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そして令嬢は運ばれますわ

「エバンス、僕も捜査に加わりたい。いや、加わる。ここで待つことなどできない」


「はい、私も同じ思い……です……が……」


 最後が小声になってしまうのは、目の端にイヤでも入り込んでくる書類の山だ。

 ここでシャリル王子が不在となるとか……アンジェリカ様もいないとか……。


(うっ、私、耐えられるのだろうか。いや、ここが男の見せ所ですね)


 顔色を悪くしながらも、エバンスはシャリル王子が捜査に加わることの背中を押した。


 しかし捜査に加わることはリゼル王子の補佐官であるオースチンから頑固に断られてしまい、参加を許可されなかった。


 彼曰く「何者が関与しているかわからない今、王子殿下二人共に何かあってはなりません。お一人は王宮を守り、有事の際に指揮を取れるようにするべきです」とのことで、その意見に父である国王も同意したのだから、彼がわがままを通すことはできなくなってしまった。彼自身もオースチンの言葉の正しさはわかりきっていたからだ。


 廊下を力なく歩きながらシャリル王子は頭を抱える。


「また……彼女を失うことになるのか……?」


 それはもう耐えられない、と誰にも聞こえない声で呟いた。


 その頃、リゼル王子を引き留めた人物が、予想もしない意外なことを告げていたことを誰もまだ知らなかった。

 

 



 体が……い、痛い。舌も噛みそう……辛い。


 私は今、また馬車に乗せられて移動している。

 ただし馬車は馬車でも幌がかかった粗末な荷馬車だから、そのガタゴト感や貴族の乗り物の馬車とは雲泥の差、地獄の揺れだ。


(もー! だから馬車は嫌いなのよ)


 と言うか私、これ殺されちゃう感じなの?


 後ろ手に縄で手を縛られ両足も縛られ、口には猿ぐつわ、目の粗い麻袋に押し込まれて荷馬車の荷台にゴロリと無造作に寝転がされている。


(これ絶対に殺されるやつ――!)


 こんなことならおとなしくヒロイン虐めをして隣国のおっさん国王に嫁がされていればよかったわー、なんて反省モード。


 今、どれくらいの時間が経過し、どこまで運ばれているのかわからないけれど、そろそろ止まってくれないと体が限界です。



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