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第十一話 狐の2人

もう少し書いても良かったかも

 マルシオン王国――王城・宮廷内。

 広々とした白い石造りの廊下を、ひとりの老人が慌ただしく駆け抜けていた。

 両手に抱えた報告書が震え、額には冷や汗が滲む。

 そして、重厚な金の装飾が施された大きな扉の前で立ち止まると、深呼吸一つ。


「大変です!国王!」

 老人はそのまま扉を開け放った。


 玉座、赤い絨毯の先に座る国王は、まるでそれを待っていたかのように静かに目を閉じていた。

 白い髭を撫で、老いた瞳が重く開かれる。


「……ああ、気づいておる。」


 その声音には、すでに覚悟と諦念が混じっていた。


 王の脳裏にあるのは、昨日出発した100人の騎士たち。

 魔王城の偵察を命じた彼らが、いまだに一人として帰還していないという報告だった。

 街を出たのは朝、今はすでに翌日の昼時

 通常であれば往復で半日もかからぬ距離――それが、完全に沈黙している。


「我が王国の騎士達は、ありとあらゆる過酷な訓練にも耐えてきた精鋭。それなのにだ……」

 王の呟きに、重く沈んだ空気が漂う。


 その時、玉座の前に立つひとりの男が一歩進み出た。

 厚い胸板に、青銀の鎧を纏う巨漢。

 鋭い目つきで王を見上げながら、低く唸るように言葉を放った。


「復活した魔王にもしくは、それ相応の魔物にやられたと考えるのが、、合理的……」


 声の主――ブルータス。

 かつて勇者ライトと共に旅をした、元勇者パーティの戦士のひとりだ。

 重い沈黙を破り、ブルータスは拳を握りしめる。


「元勇者パーティの俺が、、ライト居なくなった今、俺が国をあげて討伐に行く。」


 その宣言に、周囲の兵士たちがざわめく。


 とんだ芝居、誰のせいでライトが居なくなったのか、


 勇者パーティの3人は、ライトが今頃魔法で拘束され、餓死していると信じていた。 

 世界もまた、ライトが生きているとは思っていない。

 ライトが生きてることを知っているのは、

 ダークなどライトの後に転生してきた者のみ。


 しかし、その空気を切り裂くように、低く掠れた声が響く。


「いやいや、まだ早いでしょ……」


 重たい扉の影から、黒いコートを羽織った男がゆっくりと歩み出てきた。

 その歩みは怠惰で、まるで寝起きのような足取り。

 無精髭の残る顎を掻きながら、彼はだるそうに玉座の前まで進む。


 黒いコートの裾が風に揺れ、銀の留め具がきらりと光った。

 ぼさぼさの黒髪に、半ば閉じたような瞳。

 しかしその男が放つ圧だけは、場の誰よりも強かった。


「周辺国家マルシオン含め、三カ国が現在その者の討伐に向けて、準備を進めています、、

 ブルータスさんが行くべきでは”今は”ないかと、、」


 柔らかな言葉とは裏腹に、その声には揺るぎない威圧感が宿っていた。


 ブルータスはその瞬間、全身を熱くする怒りを覚えた。

 まるで自分が笑われたような気がしたのだ。


「貴様……!」

 怒鳴りながら拳を振り上げる。


 だが、次の瞬間。


「ぐっ……!」


 ドン、と鈍い音が鳴り響き、ブルータスの巨体が宙を舞った。

 まるで羽のように軽く、床を滑り、柱に叩きつけられる。


「……魔王を倒した勇者のメンバー……にしては、礼儀がなっていないんじゃないか?」

 男は静かに太刀の柄に手を置いたまま、視線を落とす。

「俺は、ライトの方がお前より生きててほしかったぞ?」


 その言葉に、玉座の間の空気が一瞬で凍りついた。


 男の名は――ヴァルヴィス・グランツ・ヴァルハルト。

 聖騎士団の隊長にして、ダークの父である。


 ヴァルヴィスは小さくため息をつき、倒れたブルータスの襟を掴んで立たせると、にこやかに微笑んだ。


「失礼、国王………粗相が過ぎましたね、」


「いや、構わん。」

 国王はわずかに目を閉じ、重々しく頷く。


「わかった、、三カ国同士で討伐を進めよう。」


 その一言で、決定は下された。

 そして――


 またしても、ライトの命が、狙われることとな

 った。


 ――――――――――――――――――――――


 俺たちの目の前に現れたのは、赤と青の狐のお面を被った二人の子どもだった。

 年の頃はせいぜい十にも満たないだろう。だが、その小さな身体から放たれる気配は、常人のそれではなかった。

