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--第5章:死にかけの貴族3

命を助けてやったのに図々しいと思いつつも、こんな森で二人きりで歩いていたら、間違いなくまた襲われるのは明白だ。


面倒くさそうに頭をかきつつ貴婦人が首にかけているネックレスをチラリと見る、このネックレスも相当価値が高そうだ、それを要求してもいいが、屋敷に一緒に帰って正式に謝礼をもらったほうが得な気もするし、なによりメカストリアには行ったことがない。


この二人がメカストリアに向かっていたということは、少なくとも自分と違って初めて行くわけではないだろう。もしかしたら国境の関所などがあり、商人だけしか通行許可されていないかもしれない。その場合、貴族と一緒なら、もし一人で通れない仕組みだったとしても、権力で無理やり通してもらえるのではないだろうか。


「わかった、家までついてってあげる。で、どのくらいかかるの?」


「はい、馬車で四時間ほど行ったところにある街に私たちの屋敷があります。


それと申し遅れましたが、私の名前はアナスタシア・テクノバーグ、息子の名前はエミール・テクノバーグと申します。」


「あたしは、ヴェ…」


自分の名前を言おうとして少し躊躇した。今の体は本当に自分の体なのか?外見は頭の中にいるマリアのもので、髪の毛の色だけが自分らしいが。


その疑問を感じ取ったのか、マリアが答える。


—あなたの意思で行動しているのだから、あなたそのものですよ


そんなことを言われただけでは到底納得できるものではない。そもそもこんな事象、いままで体験どころか聞いたこともないのだから。


—それではあなたと私の名前を合わせてヴェルヴェット・マグダレナと名乗るのはどうでしょう?


現時点で考えても答えの出ない問題としては妥協点だろう。マリアの意見を採用した。


「ヴェルヴェット・マグダレナだ。


あたしはこっちの生まれじゃない、馬車がない場合の行き方がわからないので、その場合の行き方を教えて」


名乗った後、アナスタシアからテクノビレッジへの行き方やメカストリアの大まかな情報を聞いた。


まず、馬車がない場合は徒歩でクロックリッジというメカストリアの最東端の街に行き、そこから定期的に出ている馬車に乗る必要があるという。クロックリッジは首都に向かうために自分も目指していた場所で、そこから首都に向かう途中の大都市に屋敷があるのでそこで降りるということなので、すんなり理解できた。


ちなみにメカストリアの首都は、「首都メカストリア」という名前らしい。わかりやすくもあり、少し紛らわしい。


首都メカストリアと三大都市を中心に形成されており、その周囲には小規模な街や村が点在している。三大都市はそれぞれの地域の経済や産業を支える要となっている。その他の地域には、地方独自の特性を持つ小さな集落や村が広がり、国全体の活気を支えているとのこと。


王は首都に居を構え統治しており、三大都市は大貴族が管理しているが、基本的には全て王の支配下にある。


大都市テクノビレッジ:


インフラ産業を主に製造している都市で、メカストリアのインフラの九割はここで製造している。先ほど助けたテクノバーグ家は、この都市を治める大貴族だということだ。


大都市アームズフォージ:


軍事産業都市で、大砲やマスケット銃などあらゆる軍事産業を製造している。アームスウォード家が治めている。


大都市オートマタスプリングス:


自動人形を製造している都市で、自動人形は戦争の道具にも生活にも役立つ。自動人形はとても高価だが、必要とする層には飛ぶように売れているらしい。オートメイア家が治めている。


それを聞いてニヤリと笑みを浮かべる。かなりの貴族だとは思っていたが、想像以上の大貴族だった。結果的に命まで危険にさらし、ネックレスごときで満足せずに本当によかった。


報酬をもらったらどうしようかと意気揚々と歩いていたが、だんだんと日が暮れてくる。ふと我に返る。


馬車で数時間の道のりだ。森を抜ける前に日が暮れるに決まっている。


「今日は野宿だな」


それを聞いて二人はキョトンとした顔をしている。もしかして野宿をしたことがないのか。


「外で寝るってことよ。今日中にはどうやっても街には着かない。かといって夜中に森を歩き回るのは危険だからね」


そう言って、三人で野宿する場所を探し出す。運がいいことに洞窟を見つけた。


野生動物のねぐらの可能性があるので中の匂いを嗅ぐが、生臭い野生生物の匂いはないのでおそらく使っているものはいないだろう。


洞窟を見つける時についでに集めた薪に、持っているサバイバル道具で素早く焚き火をつくる。


「あんた達はここにいて。薪をくべて火を絶やさないこと。あたしは食べる物を探してくる」


それを聞いたアナスタシアは心配そうな瞳でこちらを見て答える。


「でも、あたりはだんだん暗くなってきています。ヴェルヴェット様は大丈夫なのでしょうか?」


「あたしのことは心配しなくていい。慣れてる。それに”様”は余計だ。呼び捨てでいい、それかせめて”さん”にして」


そう言って洞窟から離れて獲物を探しに出かける。


洞窟から離れる前、妙にエミールがキラキラした瞳でこっちを見ていた気がする。あれか?男はサバイバルとかそういうのが好きだ、みたいなことを聞いたことがある。


ただなぜこっちを見ながらだったのか。一緒に狩りでもしたかったのだろうか。さっき命が危なかったっていうのによくもまぁ、たいした子だ。


呆れとも関心ともいうべき感想を持ちつつ森を進んでいく。


獲物を探しながら、先ほどの戦闘を思い出す。


そういえばあのときの足の傷を癒やす力、あれはいったいなんだったのだろうか?


「ねぇ、さっきの癒やしの力はなんだったの?」


頭の中のマリアが答える。


—あれは聖なる力、セラフィム・ブレス。天使の祝福によって継続的に癒しの効果を与えます。


なるほど。つまり魔法だ。


魔法の力は偉大だ。その魔法の力があれば傷ついた体が癒やされるということ自体は至極真っ当で理解ができる。


だが、問題はあたしは本来魔法が使えないということだ。本来、魔法というものは適性がなければ使えない。そして膨大な知識の勉強と習得までの修行、人生の大半を費やさねば、さっきのような癒やしの魔法で生計を立てることはできない。


生計を立てるのがマリア目的かは疑問が残るところだが、とにかくそれほどまでに習得には時間と労力が必要ということだ。


攻撃魔法はなんとなく知識はある。敵が使ってくることがあるので、知っているかどうかで生死が分かれるからだ。


しかし回復はそれほど知識はない。少なくともあの傷をあそこまでの速さで癒す魔法は見たことがない。


もちろん魔法はすごいが、だからといって近接戦闘をする者たちも決して弱いわけではない。


近接戦闘をするもの、つまり剣士ということになるが、純粋な剣技を習得するのにも膨大な時間と労力を使う。そして実戦と練習とは内容が桁違いに違う。極限の緊張感の中で生き残るために敵に向かっていって戦わなければならない。


自分一人で戦った場合は回復はポーションだけとなる。ある程度の治癒効果はあるが、穴の開いた体を治すような力などはない。せいぜいこそぎ取られた部分を癒すくらいだ。


剣士で魔法を使うやつもいるにはいるが、だいたいが剣に寄りすぎてかすり傷しか回復できなかったり、魔法使い崩れが剣を少しかじって護身用にしかならない技術しか持ち合わせていないなどザラだ。


だからだいたいはパーティを組む、お互いの助け合いが重要というわけだ。

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