それは正しいつぶやきですの?
だが私の愛が得られぬのならいっそ結婚はせぬとそこまで希うほど、私を愛してくれているアンジェリカ嬢には時間をかけてでもきちんと応えていきたい。
条件だけで選んだと思われぬように。
まずは婚約者に決定してあげれば安心して喜んでくれることだろう。
だから今度の舞踏会の時に皆の前で盛大に婚約者決定を宣言しようと思っていたのに、なぜか私があのココア・モスドナルド令嬢をエスコートし婚約者にするとの噂が、私の周囲で持ち上がっていた。
なぜ根も葉もないそのような噂が持ち上がったのかわからない。確かに聖なる癒やしの魔法は貴重で王家に取り入れたいとの思惑は理解できる。
だが私の妃はアンジェリカ嬢とすでに心を決めているのだ。誰がどのような思惑でそんな噂を流したのか。
しかもそれが当のアンジェリカ嬢の耳にまで届いていたとは。
アンジェリカ嬢の方から私に会いたいとしたためられた手紙をもらった時、これはデートの誘いだとピンと来た。
やはり彼女は私のことを諦めるつもりなどないのだろう。わかっている。もとより彼女が私を諦めることなどありえないだろう?
王宮の中で一番綺麗で二人きりになれる雰囲気の良い場所を、と温室を選んだ。
温室での二人きりのささやかなデートはかなり私の好意を伝えられたのではないだろうか。
心配そうにココア嬢との噂について肩を震わせながら問いただす彼女はとてもいじらしく愛らしく見えた。もう一度言おう、いじらしくて愛らしかったのだ。
以前よりもドレスも化粧も控えめになれば、威圧感が薄れ彼女本来の可愛らしさが見て取れるようになっていると、思わず見つめてしまった。
きっちりと噂を否定した私に、「思慮深いリゼル王子が軽率なことはなさらないと信じてはいたのです」と、私を信じていると、そう心から告げて笑ってくれたアンジェリカ嬢のなんと美しかったことか。
それに全て上手くいくと、そう励ましてくれる彼女の言葉がどれほど心強く私を後押ししてくれたことか。
最後に私へと向けた彼女の眼差し。あれほど愛しさを溢れさせて私を見つめる人に出会ったことはなかった。
それほど私を愛している彼女……。
きっと彼女を愛するようになれると確信する。すでに愛おしさを感じ始めている。
私に無償の愛を注いでくれるアンジェリカ嬢を喜ばせてあげたいのだ。
舞踏会の日にはこの喜ばしい宣言をあまねく知ってもらうために、父には駆けつけてもらえるように手紙を書いて送ろう。
グラデュラス公爵家との縁談だ、きっと父も喜んでくれるだろう。
そうだ、アンジェリカ嬢が喜びに泣いてしまうかもしれないから、ハンカチも用意をしていかなければない。
「あの燃えるような紅の髪を、今なら愛おしいと思える気がする。ああ、きっとアンジェリカ嬢は今も私のことを考えているに違いない。もう待たせたりしないから……」
王子の、自分に酔ったような呟きは静かな王宮の夜の闇に秘めやかに溶けていった。




