第一章 第一話 学園生活の始まり
4月5日
入学入社のムードでいっぱいの世間の波は今日最高潮を迎える。
そんな中、その波に乗り今日「国立クロス学園」の初等部から大学部までの入学式兼進級式が一気に開かれ、新たな生活の幕開けを迎えようとしている。
あと一時間で式が始まるという中、高等部の一年のクラスに一人の少女がいた。誰もいない、今日から三年間使うことになる教室、大きな教室の唯一開いた窓の際で、外の桜吹雪に目を奪われる彼女のトワイライトブルーの目には、これからの生活も見えているのだろうか?
「あ~、ジャンヌ!やっぱりここにいた~!」
控えめに開けられた戸から、春の陽気のような声が彼女、ジャンヌ・エリアルを呼ぶ。
「あぁ、キリエじゃない。どうしたの?」
ジャンヌは開けた窓を閉め、十年来の親友、キリエ・エレイソンに向き直る。
「どうしたの、じゃないよ。そろそろ体育館にいかなきゃ。入学式始まっちゃうよ~。」
「始まるってアンタ、あと一時間もあるじゃない。余裕よ余裕。」
「でも、高校の体育館っておっきいでしょ~。おっきいってことは人もいっぱいいるってことだし、人がいっぱいいるってことは…」
「わかったわかった。早く行かないと入り口でぎゅうぎゅう詰めになるって言いたいんでしょ?そうなったらほかの連中押しのけて行けばいいのよ。」
「そんな~。そんなのジャンヌならできるだろうけどわたしには~…」
「相変わらずびびりねぇ。そんなにびくびくしてるからいつもからかわれるのよ。」
「あう~。で、でもそれだけじゃなくて…」
「体育館のある方角がわからない、でしょ。それも相変わらずね。まぁいいわ、行きましょ。どうせ退屈だったし。」
「う、うん」
見事に看破されて言葉を失っているキリエを連れて行くように、荷物を持ってジャンヌは体育館に歩いていく。
なにはともあれ今日から高校生。これから待ち受けるものはいったいどんなものなのか?
式も終わり、自分たちの教室に戻ると、そこにある風景を見てジャンヌが一言。
「虚しいわ」
そこにはこれから三年間お世話になる面子が揃っているわけだが、
「まぁ、初等部から全く変らないもんねぇ~。」
キリエが言うとおり、全員7歳で入学して以来全く変化のない顔ぶれとなると新学期が喜ばしく思うどころか気が滅入る。さっきまでの希望にあふれたビジョンを持つ者はおよそ皆無なのである。
この学園は希望者寮制のエスカレーター式学園であり、各学年にクラスは一つで定員50名、一応編入試験や堕ちた穴を埋めるための入学試験はあるのだが、いずれも超難関で「こんな思いをしてまで受けるなら、働きながら勉強して、司法試験なり医師国家試験なり受けたほうがよくね?」と思う人が多く、少なくとも今までに入ってこれた例はほぼ無し。ゆえに滅入る。
(こんな状態だから校内恋愛は大抵違う学年同士なのかもしれないわね)
一人でそんなことを考えてたジャンヌだが、
「本当にな、またおまえと隣同士だと思うと、俺の夢の高校生LIFEはお先真っ暗だぜ。はぁーあ。」
腐れ縁野朗にそんなことを言われた矢先、どんより憂鬱モードなんてしていられない。というかレイセイデイラレナイ。
「なによ!私もあんたなんかと毎日顔を突き合せなくっちゃいけないなんて、耐えられないわよ!」
「はいはいおちつけー」
「なによ、その腑抜けた返事は!だいたいあんたってやつはねぇ、……」
これも毎日恒例、「朝から痴話ゲンカ」である(本人達からすると毎日のお説教と馬耳東風)。
「ほんとにジャンヌとタクマは仲良しですねー。高校でも続きそうでよかったです~。」
ピシッ!教室の空気が凍る。
あまりにもその場の空気が読めてないキリエの発言に、ジャンヌと、さっきから聞き流しを決め込んでいたタクマ・アダムスがむきになって反論する。
「キリエ、私は何年も前から言ってきてるけど、これは仲良くお話じゃなくて説教であって…」
「キリエちゃん、だからいつも言ってるけど、俺は頭のイカレタこいつの話をテキトーに聞き逃しているのであって…」
ナイフのようにとげとげしいジャンヌ、面倒に関わりたくないが逆撫で上手のタクマ、ほんわか見守るキリエ。少しづつ大人になる周りに反して本当に変らない三人は、だからこそ世界の根幹に関わる事件に巻き込まれていくのであろう……。
作:なんとか第一話を投稿できました。いかがでしょうか?本当はニャルラトホテプ様は喜ばないのだけど、現時点で公表できるキャラクター設定を発表します。
今回は三人の学生たちです(現時点では全員15歳)。
タクマ・アダムス
性別 男
使用武器 両刃大剣
詠唱魔術 なし
使用魔具 肉体補助系
ジャンヌ・エリアル
性別 女
使用武器 儀式用短剣
詠唱魔術 火、水、風、土
使用魔具 錬金術用の意味補正道具
キリエ・エレイソン
性別 女
使用武器 術用杖
詠唱魔術 光
使用魔具 緊急防御霊装