表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/62

第十三話 武器!

 ――朝。


 魔王城の食堂。長いテーブルの上には湯気の立つスープや焼き立てのパン、が並んでいる。

 俺はその中央の席でスプーンを持ち上げた。


「あ!それあたしのだぞ!」

「知らん!俺様が先に取ったからな!」


 アテナとイバラが皿の取り合いをしている。

 カチャカチャと食器の音、アテナの怒声、イバラの笑い声。

 広い食堂に響き渡るそれは、もはや戦場のようだ。


 ……とはいえ、もう慣れた。

 ここ最近は毎朝こんな調子だ。

 俺を含め配下たちで囲む食卓は、まるで戦闘員の集まりというより――大家族。

 うるさいが、悪くない。

 いや、むしろ……案外好きだ。


「我が君、今日はどんなご予定で?」


 ナプキンを整えながらサマエルが穏やかに問う。

 彼は常に冷静で、俺の執事のようにスケジュールを管理してくれている。


「アテナの村に行くぞ。俺たちの武器が出来たんだ。」


 その言葉を聞いた瞬間、アテナの大きな耳がぴくっと跳ね、尻尾を振っている。

「本当か!?」

 まるで子供のように身を乗り出す。

 やはり嬉しいらしい。


 今回向かうのは、獣人族の鍛冶屋。

 以前から注文していた俺の刀、シドウの刀、イバラの両手剣――

 ようやくそれが完成したのだ。


「食べたら行くか。それに、村と城の距離をもう少し縮めたいからな」


 そう言って、パンを一口。

 食堂には再び和やかな空気が戻る。


 ――そして、朝食を終えた俺たちは外へ出た。


 中庭には柔らかい風が吹き、空は雲ひとつない。

 クロが黒い鱗を陽に反射させてのんびりと寝そべっている。


「それで?どうやって獣人族の村に行くんですか?

 俺たちと違ってイバラやアテナはそこまで速くないですよ、クロに乗ります?」


 シドウが真面目な顔で尋ねてきた。

 確かに、クロを使えば一瞬だが……あいつに毎回負担をかけるのも気が引ける。


 俺は軽く首を振った。


「問題ない。村を城に近づける。もう村人達の許可は出てるから……」


 3人は一斉に俺を見た。

「……シドウ様。主人様今なんて言ったんですか?

 俺様、あんまよくわかんなかったっす。」

「安心しろイバラ、俺もよくわからん。」

「すごいな!主人様!」


 アテナだけが素直に感心している。理解していないが。


「まぁ見てろって。」


 俺はそう言って、静かに手を開いた。

 瞬間――瞳の奥が青く光を帯びる。


 次の瞬間、

 ドン、と空気が震えた。


 大地が唸り、足元の土がうねる。

 目の前の森が生き物のようにざわめき、木々が根を引きずって退き始めた。

 枝葉が絡み合っていた道は音を立てて裂け、まっすぐな一本道が生まれる。


「何が起こってる!?」

 シドウの声が揺れる。


 遠くで土煙が立ち、森の向こうに小さな屋根が現れる。

 ゆっくりと、だが確実に――村そのものがこちらへと移動してきていた。


 やがて、3キロほど離れていたはずの獣人族の村は、

 わずか50メートルの距離にまで迫ってくる。


「こんなもんで良いか……」


 俺が手を叩くと、大地の揺れは止まり、森の葉が静かに舞い落ちる。

 遠くで獣人たちが慌てふためく姿が見えた。

 まぁ、突然村が動いたんだ。驚くのも無理はない。


「いやはや、魔王になって力が上がったな……」

 自分で呟きながら、内心少し満足する。


 三人はというと――完全に固まっていた。

 口をぽかんと開け、目は点のまま。


 まぁ、すぐ慣れるだろう。

 たぶん。

「……じゃあ、行くか!」

「無理があるでしょ……」

 無理があった。シドウに止められてしまった。

「主人の能力、教えてもらってないんですけど?」

 うん、教えてない。

 でも思う。俺もお前達の能力教えてもらってないし、

 まぁ、

「全知全能的な感じで思ってもらっていいよ。

 基本なんでもできるから。勿論、上限はあるけどね」

 そうして、なんとか説得し村に向かった。


 ――――――――――――――――――――――


「主人様!お待ちしておりました!

