続・王子様はつぶやくのですわ
彼女の手から猛烈な勢いで炎が放たれ、その先に黒フードの男たちが銃を構えているのが見て取れた。
銃声が響くと同時に炎がそれを防いだ。
そのまま私の上で意識を失った彼女が何をしたのか最初はわからなかったが、理解すると同時に驚きに満たされた。
(私を……庇ってくれたのか?)
あの高慢な彼女が?
自ら危険を顧みずに私を守り、その上で攻撃を返して……そんなことを彼女がしてくれたのか?
じわりじわりと心の中で奇妙な感情が広がり出す。
誰にも尊重をして貰えなかった自分。地位や利権にしか目がない周囲の人たち。命の危険に庇ってくれる母のような存在などどこにもいないと理解していたはずなのに。
(私を守ってくれた。必死になって駆け寄ってくれた。あの気位の高いアンジェリカ嬢が、危険を冒してまで……)
なぜか心が酷くざわめく。このざわめきの正体はなんなのだろうか。
未だに彼女に対しては怖さもあるし、避けたい気持ちもある。
だが、もう一度きちんと会いたいと願ってしまう。
なんとか会う方法はないかと思案している時、弟のシャリルが部屋に来た。
「兄上、アンジェリカ嬢のことで話があるのですが」と笑いながらもどこか私に挑むような眼差しを向けながら話を切り出した。
「王宮に呼び出しましょう。昨日の重要参考人ですよ。事前に何かを察知したような行動やあの炎魔法なんか、聞かなければならないことがありますよね」
そうか、事情聴取として呼び出せばもう一度彼女と会える。きちんと話をしたい。
だからシャリルの提案に乗ったのに、なぜだろう。どこから間違えたのだろうか。
婚約者候補を降りたいだのシャリルの秘書だのと、考えてもいなかったまさかの展開になってしまい結局彼女とゆっくり話すこともできないままだった。
彼女を目の前にすると、どうしても少し萎縮してしまう自分をどうすることも出来ず、つい尊大な口調で突き放したような態度になってしまっていることは自覚する。
お茶会の時も別に彼女が一方的に悪いと思った訳ではないのに、つい彼女の迫力に負けぬよう虚勢を張るような態度を取り、しかも疑うような言い方になってしまったことに後悔しきりだった。
今、彼女を愛することができるかと問われると、まだはっきりと頷くことはできない。
だが側にいて支えて欲しいと願うのは彼女だけだ。あの日、全身で私を守ろうとしてくれたただ一人の人。ぬくもりさえ知らぬ母のような存在になってくれるはずの人。
(アンジェリカ嬢は私が公爵家の後ろ盾のためだけに結婚を望んでいると誤解しているようだ。だからあのように候補から外してくれと要求するのだろう)
もちろん後ろ盾を願うその下心がないとは言えない。いや、それは大いにあると言える。
それにあれほどの魔力を持っていることも王家として心惹かれる。




