第14話 パーティ結成
「では、パーティの結成に」
「結成に」
「乾杯」
「乾杯」
二つのグラスがぶつかる。
一つはフレミーの手の中に、もう一つはネザーの手の中に。
ぶつかり合ったグラスはそれぞれ二人の口につけられて、中のドリンクが流れこんでいく。
「美味い」
「うん、美味しい」
二人はグラスをテーブルに置き、フレミーが店員の方を向く。
「本当に美味しいよ、クリームさん」
「えへへー。ありがとー」
フレミーの言葉に、クリーム・ロールが笑う。
クリーム・ロールは、フレミーやネザーと共に卒業した、ラパン学院の同期だ。
学院時代は冒険者の道と実家を継ぐ道を悩んでいたが、【装備神託の儀】によってC級装備【ナイフ】を授けられたことで、実家を継ぐことを決意した。
C級装備の冒険者が大成した前例など、探しても見つからないほどに極少なのだ。
今では、母であるシナモン・ロールが創業した喫茶シナモンを、母と二人で切り盛りしている。
クリームは、自分の作ったドリンクを褒められた嬉しさを、ショートボブの髪の毛を指でくるくると巻いて表現する。
レシピは母特製の物なので、レシピ通り作っただけとはいえ、始めたばかりの仕事で褒められるのは嬉しい物だ。
「それにしても嬉しいよー。二人が、パーティ結成記念をうちでやってくれて。友達みんな冒険者になっちゃったから、卒業したら誰とも会えなくなるのかなーなんて思っちゃって」
「何を言っているんだ、クリームさん。違う道に進んだが、俺達は同じ学院で学んだ仲間じゃないか。仲間が頑張るなら、俺は全力で応援するだけだ」
「そうだよ、クリームさん。私、ここのドリンクとっても好きだよ?」
「えへへー、えへへー。ありがとうー」
クリームがお盆で顔を半分隠しながら、嬉しそうに照れる。
穏やかな、三人の談笑。
そこへ、店の奥からやって来た女性が、テーブルにケーキを置く。
「はい、シナモンケーキお待ちどうさま」
「ありがとうございます、クリームさんのお母さん」
「ありがとうございます」
クリームの母であるシナモンは、クリームによく似た笑顔で微笑んだ。
シナモンは、身長がクリームより一回り大きいとはいえ、クリームが二十年経ったらこんな顔になるだろうと誰もが思うほどに容姿がそっくりだ。
誰も、親子関係を疑う者はいない。
「いっぱい食べてね」
シナモンはそう言った後、微笑んだ表情のままシナモンを見た。
「貴女は仕事。オーケー?」
「オ、オーケー!」
笑顔とは元来――。
クリームは引きつった笑みでフレミーとネザーに頭を下げた後、店の奥へと走っていった。
「店内は走らない!」
「はいー!」
クリームが去ったことで、テーブルには三人だけ。
シナモンは、大皿に乗せたケーキを手に持ったナイフで二つに斬り分ける。
そして、別に持ってきた二枚の小皿にそれぞれのせて、フレミーとネザーの前に差し出す。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます。な、なんかすみません。クリームさんを引き止めちゃって」
「え? ああ、いいのいいの」
心配そう言うネザーを見て、シナモンは大きく笑う。
「他のお客様の手前、叱っただけだよ。本気で怒ってるわけじゃない。むしろ、貴方たちにはお礼を言いたいの」
笑うのをやめたシナモンは、深々と頭を下げる。
「うちの子と仲良くしてくれてありがとうね。冒険者にならないって聞いて、あの子が一人ぼっちになっちゃうんじゃないかと不安だったけど、貴方たちみたいな友達がいると分かれば安心するわ」
ラパン学院の卒業生の大半は、冒険者となる。
そのため、冒険者にならない卒業生は時に軟弱と言われ、嘲笑の対象となる。
だからこそ、シナモンは内心で心配を抱え続けていた。
「え、あ、頭を上げてください!」
焦って止めるネザーの言葉に、シナモンは頭を上げる。
フレミーはケーキを一口頬張って、シナモンの方へと向く。
「こちらこそです。ぼくも、クリームさんと友達になれて嬉しいです」
「わ、私も、です!」
「そう。ありがとうね」
店の奥から、クリームがシナモンを呼ぶ声がした。
シナモンはすぐに行くと叫び、体を店の奥へと向ける。
「また、いつでも遊びに来てね」
「はい」
「もちろんです!」
シナモンは安心した表情で数歩歩き、足を止めて振り返る。
「あ、そうだ。できたら、その、次に来るときは、服を、着てきて欲しいかなって……」
気づけばフレミーとネザーのテーブルには常連客達からの視線が注がれ、ネザーがばっと振り返ると同時に、全員視線を逸らした。
「……考えておきます」
原因であるフレミーは、自身の【裸エプロン】を見た後、極めて真面目に答えた。




