第46話剣術大会本戦 第15試合 アリアvsエマ
どうも、キトだ。
結局あの後、ソラの多量出血によって勝利した僕は、今は席に戻って休んでいる。
甘ーい砂糖水を飲み、ちょっとした軽食を摂って、極めつけには(本当はダメだけど…)少し寝ながら、試合を観戦している。
(堕落するな?)
一部の人々はこんな僕のことを堕落していると批判するかもしれない、けどこれは仕方がないことなのだ。
たとえば砂糖水と軽食。
これはエネルギーを補強するのに役立つとされて、学校でも推奨されている。
つまり、何も問題ない。
隣を見てみると…そっかアリアは飲まないけど、他の生徒は飲んでいる。
睡眠も同様だ。
僕は長時間激しい剣戟を繰り広げ、体中に傷を受けた。
そしてそれの治療の為に保険科の先生に囲まれてたくさんの治癒魔法をかけられた。
ちなみに治癒魔法はかけられるほど眠くなる。
そのため、眠くならない方が不自然なのだ。
「アリア」
「はい」
アリアが礼をしてステージに上がる。
ちょうどいいタイミングだ。
アリアの試合が始まったから観戦しよう!
「エマ」
「はい」
対戦相手も礼をしてステージに上がる。
ほんわかしていて穏やかそうな人だ。
そして間を置いて審判が叫ぶ。
「試合、始めっ」
試合が始まった。
2人が剣を抜いて前に構える。
アリアのはいいとして、エマさんのはそれより一回り小さい短直剣?のような剣だ。
2人は睨み合う。
そして2人ともからそれぞれのオーラが感じられる。
エマさんは控えめな優しげなオーラ、アリアはうん?不思議だけどいつも感じているより強い気がする…メラメラと燃えるようなオーラだ。
…と思ったらアリアが先に動いた。
走っての半身突き、そのまま前足を引きながら剣を右上に回しての斜め斬り下げ、そして左上からの斜め斬り下げ、剣を横にしながらの左横薙ぎ、そして腹突き…。
アリアからの連続での剣戟。
エマの剣に小さく弾かれるところを察知して、剣に力を込めるのではなく手数で戦っている。
エマの剣受け。
剣を器用に小回ししてアリアの剣を弾く、アリアから繰り出された100を超える斬撃は未だに一発も掠らない。
そのまま2人は放ち、受け続ける。
100、150、200、300、500、1000…
未だ、2人とも傷も、疲れも、一切見せない。
アリアはいつも見ているから納得がいくとして、エマ。流石剣術大会本戦出場者、驚きの実力だ。
2000、5000…
未だ、2人とも傷も、疲れも、一切見せない。
10000…
未だ、2人とも傷も、疲れも、一切見せない…と思ったところだった。
エマが汗をかき、剣尖を荒くして、疲れを見せ始める。
勝負が決まった。
エマは必死に防ごうとするが、防ぎきれず、ジリジリ押されていく。
それに対しアリアは先ほどと変わらない顔でひたすら攻める、攻める。
遂に、遂にアリアの剣がエマに届く。
その瞬間、一瞬エマのオーラが変わったように感じて目を瞑る。
しかしそれは一瞬だったのか知覚してもう一度感じてみてもあの控えめな優しいオーラしか感じない。
(なにかおかしいな。)
何か嫌な予感がして2人を見てみる。
エマには何も異常はないが、アリアは…剣が弾かれている?!
エマに届きそうだった剣がいつのまにか弾かれている。
しかも剣は高速で飛びアリアの手から今にも離れようとしている。
(これは、不味いのでは。)
剣を失うと戦闘不能負けにされるか、即時負けなくても戦闘不能状態まで斬られる。
(どうするんだ?)
再度2人を見つめる。
(んっ?いや剣が速いのではなくアリアが遅いのでは?)
気づいた、なぜかアリアが異様に遅く動いている。
まるで速さを二分の一にしたようだ。
そしてその手は必死に飛ばられそうな剣を握っている。
(剣はギリギリ掌握できている、けど、このままじゃ…)
剣に斬られる。
剣を離さずと剣を掴んでいる、アリアはエマにしては絶好の的になってしまう。
(アリアが斬られる!)
そう思った時、アリアの剣がエマの左腕、続いて右腕を斬り落とす。
そしてそのままにせず、剣をエマの首に添える。
「降参して」
先ほどとは一般狂ったような顔になって言った。
「降参」
そしてそれを聞いた審判が叫ぶ。
「アリアの勝ちっ」
それを聞いたアリアがまめの見える右手で握り拳を作る。
「うおぉぉぉー」
観客席から大きな歓声が上がった。
今日で5、6番目に大きな歓声だ。
第15試合はアリアの勝利で終わった。




