第43話剣術大会本戦 第3試合(間話)
やっぱりキトはマイペースです。
「勝者キト」
「おおお」
会場が沸く。
2人の激戦に観客席の人々は感化されたようだ。
一般席の人々はもちろん、お偉いさんもそのふさふさ髭をふさふさ撫で頭を小刻みに振っていた。
その中でキトもジークもはーはー息を吹きながら礼。2人は握手して、満足の笑みを交わし、席に戻った。
アリアがキトを見ているとキトも笑顔でアリアに手でピースのポーズを取る。
キトが席に座るとアリアが言った。
「お疲れ様」
「うん」
キトはそのまま、水分を摂り、目を瞑って休みに入る。二回戦目はまだ先だった。
次に第3試合の選手がそれぞれ席を立ち、ステージに上がる。1人は暗そうな青年で、もう1人は観客席に手を振っている金髪イケメンの青年。その先には豪奢な格好の夫妻が。
「いやな人」
アリアは思った。
声には出さず、少し思うだけだった。
隣には疲れているキトがいるので、キトに気をかけたくなかったからだ。さらにキトは妙に感がいいし。
そうしていると選手たちは所定の位置についた。
そして審判が声を張り上げて言う。
「試合、始めっ」
第3試合が始まった。
始まると同時に2人の選手は大体同じ長さの直剣を堂々と構え、睨み合う。と思ったら飛び出した。
剣がカンカンぶつかり合い火花が飛び散る。
「おおおっ」
観客席から歓声が響く。
観客者たちは「これも第2試合同様接戦になりそうだ」と思い、豪奢な格好の夫妻はいかにも誇らしげにした。
がその流れは愚か、数合も立たずに片方の剣が空に大きく飛んで回転、そのまま地面に刺さった。
剣を失ったのはどちらの選手か?
場外れなことをした選手は誰か?
会場の人々、特に生徒たちは厳しい視線で2人を見つめる。
当然アリアも2人を見る。
まあ彼女は別に特に厳しい視線でもないが。
さて剣を失ったのはどちらの選手だったのか?
それは剣を失ったのはアリアが嫌がった金髪の選手だった。
彼は顔を真っ青にして、審判に顔を向ける。
少し間を置いた後、審判は叫ぶ。
「トレス、戦闘不能。ソウの勝ち」
第3試合が終わった。
「キトは…大丈夫そうね」
試合が終わって、ざわざわする中、アリアはキトの寝顔を見つめていた。
キトの一回戦目の相手ジークはアリアも知る強敵で、トーナメント表を見た時は正直キトが勝てるのかとも思ったが、それは杞憂だった。
キトはもちろん勝ったし、他の人々は接戦だと思ったようだが、アリアの見る限りあれはキトの圧勝だった。
さすがに大丈夫だと思ったが、一応でも他の観客者はみんな接戦と言うからキトを見ていたが、それも杞憂で済みそうだ。
キトはいつもの昼食後の昼寝(キトの習慣だ、アリアも付き合ったことがある)と同じようにぐっすり、心から眠っていたのだ。
「よく寝て体を休めなさい」
アリアはそう言って前を向く。
そうしてアリアは来たる自分の一回戦目に備えるのだった。




