—第28章:親衛騎士長の解任
次の朝、宿舎から屋敷へ向かう1人の男がいた、その男は見事な甲冑を身に着けた騎士、レオンだった。
親衛騎士長のレオンが屋敷へ向かって色々報告であったりの用事で赴くのは別段珍しい事ではない。
しかし今日は違うのだ、ある意味主君を裏切るような頼みをしにきたのだ。
この決断をするまで何度も葛藤をした、だが感情を押し殺そうとしても、いくら稽古を続けてもどうしてもこの気持ちは沈めることができなかった。
屋敷のドアをノックして使用人が現れる。
「フリードリッヒ様にお目通したい」
使用人が「承りました」との返答と少々お待ちくださいと言われしばらくした後に屋敷に通される
通された部屋にはフリードリッヒとアナスタシアがいた。
もともとフリードリッヒにだけ会いにきたはずだが、なにかを察したような顔でフリードリッヒと共に同席し入室してきたレオンを温かい目で見ていた。
少し動揺したが今のレオンには固く決意した思いがある、それに動じず二人の前で片膝をつく。
「本日はお願いしたい義がありまして参上いたしました」
レオンのかしこまった態度にフリードリッヒは少し動揺をする。
しかし、これまで忠実に職務を全うしてきて信頼してる男がこうやってきているのだ、しっかりととした態度で話をきかないのは失礼というものだ。
そう思い直しフリードリッヒは襟を正し、片膝をついたたまま俯いているレオンに問いかける。
「どうしたというのだ?私と君の仲じゃないか、思う事があるのならば正直に言ってくれ」
「それでは…」
レオンは両手の拳をぎゅっと握りしめて意を決したように答える。
「騎士をやめさせていただきたく存じます」
その答えにフリードリッヒは目を見開いた、アナスタシアは不自然なくらい冷静にレオンを見ていた。
「ど、どうしたというのだいきなり…正直に言ってくれとは言ったが、ちゃんと順を追って説明してくれないか」
「も、申し訳ございません!それは…その… ヴェ…ヴェルヴェットと共に傭兵稼業をしたいのです…!」
フリードリッヒは再度驚いた、なぜこのような願いを申し立てる?我がテクノバーグ家の親衛騎士長に不満があるというのだろうか。仕事内容だって格式高く貴族の騎士に相応しい仕事を毎日しっかりこなしているではないか。給金だって相応に渡している自負はある。
一体なにがどうして…いや、ヴェルヴェット?まさか…もしかしてレオンは。
チラリとアナスタシアを見る、アナスタシアは全てを察したように微笑んでこちらを見てきた。
そうか、そういうことだったのか。だから喧嘩の時にアナスタシアが無理に説明を終わらせようとしたのだ。騎士たちがいるところでヴェルヴェットのために怒っているなどと言えるわけがない。
そう、つまりレオンはヴェルヴェット恋をしているのだ。
しかしそうなると少し問題がある、レオンの家系はだいたいテクノバーグ家に仕えてきた騎士だ。それをやめるとどうなるか。レオンの、特に父親から問い詰められることになるだろう。
いくらこちらが主君とはいえ、歴代にわたって家系を支えてくれていたのだ。それを無碍に扱うなどできるわけもない。なんといえばいいのだろうか、とても説明できる気がしない。
レオンの確固たる意思の懇願になにも言えずフリードリッヒはレオンを見下ろしたままだった。
そこでアナスタシアがレオンの前に立つ、フリードリッヒの返答に怯え下を向いているレオンに勢いよく言い放つ
「顔をあげなさいレオン・アルバート
テクノバーグ家の妻の名を持って命じます、今この場を持って騎士を解任します」
その言葉にレオンがアナスタシアを見上げ若干の後悔と感謝や高揚がまじった顔をする。
「え、アナスタシア!」
その宣言を聞き、フリードリッヒがアナスタシアに食ってかかる。
「恋に生きる者を止めることなどできません。それはあなたも理解しているでしょう?」
言われたハッとなった、過去に自分自身もアナスタシアより上位の貴族と縁談が持ちかけられていた、しかし一目惚れをしたアナスタシアに何度も迫った。
上位の貴族には嫌な顔をされていやがらせなども受けたが、愛のために必死にこれまでがんばって大貴族にまで上り詰めたのだ。それほど愛は偉大だということだ。
それを思い出し、思わず笑みをこぼす
「そうだな、その通りだ、わかったよアナスタシア。
レオン、妻の言った通りだ、今この場をもって解任だ」
「はっ!自分の勝手な意見を受け入れてください誠にありがとうございます!」
「ああ、それとレオン。宿舎はこれからも使っていいですわよ」
アナスタシアが言いながらフリードリッヒを見る。フリードリッヒは「好きにしてくれ」と肩をすかす。
「なにからなにまでのご好意、感謝の言葉もありません」
そういい残し、深い礼をした後レオンは屋敷を飛び出してヴェルヴェットのところへ向かっていく。
「さて、これからアルバート家に対する言い訳、いや謝罪を考えないとな」
フリードリッヒは頭をかきながら、はぁとため息をする。
「ふふっ、頑張ってくださいね」
微笑みながらアナスタシアは言う、「全部私に投げる気だな」とつい口走る。
だが、だがしかし、こんな無茶過去にも一度やっているだ、もう一度くらいやってやろうじゃないか。
そう思い、アルバート家にいく支度と菓子折りを選ぶように執事に言い渡す。
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