—第34章:いざ大悪魔の元へ
ヴェルヴェットのパーティは、リオの家の庭に集まっていた。
そこには4人乗りの移動手段があった。
この乗り物は、滑らかな曲線を描き、外観は銅と真鍮の輝きで飾られ、細部には精巧なギアが組み込まれている。大きなスポークのついた輪は、まるでかつての馬車を思わせる懐かしさを感じさせるが、その性能は現代の技術の結晶だ。
内部に目を移すと、前に二人、後ろに二人がゆったりと座れる革張りの座席が並び、快適さと贅沢さが融合した空間が広がる。操縦席には、精緻な機械装置が並び、運転手が操るハンドルにはメカニカルな装飾が施されている。後部には目を引く蒸気エンジンが搭載され、走行中には白い煙が軽やかに空に舞い上がる。
「これが小型移動式運搬機ギアカーです!」
「おー」と称賛や感嘆の声が皆から漏れる。もちろん、12歳の少年がこんな簡単に作ってしまったのだ。いや、簡単というのは大きな誤解がある。これまでリオは寝る間も惜しんで一生懸命に開発に全てを捧げてきたのだ。
友達とも遊ばず、両親の悲しみを乗り越えてなお勉強をし続けたのだ。そこには予想もできない努力や不屈の心があったのだろう。そう思うと、心に熱いものが込み上げてくる。
「リオ、あんたって本当に天才ね!」
しゃがんでリオを抱きしめてなでてやる。リオは恥ずかしそうに離れようとしたが、明らかな力の差で全く離れることはできない。
「おい、ヴェルヴェット!なに勝手なことをしているんだ、離れないか!」
すかさずレオンが抗議する。ヤキモチか、マリアに対してだが。
「うっさい、子供にいちいち対抗心燃やすな、心が狭いわね」
マリアの前で心が狭いと言われ、「ぐぬぬ」となにも言えなくなり、握った拳をプルプル震わせる。
「魔王国は僕が足手まといになるからいけないけど、アモンにギアカーの操作は全部教えたから問題ないはずだよ。あとは地図はこれね。聞いた内容からおそらくここしかないと思う」
リオから渡された地図には目的地に詳しい場所と道順が丁寧に書いてあった。
「素晴らしい、リオはほんとかしこい子だなー!」
もう一度抱きしめて、よしよしと頭をさらになでてやる。また怪訝な顔でじっと見ている男が一人いるが、気にしない。レオンは道には絶対迷わないと言っていたが、あくまで街の中だけの話だ。天才のリオと比べて知識量の差は歴然だ。あたしが言うのもなんだが。
「お前ら、このギアカーがただの乗り物だと思ってるんじゃねーだろうな?」
上機嫌にアモンが口を挟んでくる。その口上からすると、二人で隠している機能がなにかしらあるようだ。
「ほほ〜、なにか隠してるわね。じゃあその時になったらお手並み拝見といこうか」
「へへ、俺様に任せておけ、リオとの合作をド派手に披露してやるぜ!」
意気揚々とアモンが言い放つ。アモンはずっとリオのところに入り浸っているので、もはや一緒に開発をしている。アモンも機械にかなりの興味を持ち、悪魔だというのに驚くほど機械の勉強をし、どんどん吸収していた。
とはいえ、やはり頭脳は明らかにリオのほうが高いので、もっぱらアモンが開発の発想をして、それを聞いたリオが実際に機械を作るという流れだ。なので最近作成した機械に関してはほとんどアモンも操作できるというわけだ。
「ああ、そうそう、ヴェルヴェット。これ、この間借りた水晶だ、返しとくぜ」
するとアモンはポケットから貸した水晶を取り出し、返してきた。それを見た時、ぎょっとする。漆黒の色になっていたので、確か貸した時は半透明だったはずだが。
「な…」
言葉を失う。なにをどう言えばいいのか、聞き方が分からず言葉につまる。
—これは、悪魔の力そのものを詰め込んでいますね。
「悪魔の力?」
そのまま繰り返すように口に出す。
「お、マリアから聞いたか。そうだ、俺様の悪魔のエネルギーをその水晶に込めたのさ。別にアイテムをケチったわけじゃねーぞ、ポーションはこの通り大量に買ってある」
というと服をめくって、大量に格納してあるポーションを見せる。
「ポーションは悪魔でも回復効果がある。ただし、問題はそこまで回復しねぇってことだ。これは悪魔だけじゃなくて人間もそうだ。
だが、人間であればヴェルヴェット達の治癒の魔法で治療ができる。ただし、俺様には使うことができない。
そこでこれだ、俺様が自分自身のエネルギーを水晶に注ぎ込んだのさ。まぁ、その日は精魂尽きて酒も飲めずに1日寝込んだから、もう二度とやりたくねーが、今回は危険なところに行くから仕方ねー」
なるほど、自分の生命エネルギーみたいなものを詰め込んだわけか。リオが近づいてきて、まじまじとその水晶を見る。
「なるほど、これは確かに悪魔のエネルギーそのもののようだね
攻撃魔法じゃないから、治癒魔法と同じように効果はほとんど下がらずに回復できるはずだよ」
リオのお墨付きをもらう。リオにはアモンが悪魔であること、ヴェルヴェットがマリアと融合して共存していることを先日伝えている。同じパーティなのに、一人だけ伝えていないのはよくないとの判断だ。
「さて、これで全ての準備が整ったわね。みんな、準備はいいわよね?」
みんなが首を縦に振る。
そして順々に乗り込んでいく。アモンが前の座席の運転席、あたしがゆったりと後ろに座る、そしてレオンが、なぜか隣に座ってくる。
「レオン」
「ん、なんだヴェルヴェット?」
シッシッと野良犬を追い払うような仕草で前の座席にアモンと一緒に座らせようと目配せする。
「え、いや!なんでアモンと俺が一緒の席なんだ、それに前の席のほうが微妙に狭いぞ。だからここは後ろの席のほうがいいだろう」
「ああそう?このあたしと、ヴェルヴェットと一緒に席に座りたいんだ?」
「あ、いや…そういうわけでは…」
レオンが露骨にしまったという顔をする。マリアが黙っているのが少し怖い。そしてそのまま無言でレオンがアモンの隣に座った。
「お、おい、なんで俺様の隣にくるんだよ!」
「うるさい!」
アモンとレオンがまた口喧嘩をしている。全く子供なやつらだ。しかしこれで広い席で、一人でどかっと座れてとても快適だ。上機嫌でアモンに出発命令を出す。
「よーし、それじゃ出発だー!」
「おー!」
「おー!」
アモンがギアカーのエンジンを点けると、「ボボボボ」と小気味いいエンジン音が鳴る。
「ヴェルヴェット!みんな!気をつけていってらっしゃーい!」
リオに見送られながら、軽快な音と共にギアカーは魔王国に向けて走り出す。
「あ、お酒積んでないから、その前に酒屋寄ってね」
「面白かった!」
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