿った石畳を踏みしめる足音が一つ。


「なんだい?人の後をついてくるとか、趣味が悪いんじゃないか?

 僕と同じ聖騎士のくせに……」


 ダークは振り返らずに言った。

 その声には、余裕と皮肉が混じっている。

 路地の奥で、マントが靡くそんな音が微かに聞こえる。


「先輩、すみません。

 上の命令なので……」


 静かに現れたのは、月光を受けて金に輝く髪の少女だった。

 黄色のマントが夜風に揺れ、そのマントには

 白の十字の紋章――聖騎士の象徴。

 青く澄んだ瞳が、迷いを押し殺すようにダークを射抜いている。


「少し強引ですが、来てもらいます……」


 その声と同時に、少女は風を切る速さで剣を抜いた。

 銀光が走る。


 だが――


「少し遅いよ。」


 皮肉げな笑みを浮かべたダークの手が、背の大銃を瞬時に引き抜いた。


 辺りの建物や地形を使い戦闘を有利に進める

 ダークにとって、夜は辺りが見えにくく、

 かなりやりにくい

 そんな中、聖騎士同士の戦闘が始まったのだった……

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