第52話剣術大会本戦 キトの準決勝(決着)
やっと戦いに決着がつきます。
では、やっていこう。
まず低温脆性でアランの剣の破壊を行うわけだけど、僕とアランどちらの剣もすでに火を纏っているから、火魔法で温める必要はない。
行う必要があるのは氷魔法での急激な冷却とその後の叩き割り。
叩き割りはいいとして、氷魔法はどうやって行おう?
僕は火魔法適正だ。
そんなに適正のない魔法は使ってないし、氷魔法に関しては洞窟の一件後、毎日練習しているが下級でさえ未だに使えない。
もう半年ほど経つのにだ。
その半年間使える火魔法の級が中級くらいから上級の末端に上がったくらいなのに一向に使えるようにならない。
火魔法なんて一日で使えるようになったのに…。
まあでも実際これは仕方ない。
ひとによっては一日で扱当て他の人にとっては一年と経っても扱えない魔法…なんてよくあることだ。
これだから魔法職、魔法使いたちは軽視されやすいし難しい。
もといそもそも魔法は継続が大切なのだ。
例え魔法が発動しなくても集中力は削られるし、体力だって使う。しかしその代わり魔法が使えなくても肝心な体力と集中力は付く。さらに魔法は適性がなくたってずっと続ければ中級くらいまでは使えるようになるのだ(…まあそれが難しいのだが)。
こう見えても案外魔法使いは肉体派の職業なのだ。
そんなわけで氷魔法への愚痴はいいとしてどう氷魔法を使う…剣を冷やす?
しばらく考える…。
うーん…わからないけど、もしかしたらこの剣でできるかもしれない。
そもそも火が起こったときも僕は魔法の行使をしていなかった。アランについてもどうなのかはわからないけど、たぶん使っていない、そんな感じがしなかったから。
そう考えるとおそらくその時火魔法…中級火魔法中火並の魔法が発動させたのは僕の剣とアランの剣ということになる。
確かにそれぞれの剣の主材料である魔鉱結晶と魔鉱鉄は魔力を溜め込んでいるし辻褄が合う。
なら氷魔法も使えるのではないか…?
「カーーンッ」
剣と剣がぶつかる。
正面垂直斬り下ろし。
慌てて僕は同じく正面垂直斬り下ろしを行って剣を遮る。
アランは先の斬り下げに続いて左上からの斜め斬り下げ。
今度は僕が剣を左上斜め方向に斬り上げを放ち受けた。
ステージでは先のキトが攻め、アランが受けの攻防はいつの間にか終わりアランが攻め、キトが受ける展開が始まっていた。
(ひえっ、危ない危ない。)
考えながらだとやはり剣筋は甘くなってしまうらしく、気づかない内に攻め受けの立場は逆転していた。
しかもその状態でアランの剣は僕を圧倒したようで、アランの剣は僕の体のすぐ近くまで来ていた。
とりあえずアランの剣を考えるのをやめて剣で受けるが、アランの剣筋は鋭く、重いのに対して僕の剣は軽く遅かった。
左腕からの出血は布で留めていても防ぎきれず、血が出続けている。
さらに両手剣寄りの直剣の片手での長時間の使用は僕の右腕をどんどんダメにしていく。
(例えこの状況で僕の攻めが巡ってきても僕はアランに勝てない…。)
(ならば、一発勝負だけどやってみるしかない!)
キトは思った。
そしてそのキトの目の先には真っ赤に燃えて炎を出す、二振りの剣が映っていた。
実際その時すでに2人の剣は度重なる加熱で超高温の状態にあった。
(えっとどうやってやればいいんだ…?とりあえず、勇武な氷の精霊よ、その強き力で、我の力となりて、物を冷やし、物を凍らしたまえ…冷却)
中級氷魔法の冷却を使ってみた。
いきなり中級魔法は難しいと思うけど、冷却系ならこれが1番簡単だからやってみた。
そうすると体から大きく何かが吸われる感覚が…。
この感覚は魔力だ。
それにしても大きいが…まあ一旦いいか。
そしてその感覚の後僕の剣が持ち手から徐々にいや急激に湯気を出しながら冷気と共に凍りつき…そしてついに先端まで冷気が届いて剣全体が凍りついた。
そしてステージ全体が湯気に包まれた。
湯気は体にも感じられたが、同時に持つ剣からくるとてつもない冷気のせいで有耶無耶になった…というか感覚が変になった。
その状態でも僕らの剣はぶつかり合う。
「カーーンッ、カンッ、カンッ、カーーンッ…」
アランはいつしか重攻撃と軽攻撃を織り交ぜ、攻撃を仕掛けてくる。
僕の剣はそれを受けて、受けて、流して、流した…。
2人の剣は幾度となくぶつかり合う。
剣戟。
僕の剣は凍りつき、アランの剣は凍っていない。
アランの剣は火を炎を放っている。
剣の熱気は冷気と対になり、燃え盛る。
しかし僕の剣は圧倒的な冷気を常に出し続けた。
アランも負けていない。
何かわからないがこのまま一瞬でも手を抜くと、気合いを抜くとなぜか自分の剣が自分が負けてしまうような気がして…剣に集中して、力を込めて、全身全霊を尽くして剣を振り続けた。
剣は互角、アランの炎は未だ燃え盛っている。しかしキトの冷気も同じくいやそれ以上の力で冷やし続けアランの剣を次第に囲んでいく。
そしてまた一合。
剣が交わり合った。その瞬間アランの剣が粉々に砕け散る。
アランは驚きを隠せず、動けない。
例え自分がこの瞬間丸裸であったとしても。
キトが素早く回した剣がアランの首に添えられる。
その後すぐ、審判が叫んだ。
「キト、武器破壊。よってキトの勝ち。」
会場が静まり返る中、2人は礼をしてステージから降りる。
こうしてキトの準決勝の幕が閉じた。
しかし
「バサッ」
キトが階段を降り終わる少し後、席の少し前でキト突然前に倒れた。
キトを見ていたアリアは急いでキトの下に寄る。
アリアはキトを回復体位、左肩を下に右肩を上に横に寝かて…
「キト?」
普通の声量で問いかける。
反応はない。
もう一度、
「キト!起きなさい。」
強めの声で言ってみる。
反応はない。
もう一度、
「キト!本当に起きなさい!」
アリアが大声でキトに向かって言う。
キトが聞いたらあの般若のような顔の時の声量と言うであろう声だ。
しかしキトは反応しない、さらに瞬き一つしない。
キトはこの時倒れたのだった。
この戦いも長かったですね。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
そしてもしかしたらこの戦いはとても長いので後で1話にまとめるかもしれません。
その時はよろしくお願いします。
さてキトの準決勝が終わったので今度はアリアの準決勝ですね。そしてそれが終わったら決勝戦、どうなるのでしょうか?
では、明日も21時投稿なのでよろしくお願いします。




