頭を悩ませるのですわ
この先の計画を頭の中で順序立てて考える。
(まずは縛られているヒモを火で切るところからよね)
幸いにしてシャリル王子の手伝いで火を扱っていたから、小さい炎の出し方や扱いは慣れている。あの時はシュレッダー代わりにしやがって、なんて思っていたけれど、今となってはやっておいてよかった。
それから、と引き続き考える。
(この荷馬車は燃やさないようにしないと、逃げるときに必要よね。靴も履かせてもらえていないのに、この砂利の多い道は素足では歩けないわ)
そして最後に一番の攻略相手。ギースたちのことを考える。
できれば怪我を負わさない程度にしたい。ましてや殺してしまうとか、一生後悔しそうなことはしたくない。
この世界では戦争もあるし騎士もいるのだから、人を殺すことに対しての罪はそこまで重いものではないかもしれないが、現代人、法治国家、安全国家の日本で過ごしてきた自分には、人を怪我させるのも殺すのも耐えがたいことだ。
絶対に後悔してしまう。
(でも、あのギースが炎の脅し程度では引き下がらないだろうし……)
王家を憎むギースは、黒幕であるシュバリエ大公の手足となって様々な後ろ暗い仕事をこなしているのだが、実は雇い主であるシュバリエ大公のことも憎しみの対象であり、ヒロインに癒やされた後はシュバリエ大公の悪事を全て公にして、そして自分は潔く終身刑の判決を受けて投獄されてしまうのだ。
ギースを庇い情状酌量を泣きながら乞うヒロインに、ギースは優しい笑みを浮かべながら「これでいい、おまえに救われた俺は何も思い残すことはない」と背を向けるのだ。
ギースのヒロインへの献身の愛と潔さにちょっと泣きそうになった。う~ん、いい話だった。
ヒロインに救われる前のギースは憎しみが原動力となっているのだから、私の炎程度で引き下がるはずがない。
どうしよう……と頭を悩ましているうちに、ガタンと馬車が止まった。
麻袋に詰め込まれたまま荷馬車から降ろされたので、どこに到着したのかわからなかったが、シナリオ通りなら隣国との境にある猟師がたまに使うだけの掘っ立て小屋のはず。そこで王子の軍が来るのを待つって設定だったはずだ。
「おい、早く袋からだせ」
ギースの声がする。少し苛立っているような声音だった。
すぐに袋の口が開かれ、乱暴に袋から引き出された私の姿を見た男たちの目が大きく見開かれた。
(え、なに? どうしてそんな驚いた目で私を見てるの? 昨日も今朝も私の姿、見てたよね?)
なぜか男たちは絶句しながら予想通りの掘っ立て小屋の土間の上に横たわる私を驚いた表情で見下ろしている。




