どこかへ到着いたしましたわ
三人も殺っちゃったら、この世界の法律はわからないが、日本の法律では正当防衛を超えて過剰防衛で裁かれる案件だわ。
それに以前の時はいきなり最大出力の魔力を出して倒れてしまったのだから、今は慎重にいかなければ無防備に倒れては元も子もない。
では誰か一人を見せしめに、など考えながら一番強そうな男を吟味する。そいつを倒せば他の男も引くだろうと目星をつけながら。
だがアンジェリカが思っているより男たちは無茶はしなかった。
「おいおい、おじょーさんには触るなって言われてるだろ、やめとけ」
「わかってるって。俺も命は惜しいからな」
そんな会話をしている二人を背中に、一人の男が私に話しかける。
「お貴族様よ、一旦全部ほどくからこの部屋の中では好きにすればいい。隣に風呂とトイレもある。飯はあとで運んでやる」
(あー、このセリフね。めっちゃ聞き覚えあるわ)
誘拐されたのにやけに待遇いいよね、と思ったから記憶に残っていた。多分、ここは国境付近の山の中にある廃村の中の一軒家だ。
これはヒロインの誘拐事件の時のシーンそのままだ。
やはりタイミングはかなり違うがヒロイン誘拐事件のイベントのようだ。それがなぜ自分が? と悩む。
「あ、ちなみにここは強~い魔法が施されてってよ、逃げることもできないし音も外には聞こえないようになってんだ。変な考えはやめときな」
うん、それも確かヒロインちゃんに言ってたと思う。なるほど、それで待遇がいいんだねって納得したからさ。でも! 自分がここにいるのは納得できないんですよー!
この後の展開としては一晩この家に泊まってからまた馬車に乗せられて国境まで連れて行かれる。そこで殺されそうになるヒロインを間一髪で国軍を総動員し率いてきたリゼル王子が登場する。きゃー、推し登場!
ここではシャリル王子も水の魔法で戦い、さらにガゼル卿がチート能力発揮して敵をバッサバッサと切り倒して、もうそりゃ格好いい男たちの活躍が見られる至福のシーンの連続だった。
思い出してうっとりしてしまうわ。
ほわわわ~んと素晴らしいシーンを思い返して気の抜けた顔の私に、男の一人がニヤリとしながら言った。
「ま、風呂でも入ってせいぜい綺麗にしておきな。ご主人様があんたに会いに来るってよ」
「ご主人様……」
麻袋に詰められていたせいで服も髪も乱れきった私を面白がるように笑って見下ろしながら、「じゃ、俺らは酒飲みに行ってくるわー、ごゆっくりぃ」とからかい混じりの声を残して部屋から出て行った。




