幕開け直前ですわ
あっ! もしかしたらヒロインとの仲を発表することが重大発表?
ゲーム内では今日の舞踏会以降、王子とヒロインの仲がどんどん深まり、ヒロインが周囲には虐められたりしながらも王子は彼女を守りながら王を説得して婚約に至るのだが、もしや前倒しになったのかな?
頭の中で考えがグルグルと巡っている時、視線の先に数人の令嬢の姿が見えたので私はエバンスに一言断り彼女たちの方へと歩み寄る。
「ごきげんよう、皆様」
令嬢の中心にいたのは、ピンクと白の華やかなドレスを纏ったミキール・タニターノ令嬢だ。私には受付嬢のミキちゃんにしか見えない令嬢が率先して挨拶をする。
「アンジェリカ様、ごきげんよう」
軽く膝を折り挨拶してくれる令嬢の皆様に向けて私は微笑む。
ここに集う彼女たちはゲーム内ではアンジェリカの取り巻きだったはずだ。一緒になってヒロインをあざ笑ったりバカにしたりと、なかなか性格の悪さを見せつけてくれた方々だが、今は特にヒロインに絡んでいる様子はない。
「ミキール嬢、先日のお茶会の時のこと、感謝しているわ」
サッと顔を強ばらせたミキちゃんだったが、すぐにそれは社交辞令でも嫌みの言葉でもないと気がついたのか、ホッとした様子で口を開いた。
「いいえ、わたくしは見たままのことをお伝えしたにすぎませんわ」
「それでも勇気のある行動でしたわ。助けていただきました」
感謝の言葉を述べたが、すぐにミキール令嬢はクッと意志の強うそうな瞳に力を込めて口元を扇子で隠して言った。
「あんな礼儀知らずに王子殿下を奪わせませんわ。アンジェリカ様であれば諦めますが、あのような男に媚びる令嬢など、わたくしは認めませんことよ」
声をひそめたふりで周囲にも聞こえるだけの声音で告げる。
うーん、こちらのミキちゃんもかなり肝が据わった方ですこと。
ふふっと笑いが自然にこみ上げる。この女子のやりとり、なんだか懐かしい。
彼女が獲物を狙う鷹のように見えるが、それが力強く頼もしく感じる。
ゲームをしていた身としてはヒロインと王子が惹かれ合うことは知っているけれど、あの計算高いヒロインよりもミキちゃんとの方がリゼル王子とお似合いに思えてしまい、彼女を応援したくなる。
「ミキール令嬢、頑張ってくださいませ」
少し意識して高慢な笑みを見せると、それが嫌みなのか本心なのか真意を測りかねると言いたげに眉根を寄せた。
目一杯着飾り自分をアピールする愛らしい彼女たちへ、軽く頭を下げてから私はエバンスの隣へと戻ると彼は私に耳打ちした。
「そろそろ時間ですよ」
いよいよ、王子とヒロインの登場だ。
ここからヒロインを取り巻く怒濤の展開が本格的に始まる。
少し胸を高鳴らせて、王子様の登場を待つ。
すぐに、王族専用の扉が開かれるや先触れを叫んだ。




