—第22章:あらたな仲間
アモンはバスタオルを体に巻いて立っている。
「で、どうだ?」
「まぁ…いいんじゃない?それにしても大きいわね、身長は変えられないの?」
「それは無理だな。変身だって魔法じゃない、なんでもかんでもってわけにはいかない。」
それもそうか。もともと190センチはあろうという高身長で、子供みたいなサイズになれるわけがない。悪魔の時はたいして気にならなかったが、自分とは20センチ以上の差があり、目の前に立たれるとかなり威圧感がある。
それにしても、とアモンの顔をちらっと見る。変身したときも思ったが、人間を基準にすると相当な美青年だ。あの禿げた悪魔がどうしてこんな顔立ちに変身したのか。
「あんた…その体というか顔、どうしてそれ?」
「ああ、どうやってこれを思いついたのかって話か?わからん、なんとなく頭に浮かんだんだよ、理由はわからん!」
そう言うと両手を腰に当てて偉そうに胸を張る。
「バカやめろ!タオル落ちるでしょ!わかったから、もうわかったから!」
手で目を覆い、その間にずれ落ちたバスタオルをまた体に巻きつける。
「人間になれるのはわかった。で、人間になって何するのよ。自分の飯は自分で稼ぐのよ。あんた、ただでさえグルメなんだからご飯代だけでも大変よ」
「いや、お前と一緒に傭兵として仕事するぞ」
「はぁ!?なんでよ、他にもいろいろ仕事あるでしょ?」
「他にもあるっていっても、いきなり覚えられるか不安だ。それにずっと知らない人間といると、何かの拍子でバレるかもしれないだろ。見た目でわからないっていっても、言動とかで悪魔だってバレる可能性もあるしな。それに俺様は戦力になる。インチキほどじゃないが相当楽ができるはずだ。なんたって俺様は中級悪魔だ、下級悪魔ごときじゃ相手にならねぇ。それに…」
と、ここでアモンが言葉を溜める。
「あのゴミども、ちょっと何かあるとギャーギャーわめきやがって!こっちが下手に出てると調子に乗りやがる、上には毎回嫌味を言われるしよ、マジでぶっ殺してやりたいと思ってたんだよ」
とんでもないことを言い出す。仲間でもむかついたから殺すというのは、さすが悪魔だなと感心する。
「ということで、金稼げるし悪魔どもぶっ殺してストレス発散になるし一石二鳥だ。お前と一緒に傭兵ギルドに入るってことでよろしく」
たしかに一理ある。インチキできない以上、これからはあくせく働かないといけない。しかしアモンがいれば、だいたいの敵は倒してくれるだろう。現状としてはベストな選択肢かもしれないと気づき、納得しかけた。
…ただ、頭の中の誰か一人が納得していないような気もするが、今までとそこまでやることは変わらないし、ギャーギャー言わないだろう。
「よし、いいでしょう。だけどその前にやることがある」
「なんだ?」
「服の調達よ」
翌朝、買った服を持って自宅に帰ってくる。昨日は遅かったので服屋が開いていなかった。色々やるのは今日だと決め、風呂に入ったあとに戻ってきて寝ようとしたが、アモンがベッドに横たわっていた。
思い切り蹴り飛ばして床で寝かせた。床で寝かせるなんてひどいと言われたが、ほぼ全裸の男と同じベッドで寝るわけがない。じゃあ悪魔に戻って寝ればいいのかと言われたが、そもそもでかくて寝にくい。
部屋に入り、のんびりと朝食を食べているアモンに少しイラっとしながらも、買ってきた服を投げつける。
「とりあえずさっさと着ろ、いや、私の目の前で着替えるな!もういい、後ろ向いてるから早く着替えて」
後ろを向いていると、着替える音が聞こえてくる。少しして「終わったぞ」という声で振り向くと、そこにはまともな服に着替えたアモンの姿があった。
上半身には、革製のフィットしたベストがしっかりと筋肉を引き立て、胸部と肩にはさりげなくも機能的な装甲が施されている。下に着たリネンのシャツは袖を肘までまくり、手首には戦闘の痕跡を隠さず残す指抜きグローブ。
その腰には、銀色に光るバックルが目を引く革のベルトが巻かれ、いくつかの小さなポーチが並ぶ。軽やかに動きながらも、すぐに道具を取り出せるような設計になっている。
そして、黒く引き締まったズボンが長い足にぴったり合い、しっかりとしたレザー製のブーツが足元を守っている。
だが何よりも彼を際立たせているのは、その背中に流れるように掛けられた長い黒いマントだ。片方の肩に無造作に掛けられている姿は、容姿と相まって貴族的な優雅さも兼ね備えている。
素材がいいのもあるが、自分のセンスが光った見事なコーディネートだ。
「いいね、だいぶいい男になったわね」
「だろだろ?これならどんな女だって落とせるぞ、きっと」
そう言いながらアモンは片手をあたしの口元に当て、顎を指先でくいっと引き上げる。
アモンと目が合うが、目を細めて低い声で言い返す。
「もう片方の足にも風穴あけてほしいようね?」
アモンは尋常ではないくらい身震いして、後ろに下がり尻もちをつく。
「う、うそうそ!すみません、ご主人様!冗談キツいって!」
引きつった顔で半笑いするアモンを横目に、心の中で歯ぎしりしながらもフンっと踵を返す。
「ほら、行くわよ」
「行くって、どこへ?」
「傭兵ギルドだ。あんたをパーティーとして登録する」
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
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