 二人は並んで立ち、同時に俺を指差した。


「「衝突……」」


 瞬間、視界の端から轟音が響く。

 何かが、ものすごい勢いで俺の横腹を打ち抜いた。

 反射的に目を向けると、鉄の塊――トラックが迫ってきていた。


「……は、?…」


 避ける間もなく、俺の身体は空を舞った。

 鈍い衝撃音とともに地面に叩きつけられる。全身が悲鳴を上げ、骨が軋む感覚が伝わってくる。

 呼吸ができない。視界が白く滲んだ。


 最悪だ。

 あの時の感覚が――あの“事故”の記憶が、鮮明に蘇ってくる。


 だが、次の瞬間。


 何事もなかったかのように、俺は立っていた。

 足元は先ほどと同じ場所。横を見ると、アス、アテナ、そしてクロがいる。


「ライト!」


 アスが駆け寄ってきた。

 けれど、俺の身体は重く、視界の端には赤い液体が流れていた。出血している。

 ありえない。幻覚のはずなのに――痛みも、傷も、すべて現実のものだ。


 膝が折れた。地面に手をつく。

 土の冷たさが掌に伝わり、妙にリアルだった。


「……幻覚……? 幻覚で受けた傷が現実に反映されてるのか……厄介すぎる……」


 自分の声が震えているのがわかる。

 技を発動されたことすら気づけなかった。完璧な不意打ち。


「……ライト、、」


 アテナの声が聞こえる。けれど、俺の身体は動かない。

 脚がすくんでいた。


 《それは、恐怖心だ。お前、トラウマになってるな。足がすくんでいるぞ》


 ヴルドの声が頭の中に響く。

 ――ああ、分かってる。だが、体が言うことを聞かない。


「ふふ、あなたのトラウマ!」

「見えちゃった!」


 赤と青の狐面の子が、口元を隠してくすくすと笑う。

 その無邪気な笑いが、逆に俺の神経を逆撫でした。


「僕の主人に何するんだ!」


 怒りに満ちた声を上げ、アスが前に出る。

 紫の魔力が一瞬で凝縮され、球状となって放たれる。

 轟音とともに閃光が走ったが、狐の子らは軽く指を弾いただけで、その魔力弾を霧のように消し去った。


 空気が震える。

 ただの子どもじゃない。


「……! 神聖魔法、神か!」


 アスの顔が険しくなる。

 その声には確信がこもっていた。


「……悪魔は神には勝てないよ?」


 赤い狐の子が、挑発的に笑って言った。

 だが、アスは怯まない。


「分かってる、だからあんたの相手は僕じゃない」


 次の瞬間、後方から音が弾ける。

 どこから来たのか、アテナの拳が風を裂き、赤い狐の子に向かって突き出されていた。

 驚いたように赤い狐が身を引くが、青い狐が素早く前へ出てカバーする。


 しかし、その隙をクロが見逃すはずがない。

 漆黒の影が走り、青い狐の足元を弾いた。


 俺はその光景を見ながら、歯を食いしばって立ち上がる。

 傷口が再生していく。肉が蠢き、骨が音を立てて繋がる。


 《立つのか?》


 ヴルドの問いに、俺は息を吐いて答える。


「ああ。こんなので苦しんでたら、世界を滅ぼせないよ……」


 だが次の瞬間、視界が再び歪んだ。

 アスたちの姿が霧のように掻き消える。――また幻覚か。


 くそっ……


 だがその時、足元の地面がパズルのピース

 のように砕けていく。

 空間そのものが壊れていくようだった。


「大丈夫? 主人!」


 聞き慣れた声が響く。

 幻覚が砕け散り、目の前にアスの姿が戻る。彼女の周囲には、紫の光の残滓が揺らめいていた。


 おそらく、アスが神聖魔法の構造を無理やり破壊したのだ。

 高位悪魔だからこそできる芸当。


「「うそ!」」


 狐の子らが声を揃えて叫んだ。

 信じられないという表情。

 だが当然だ。アスは、俺の次に強い存在なのだから。


「君たち、まだ産まれたまもないな?」


 アスが二人を指差す。

 その言葉に、二人の動きが一瞬止まる。経験の差が露骨に出た。


 その一瞬の隙を、アテナとクロが逃さなかった。

 アテナの拳が赤い狐の面を弾き、クロの尻尾が青い狐を叩きつける。


 ドサリ、と二人は地面に倒れ、白い旗のような布を取り出して振った。


「……俺たちは悪さをしにきたんじゃないんだよ?」


 俺がそう言って2人を見つめる。

 お面の奥から見える2人の瞳は、少し震えていた。


 そうして、俺は彼らに全てを説明した。



ごめんけど、ブルータスは絶対裏切る

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