 ここまで近づけていただき光栄です。武器出来ております!」

 村長がそう言ってきた。

 ありがたい。


 村は木造建築が立ち並び、石畳の広場には子供の獣人族の姿も見える。

 獣人族は頭が良く、力もある。鍛治の技術も確かだ。アテナは頭は良くないけど、まあそれも個性だ。

 鍛冶屋がいくつも並んでいたので、俺は武器を依頼させてもらった。


 広場に着くと、大きな木箱が3つ並んでいた。

 俺とシドウ、イバラの武器だ。

 アテナは拳で戦えるので武器は頼んでいない。本人の意思を尊重し、無理に持たせない方針だ。

 他の配下たちは魔法や特殊能力で十分らしい。


 まずはイバラの木箱を開ける。

 中には、見るからに重そうな両手剣が収められていた。

 刃先は銀色に光り、握り手には赤と黒の禍々しい装飾。刃の中央には複雑な紋様が彫られていて、光の角度で微かに光を反射している。


「おお!すごい!主人様!シドウ様!この両手剣いい重さで凄いぞ!

 アテナ、、お前も欲しくなったか?」

 イバラが言う。


 アテナは見惚れながらも、首を横に振った。

「ぜっ、全然だな!」

 多分欲しがっている。

 にしても良い武器だ。重そうな両手剣を、イバラは軽々と片手で持ち上げているが、

 どんだけの筋力だよ……。


「良かったな、イバラ」

「はい!」

 喜んでもらえて良かった。


「うう〜!俺の作った剣がこんなに喜んでもらえて……俺ぁ、嬉しいぞ!!」

 狼のような見た目の獣人族の鍛治士が涙を流して喜んでいる。

 作った本人も嬉しいのか。なんだか微笑ましい。


「……じゃあ、次は俺だな」

 そうしてシドウが木箱を開ける。


 中には立派な刀が納められていた。赤を基調としつつ、全体に黒の装飾が施されている。刀の鍔には丸い装飾があり、独特の存在感を放っていた。


「これはいい、耐久性やデザイン、切れ味も相当なものだな」

 シドウは刀を手に取り、刀身を軽く撫でながらそう言う。

 初めて会った頃に比べ、シドウはずいぶん丸くなった。最近はイバラのお世話もしていて、兄のように面倒を見てくれている。


 よく見ると、イバラの両手剣とシドウの刀は似たデザインで、まるで兄弟のような連携を感じさせる。


「こ、こんなに喜んでもらえるなんて!!オイラ、、」

 豚のような見た目の獣人が泣きながら喜ぶ。

 これは、なに?恒例なの?

 まあいい、俺も楽しみなので開ける。


 俺の木箱を開けると、中には神々しく白を基調とした刀が収まっていた。

 時折、灰色が混ざり、俺のチャームポイントのシアンが淡く光る。


「おお、これ、いいな!」

 感想はそれくらいしか出ない。

 もう出し尽くされてしまったからね。

 解析すると、この刀は相当な性能だ。耐久性はもちろん、特殊効果が付いている。


 この刀は俺専用で、能力は忠誠心。さらに、俺の能力を最大限高めるバフ効果まで付与されていた。


 刀を打ったのは、狐のような獣人の女性鍛治士らしい。

「よく気づいたな。」

 そうしてやってきたのは、今話した通り狐の獣人の女性だった。

「コイツは、打ってる時に自我が出来てしまってね、扱うの苦労すると思うが、扱えれば持ち主の期待を背負って何でもこなしてくれる優れ物になってくれるよ。」


 なるほど、忠誠心とは最初から備わっているわけではなく、徐々に引き出していくものらしい。

 それが最大化されると、何でも答えてくれる強力な武器になるのか。


 こうして、3人の武器は出揃った。

 名前も付いている:

 •イバラの両手剣は 黒茨ノ大牙こくしのたいが

 •シドウの刀は 焔蓮丸えんれんまる

 •俺の刀は 魔刃蒼白星まじんそうはくせい


 武器を手に、俺たちは城に戻った。

 アテナも欲しがっていたが、保留でいいだろう。


「良い武器手に入りましたね。」

 シドウは刀を腰に差し、イバラは背中に背負っている。

 俺もシドウと同じく腰に差すが、城に着くやいなや、刀が腰から外れて吹き飛んだ。


「ん?」

 掴もうとするも、まるで自我を持っているかのように刀は逃げる。

 まぁ、持ってるんだけど……。


「主人、、」

 シドウが呼ぶ。

 俺は思った。

 ああ、これ……だるい奴だ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