第15話 初仕事
冒険者の仕事は、多岐にわたる。
最も冒険者に好まれる依頼は、ダンジョンの調査とダンジョン内の特定アイテムの獲得だ。
ダンジョンは、魔物が住処にしている洞窟の総称である。
危険な場所である一方、ダンジョンの中でしかとれない希少な資源が多くあり、それらは王族貴族や研究者によって高額で取引されている。
高額である分、依頼料の相場も高く、ダンジョンの調査とダンジョン内の特定アイテムの獲得は、冒険者たちの中でも人気が高い仕事となっている。
他にも、町と町を移動する正体の護衛、村の近くに現れた魔物の退治など、戦闘の危険性がある仕事も報酬が高く、人気が高い。
逆を言えば、危険のない雑用のような仕事は、報酬も低く、人気がない。
だが、依頼の数は多く、誰かがやらなければならない仕事として、冒険者ギルド内に積み上がっている。
新人冒険者だけのパーティは、こういった人気のない仕事が回されがちだ。
「こちらの仕事などどうでしょう? 依頼主が男色……いえ、失礼しました。その、服装に……えーっと、非常に寛容な方なので、そのままでも問題ないかと思われます」
「じゃ、じゃあ、それでお願いします……」
もっとも、人気のない仕事であっても、【裸エプロン】姿の冒険者を受け入れるところは少ない。
ギルドの受付が探し回って唯一見つけた、フレミーの格好を許容する仕事を、ネザーは申し訳なさそうに受け取る。
受付の人の疲れ切った表情を見れば、そうなるのも当然だろう。
「ありがとうございます」
ネザーが受け取った依頼書を、フレミーが覗き込む。
「依頼内容は、屋敷の清掃か。依頼料も、相場通りといった感じだな」
人気のない仕事は、主に個人からの依頼となり、家事の要素が強い。
道路の清掃、探し物の手伝い、手紙の配達、買い物代行、エトセトラ。
屋敷の清掃もまた、同類の依頼だ。
「住所はこちらになります。現地に到着したら、依頼主様にはこちらの手紙をお渡しください」
フレミーは、受付から渡される二枚の紙を受け取る。
一枚は地図。
仕事をする場所か描かれている。
もう一枚は手紙。
冒険者ギルドの押印と共に一筆書かれており、この印をもって依頼主が依頼を受けた冒険者であると判断する。
「依頼が完了しましたら、依頼主様から完了証をもらってください。ギルドの印が押されたカードになります。そのカードと引き換えに、仕事完了とみなし、依頼料をお支払いします。何か、質問はありますでしょうか?」
「いえ、ありません」
「わ、私も、大丈夫です」
「はい。では、フレミー様、ネザー様。冒険者としての初仕事、ご健闘を祈ります」
ぺこりと頭を下げる受付に背を向けて、フレミーとネザーは依頼場所へと向かう。
フレミーが扉を開いたとき、初仕事を祝福するように日光の光線がフレミーを照らし、ギルド内からフレミーの尻がよく映えた。
「ここか」
「だ、だね。すごく、大きい……」
フレミーとネザーが辿り着いた場所は、町の隅っこに建てられた大きな屋敷だった。
解放された大きな門をくぐり、玄関扉の前に立つ。
フレミーは、扉についたリング型のドアノッカーを扉にコンコンとぶつける。
「はい」
扉のやや奥から女性の声が聞こえて、扉がギギイッと開いた。
扉の奥には長い廊下が広がり、扉の横にはメイド服を着た女性が立っていた。
「依頼を受けた冒険者の方でしょうか? 依頼証を拝見しても?」
「はい。こちらです」
「確かに。この度は、ご依頼を受けていただいてありがとうございます。私、当館のメイドをしておりますホワイトと申します」
女性――ホワイトは、機械的に一例をする。
「フレミー・マンスターです」
「ネザー・ワールドです」
互いに礼をし、頭を上げる。
フレミーの姿を見たホワイトの眉が、一瞬ピクリと動く。
「フレミーさんと言いましたね? その格好は、いったい」
「これは、女神様から授かった【裸エプロン】の装備です」
「女神様から?……そうですか。ぶしつけな質問、失礼しました」
「いえ、構いません。では、主の元へご案内いたします」
ホワイトがくるりと背を向け、廊下の奥へ向かって歩き始める。
後に続いて、フレミーとネザーが続く。
廊下の壁沿いには台座が並び、台座の上には壺や像と言った美術品が置かれていた。
どれもこれも高級品ばかりで、像一つで小さな家であれば購入できそうな額だ。
「フレイー君の格好を見て、こんなに無反応だったの初めてかも」
ネザーが歩きながら、フレミーにそっと耳打ちする。
「確かにね」
「……無等級の装備は、武器とも防具とも言えない形をしている物です。私には、無等級装備の知識があっただけのことです」
が、ホワイトの優秀な耳はネザーの小声を聞き取り、即座に回答した。
「す、すみません」
「いえ」
十を超える扉が壁に現れたのち、ようやく廊下の突き当りに至り、巨大な扉が現れる。
「先程私が格好について伺った理由ですが。ギルドより伺っているかもしれませんが、我が主は少々男色家の気が御座います。中には、あえて主の興味を惹く格好をする輩もおりますので、念のため、で御座います」
ホワイトは、巨大な扉を押した。




