—第40章:突撃部隊
フリードリッヒの所有している広場の1つに志願兵が集まっている。広場の脇には作業ができる大きめな小屋がいくつも並ぶ。
「なんか数おかしくない…?」
呆れ顔で呟く、改めて志願兵の数を確認してみたが、その数は現時点で3000人を超えていた。
さすがに多すぎだ。引き抜き的な者達も多く見受けられる、貴族たちから文句が来るのではないかと思ったが、今のところ苦情は来ていない様だ。先日の口ぶりだと、マルクスは言いたくても言えないだろうし、エリナはその分自動人形を貸し出せるので先行投資くらいにしか思っていないのだろう。
フリードリッヒに限っては人数を言ったらむしろニコニコして上機嫌になっていた。おそらく増えれば増えるほど自分に都合がいいのだろう。追加で必要なものがあればいくらでも言っていいとのことだった。
そして、貴族たちからの物資が届く。言っていた通り、結構な数の大砲、マスケット銃、機械仕掛けの斧や剣、自動人形がその場にあった。すぐに扱えない特殊な装備に関してはもともとマルクスとエリナに所属している者たちに扱ってもらう。そして志願兵の職業だが主には兵士、傭兵、騎士だ。
傭兵だけには報酬を支払うと約束する。兵士や騎士はどうせ給金をもらっているのだから気にする事はない。だが、傭兵だけは報酬などあるはずがない。気持ちだけを動機の糧として志願してきたのだ。しかしそれでも、今回に限ってはない気もするがやはり報酬を要求しない傭兵は信用ができない。だから報酬を渡す約束をした。
「ねぇ、リオ。移動手段の機械はどうなってる?」
横にいるリオに質問をする。ここメカストリアは大都市を繋ぐ機械仕掛けの列車が通っているが、細かい街には行けないし、聖王国にはもちろん繋がっていない。馬に関しても騎士や兵士は持っている者もいるが、持っていない者も多い。傭兵に限ってはほとんどが持っていない。このままでは足並みが乱れる。現状の問題で一番の課題はここだった。
リオに相談したところ、前回制作したギアカーの構造を使い、座るところなど考慮しないで台車のようなものであれば短時間で大量生産が可能とのことだった。ただ人数はどうしても必要とのことだったが、志願してきた機械技師も大量にいた。なので、そこの小屋で絶賛大量生産中とのことだ。
「順調だよ。このくらいの人数なら明日くらいにはだいたい完成すると思う。ただ、一緒に乗る人たちは座り心地もよくないし、椅子があるわけでもないから、一緒にのせる大砲とかにしがみついてもらう事になるけどね」
「これから戦争を始めるんだ。しがみつくくらいで根を上げるような奴は、その場で帰ってもらったほうがいいわね」
実際に自分から声を上げてきた者たちだ。その程度で根を上げるとは思えない。体力はどうしても消耗してしまうだろうが、突撃部隊なのだ。あたしたちのポジションは突撃の短期決戦、やってやれないことはない。
「僕たちの部隊は突撃部隊だけど、聖王国の人たちが混乱しないようにって話があったと思うから、それについても案を考えておいたよ」
「どんな?」
聞き返すと、「それについてはお楽しみ」と再度返された。こんな状況なのに隠すのかと思ったが、あたしはリオを信用している。そのリオがそういうのだ。「それは楽しみね」とリオの頭を撫でながら答える。
「あ、ヴェルヴェット、レオンはどうしてるの?」
「レオンは屋敷の稽古場でずっと稽古してるわ。むしろアモンはどこで何をやってるの?」
「アモンは僕と一緒にさっきまで小屋で制作活動の指揮をとっていたよ。
開発者たちの動きが遅いとすごい剣幕で怒ってたね。ちょっと言い過ぎじゃないかと思ったんだけど、誰も嫌そうな顔してなかったからそのままにしちゃった」
事ここに至ってはアモンもやる気の様だ。もうただの機械が大好きな人になってるだけな気もするが、やる気になってくれるのであればなんでもいい。あたしがこんなに頑張ってるのに部屋で寝っ転がって酒でも飲んでいようなものなら、もう片方の足に風穴をあけるところだ。
そういえばこの間刺した足はちゃんと治ってるのだろうか。少し、本当にほんの少しだけ罪悪感があるのであとで確認してみよう。
こうして出撃までのぎりぎりの時間をフルに活用して、ヴェルヴェットの部隊も準備を整えていく。
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