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執着はごめんですわ

「そんな期待に満ちた表情を見せるなんて妬けるじゃないか。ああ、殺すつもりはなかったが、やっぱり王子様も殺してやろう。おまえの絶望する顔が見たい。それから俺がおまえをゆっくりと殺してやる。最高に綺麗だろうなあ、おまえの泣き叫ぶ顔は。抱きしめて絞め殺したくなるなぁ、アンジェリカ」


 最後のアンジェリカ、と呼んだ声は、やけに甘くて深い声音だった。

 まるで愛しくて仕方ないという声だ。


 これから殺そうという相手に対してこんなこと言う?

 本気のサイコパスですね、うん、本当にヤバいわ。


 ヒロインに執着していた時も、似たような台詞を言っていた。


 確か「おまえを誰の目にも触れない部屋に閉じ込めて、俺だけに命を握られているようにしたい」だっけ。


 うわー、やばーい、なんて言いながら、ギースの執着心にちょっとドキドキしていたのに、自分に置き換えたらないわ。絶対にないわ。


 怖すぎるやん、こんなの。

 私には執着しないでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。


「予想外に俺たちの後を相当な速さで猛追しているらしい。まるで行き先も知っているかのように迷い無く追いかけてきている。下手すりゃ明日には追いつかれる」


 この誘拐イベントの中では、王子の軍が攫われたヒロインの行き先を探し出すまでのヤキモキした時間があったはずだ。その間の数日間、かいがいしく料理を作ったり掃除をしたりと働き者で裏表のない心根の美しいヒロインに、ギースは苦々しい顔で反発しながらも強く惹かれていく。


 そんな大切な時間があったはずなのに、明日!? 早すぎない!?


(ま、まあ、このサイコパスと一緒にいる時間は少ない方がいいけど)


 ヒロインのように心通わすハートフルな逸話が出来そうにない以上、さっさと離れたいところだ。


 アンジェリカのために軍を出しているのかは疑わしいところだけれど、もしギースの情報が正しかった場合、隣国には王国軍が攻めてくるとの偽の情報が巻かれているはずなので、下手をすると戦争に発展しかねない……って。


(そ、そうだった!!!)


 大切なことを忘れていた!



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