第56話剣術大会本戦 第五学年第8試合•第15試合について(間話)
「で、聞きたいことなんですが、僕の準決勝前…つまり第15試合の話です。」
アリアに向かって言う。
「それって、エマとの試合のこと?」
「はい、その試合のことです。」
「それで?」
「その試合の最後、アリアがエマの両手を斬り落とした時、一瞬アリアの手が速く動き見えたんです。」
「ええ」
アリアが頷く。
僕が続けて言う。
「…あれって風魔法を剣に付与したものですよね?」
少し間を置いて…
「よく気づいたわね、さすがキトね。
あれは腕に魔法を付与して加速させたものよ。」
アリアが言う。
やはりそうだった。
準決勝の時に浮かんだ記憶の中にもあったし、何よりその異様なまでの速さがその事実を示していた。
「そんな感じがしたんです。アリアが突然速くなってエマの両手を斬り落としましたから。」
「ほんの一瞬だけだった気がするけど…。」
「それでも、わかります。」
まだあの程度では分かる。
アリアの剣もまだまだだ。
さらに
「…ではあのエマさんがアリアを遅くした?のも魔法ですか?」
聞く。
これも気になっていた。
そもそも勝てそうだったアリアがいきなり一瞬で窮地に陥ったところが怪しい。
いきなりエマのオーラが一瞬だけ変わり、その後アリアの動きが遅くなった。これも魔法では無いのか?
「分かるのね、そうよあれも魔法よ。
まあ、あれは相手の身体に直接干渉しているから使うのはルール違反だけど…。」
アリアが言う。
やはりあれも魔法だった。
属性的には闇か。
「身体に干渉…効果は身体速度半減くらい、ですよね?」
「半減…ええそのくらいよ。」
アリアが少し首をかしげた後、頷く。
「では、その魔法を防ぐためにあの連撃を仕掛けたわけだったんですね。」
話が繋がった。
準決勝前に言っていた、
「あれは相手に攻撃させないためよ」の意図はここにあったのだ。
「ですが…結局は使われてしまったと。」
「ええ、そうよ。」
アリアが少し悔しそうな顔で言う。
しかし魔法をあんな猛攻仕掛けられた中でしかも短時間で発動できるのは凄い。
「なるほど、魅力的な魔法ですね。」
そう考えるとエマの使った魔法はとても魅力的だ。
効果は身体速度半減、発動は一瞬なのだ。
卑怯な魔法だとしても気になる。
そう思っていると…
「キト、もう一度言うけど、あれはルール違反だから試合で使うのはダメよ」
アリアから忠告が入った。
「分かってますよ、流石に使ったりしません。」
使うつもりがないので、それは流石に訂正しておいた。
すいません、まだ間話は終わりません。
もう少しだけ辛抱ください。




