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第8話 冒険者登録

 ラパン冒険者ギルド内のざわつきは、一層大きくなった。

 ラパン学院主席として入ってきた少年が、裸にエプロンをつけているという前代未聞の光景に。

 そして、叫び声をあげるというらしくない行動をとったニルヴァーナに。

 

「はっ!? いえ、失礼致しました」

 

 ニルヴァーナもまた、我に返るとすぐに穏やかな表情へ戻し、背筋を正す。

 醜態への恥じらいが残って頬は少し赤く染まったままだが、その様子もまた冒険者たちの心を鷲掴む。

 

「んぎゃー!? ぎゃわいぃいー!!」

 

 また一人、冒険者が倒れる。

 

「えぇ……。何……ここ……」

 

 フレミーの後ろに並んでいたネザーは、尊敬すべき先輩冒険者たちが奇声を上げて倒れる光景を目の当たりにし、思わずドン引きする。

 

「ここは、ラパン冒険者ギルド本部だ」

 

「え……。あ、いや……。そういうことじゃなくて……」

 

 一方のフレミーは、周囲の様子など気にしていない。

 騒がれることは想定内で、冒険者が倒れるのは些細な事。

 真っすぐ、ギルド本部内を闊歩する。

 

 冒険者たちの視線が、フレミーへと移っていく。

 入り口の扉からカウンターまでは一直線で、その左右には冒険者たちが座るための椅子と机、そして仕事などを張り出した掲示板がある。

 つまり冒険者たちは、フレミーを横から見ることになるわけだ。

 

「え? なんだあいつ? あの変態が、今年の主席?」

 

「一応、体は鍛えているようだが。裸にエプロンって」

 

「じゅるり。大きいじゃないの……」

 

 膨れ上がった胸筋と、バキバキに割れた腹筋。

 そして、がっちりと硬い尻。

 フレミーの肉体美は、冒険者たちがフレミーを強者と推し量るのに十分だった。

 同時に、フレミーの裸エプロンは、冒険者たちがフレミーを変態だと断ずるに十分だった。

 

 フレミーの後に続くのは、ネザーだ。

 五十センチメートルの身長差があるフレミーの後ろを、緊張で背を丸めながら歩くネザーは、対比も相まって小動物のような可愛らしさを醸し出している。

 その緊張により恥ずかしがっているというイメージとは真逆に、ネザーの着用しているスカートは【ミニスカート】だ。

 ギャップが、一層冒険者たちの目を引き付ける。

 

「なんだ、あの可愛い生物? 頭撫でてえ」

 

「ばっか! あのスカートの長さ見ろ! あんな見た目して、実は男好きとかだよ」

 

「おうおう。おチビちゃん、頑張れよ!」

 

 冒険者たちは、好き勝手にヤジを飛ばす。

 否定したい言葉も飛んでは来たが、ネザーは緊張のあまり、それどころではなかった。

 

 そして、ネザーに続くのはベレイ・ジェニュイン。

 ラパン学院第三席に座っていた女である。

 ネザーとは対照的に背筋を伸ばし、怯えなど一つもない歩きっぷりだ。

 特徴的なのは、聖職者を連想させる白いローブと、聖職者に似合わぬ腰につけた白い細剣である。

 真っ白な肌も手伝って、ベレイの全身は真っ白に見える。

 だからこそ、唯一のピンクの髪の毛がことさら強調されていた。

 白いベレー帽が髪を隠そうと置かれているものの、肩まで伸びたウェーブの髪全体を隠すことはできず、ベレイが一歩歩くごとに、ピンクはふらりと揺れた。

 

「せ、聖女?」

 

「回復魔法の使い手か? それにしては、剣持ってるし」

 

「今年の新人、変なのしかいなくねえか?」

 

 ラパン学院のトップスリーが、先輩冒険者たちへのお披露目となった。

 

「ラパン学院の卒業生の皆様、こちらへどうぞ」

 

 ニルヴァーナが、三人を一番窓口へと手招きする。

 中央にフレミー。フレミーの右側にネザー、フレミーの左側にベレイが並ぶ。

 

 ニルヴァーナは、やはりフレミーの格好が気になるようで視線が一瞬【裸エプロン】に移るが、コホンと軽く咳ばらいをし、すぐに視線を逸らす。

 

「フレミー様、ネザー様、ベレイ様ですね? ようこそ、ラパン冒険者ギルドへ。私は今回、皆様の冒険者登録のお手伝いをさせていただきますニルヴァーナと申します。どうそ、よろしくお願いいたします」

 

 ニルヴァーナが流れるような動きで頭を下げると、フレミーとベレイがあわせて頭を下げた。

 一歩遅れて、ネザーが慌てて頭を下げる。

 

 頭を上げたニルヴァーナは、カウンターの上に三枚の紙と三枚のペンを置く。

 

「念のための確認ですが、文字が書けない方はいらっしゃいますか?」

 

 ラパン王国の識字率は七十パーセント。

 冒険者の中には、読み書きができない者もいる。

 故に、文字化が書けるか否かの確認は必須だ。

 ただし、ラパン学院では読み書きが最低限の技能のひとつとして位置づけられており、ラパン学院の卒業生の識字率はほぼ百パーセント。

 故に、念のため。

 

 フレミーは一応、ネザーとベレイの表情を見て確認する。

 

「いない」

 

「はい。では、こちらに名前、年齢、装備名、装備の等級をお書きください」

 

 三人はペンを手に取り、指示された項目をすらすらと埋めていく。

 

 フレミー・マンスター。

 十五歳。

 裸エプロン。

 無等級。

 

 ネザー・ランド。

 十五歳。

 ミニスカート。

 無等級。

 

 ベレイ・ジェニュイン。

 十五歳。

 空斬剣くうざんけん

 A級。

 

 ニルヴァーナは、次の試験に必要な書類を準備しながら、三人が紙に書いている内容にちらりと目を通す。

 

(ああー。それで、裸エプロンなんだ。貴方もあいつと同じ、変な装備を授かっちゃったのね)

 

 そして一人、フレミーの格好の理由に納得をしていた。

 

「書けた」

 

「わ、私もです」

 

「私も」

 

 ニルヴァーナは三人から紙を回収し、不備がないか目を通す。

 そして、問題ないことを確認したうえで、三人に向き直る。

 

「では次に、皆様の冒険者としての等級を決める試験を行います。こちらへどうぞ」

 

 ニルヴァーナはカウンターの外へ出て、三人を建物の出入り口と逆方向にある扉に案内する。

 

 扉を開いた先は裏庭に繋がっており、裏庭は動きやすいように固められた大地が広がっていた。

 そして、大地の上には剣や魔法の実力を測るための道具が乱雑に置かれている。

 

 ニルヴァーナに案内されるまま裏庭に出た参院は、裏庭に立つ一人の男に迎えられた。

 

「試験の担当は、彼が行ってくださいます。B級冒険者パーティ『不動門』のノーマ・レフライ様です」

 

 ニルヴァーナに紹介されたノーマは、目をまん丸にして、フレミーを指差し固まっていた。

 

「へ、変態だーーー!?」

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