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2話:異世界召喚

「な、なんじゃ!?」


 長い白髭のお爺さんが目を丸くする。周りにいた兵士もお爺さんの元へ駆け寄り、庇う。


 詩音は「ここはどこだろう」と思いながら息を整え構えを解く。辺りを見渡しても見たことのない景色や人ばかりだった。


 いや、二人だけ見たことのある格好の人間がいた。しおんのすぐ横に立っている奴だ。一人はヨレヨレのスウェットを着たデブ、もう一人は今時な格好をした高校生くらいの少年だった。ますます訳がわからない。


 その二人は詩音を驚きと怯えが混ざったような表情と目で見ている。そして二人揃って発した感想は、


「で、でけえ……」


 だった。それもそうだろう。詩音は身長198センチ体重110キロ越えの巨体である。さらに、筋肉のせいではち切れそうになっている学ラン、爽やかな顔から出ているとは思えない目の圧力など、初対面の人間を怖がらせるには十分すぎるだろう。


「ど、どういうことじゃ。確か召喚した勇者は2名のはずじゃが……」


 お爺さんは詩音と横の2人をそれぞれ順番に何度も見る。予想外の事が起きた時のような慌てようだった。


「もしや、魔力が暴走したのか? いや、それはありえん。だがしかし…………」


 お爺さんが何かぶつぶつ言っている。今の現状に納得できないでいるのだろう。しばらくすると、お爺さんは詩音ととなりの少年に顔を向けた。


「恐らく召喚した勇者は2人で、もう1人は何らかの異常で召喚されたようだ。ようこそ、二人の勇者よ。そしてこの世界を救いたまえ」


「は、はぁ? 待ておかしいだろ!」


 ヨレヨレ服のデブが声を荒げる。急に知らない場所に連れ出された挙句、異常で召喚されたとしてのけ者にされそうになっているので怒るのも無理はない。


大老賢者(たいろうけんじゃ)様。念のため確認されてはいかがでしょうか」


 兵士の一人がお爺さんに言う。「それもそうじゃな」と、お爺さんは詩音たち3人に向かって何か呪文を唱えた。


「…………そ、そんなまさか。お主ら、ステイタス・オオペンと唱えてみよ」


「なんだそれ。もしかしてステータスオープン?」少年はソワソワしながらステータスオープンと口にした。


「どうじゃ。何か見えたか?」


「は、はい。ウィンドウが出ました!」

 

 飛び跳ねてはしゃぐ少年の姿を見て、ヨレヨレデブも急いで唱える。そして自分にも少年と同じものが見えて、大きくガッツポーズした。


「お、おおお俺達二人が勇者みたいだな!」


「やはりか。確かに神の力が宿っているのはその二人であった。では、その大男は何者だ?」


 詩音に全体の視線が集まる。お爺さんのいい方的に3人目の召喚者は異常事態のようだから、詩音がどういう存在かと警戒されているのだ。


「もしや魔王の手先か?」


「あ、あの。それは違うと思います」

 

 少年が詩音とお爺さんの間に割って入る。


「お、俺、全くどういう状況か分かってないけど、この人のこの格好は学ランでしょ。もしここが俺の居た所とは違う世界なら、学ランを着ているこの人は俺達と同じ世界から別の世界にやってきた人ってことになるはずでしょ」


「た、確かに。であればやはり魔力の暴走か…………」


「そ、それに」

 

 ヨレヨレデブが詩音の首元を見ながら言う。


「こいつのこの襟章、もしかして修練寺の桜紋じゃないのか? それ着てるってことは、俺達の世界に住人で間違いない」


「修練寺?」


「なんだガキ、知らねえのか。その桜紋は修練寺の桜紋だ。修練寺という武道と厳しい修行で有名な寺があってな。そこでガキから大人までが、技を磨き男を磨き、人の道を正しく歩もうと寺を訪れ、逃げかえるか死んで戻ってくるという。その桜紋は、修練寺の中でも数年の修行を終え、正式に門下生として認められなければつけられないとか。」


「…………よく知っているな」ここにきて初めて詩音が口を開いた。


「ネットの界隈じゃ有名な話だぜ。令和の時代に時代錯誤な寺があるってな。それにあそこは最後の更生施設だと聞く。お前は何やらかしてあんなところにいたんだ」


「別に何もしていない。寧ろ逆だ。弱かったから俺は修練寺の門を叩いたんだ」


「そりゃあ物好きだな。爺さん、こいつは信用できるぜ。修練寺で生き残っているってだけで、心身ともに強靭なんだ。そんな奴が悪い訳がねえ」


「ふむ」

 

 お爺さんは詩音を品定めするように見る。「見た目は怖いが、確かに何かしでかしそうな雰囲気は無いのお」


「うむ。やはり魔力の異常じゃろう。改めて、ようこそ勇者たちよ。そしてこの世界を魔王の魔の手から救いたまえ」



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