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絶世の美女ではないのですわ

 炎の令嬢と呼ばれ、若干しょぼい火の魔法が使えるのだが、この魔法の火を使ってヒロインたちの恋路の邪魔をしてばかりの嫌な女だ。


 ちなみにヒロインは貴重な癒やしの魔法を使うことができ、その力で攻略対象の男たちを虜にしていく、という安直な流れだが、これが王道シンプルで大人気なのだ。


 アラサーにしてそんな乙女ゲームにはまるなって? いえいえ、いい歳をしているからこそ、ピチピチ王子たちイケメンの甘さにやられるのですよ。


 現実にはいない完璧なイケメンにね!


 アンジェリカがこのドレスを着ていたのは、私の推しのリゼル王子の生誕を祝うパーティが開かれた時なので、もし今の自分がアンジェリカならば、その舞踏会に向かっていると推測される。

 まだまだ序盤でヒロインともこの舞踏会から関係が始まるところだ。


「まさかアンジェリカ? んなわけないか、私だもん」


 フッと自嘲気味に笑う。


 これでアンジェリカのようなボンキュボンなスタイル抜群、燃えるような豊かな赤い髪、神業の美しいかんばせに鮮やかな紫の瞳、そして自信にあふれた気品ならば、小説や漫画でよくあるようにゲームの世界に憑依したの!? とでも思えるが、ドレス以外はそのまんま柴崎菜央だ。


自分で見下ろしても、馬車の窓に映る姿を穴が開くほど見つめようとも、絶世の美女などいない。ナオ・シバザキだ。


 二十九歳、ぎゅっと一つにまとめた何の変哲も無い黒髪、これまた何の変哲も無い黒い瞳、適当なスキンケアしかしていなからそれなりの肌だしプロポーションだって完全にドレスに呑まれている。


「これはイベントをやらねばと思いすぎて白昼夢でも見ているのだろうか?」


 やけにリアルな感覚(特にお尻に響くガタゴト感)に、ついにゲームに対して思い詰めすぎた悲しい喪女の末路なのではとおののく。


 キュッと突然馬車が止まる。


 馬が引いているわりにはスムーズに止まり、一瞬止まったことに気がついていなかった。


 ガチャと扉が外から開かれ、礼服を着こなした男がさっと手を差し出した。


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