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タクシーって馬車ですの?

 危ない。

 

 この男は二次元にも通じる顔立ちだ。だから危ない。

 もう見ないようにしなければ、これはちょっと酒の回ってきた喪女には厳しい戦いだ。


「柴崎先輩って……」


 そこで言葉を切ると、成瀬はこちらを覗き込むように顔を傾けた。が、私は頑として背筋を真っ直ぐに伸ばして前を見つめる。

 絶対、こいつの顔は見ない。そんな決意をしながら。


 ひたすらエンジン音が響くシーンと静まったタクシーの中、私は心の中で突っ込む。


(おいい、続きはないのか!)


 柴崎先輩って……、から先がない! 気になる!


 チラリと横目で成瀬の方を見やれば、やつは寝ていた。


「……え、寝てるとか」


 はああ、と大きなため息を吐き出して、私は頭を抱え、肩を震わせた。


(か、可愛いかっこいい!)


 目を閉じた成瀬は、可愛さとかっこよさが相まって、垂涎、いや鼻血もの。彼なら俳優としても見劣りしないだろうに。

 目を閉じていると整った目鼻立ちは、今やっている異国の王子たちとが出てくるアプリゲームの王子の一人に似ているようにも見えた。


(そうそう、私の推しのリゼル王子の弟王子、シャリル王子にどことなく似ているなー。朴訥で誠実な兄王子と正反対な人たらしで軽い性格の第二王子に、うん、似てるわー)


 相手が寝ていることをこれ幸いと寝顔をじっと見つめ、ゲームのことを思い出すと、またソワソワしてきた。


「もう成瀬寝ているし、ちょっとだけ進めてもいいか」


 さすがに人前で乙女ゲームをするのは、いい大人として自制しているが、隣の成瀬はすやすやモードなのだ、ここでちょっとくらいやっても大丈夫だろう。


 スマホを取り出してアプリを開くと、いきなりいつもの音量でBGMが流れ出したので、慌てて音量を最小限に絞ってから今日のタスクを開いた。

 


 タクシーから降りた記憶はない。


 ただいまのわたくし、ここはどこ? 状態になっている。


 タクシーの中で成瀬が寝ているからとこっそりとアプリを開いてイベントへ入ろうとしたところから記憶がない。

 あれっぽっちの酒量で酔って眠ってしまったのか、それとも悪の組織にでも麻酔薬でも嗅がされたのか? 本当にぷっつりと記憶がない。


 しかも目が覚めた今、私はタクシーでの中ではなく、信じられないことだが、どうやら馬車に座っていると思われた。


 ガラガラガラと派手な車輪音が響き、サスペンションもないのかゴトゴトと不快な振動がお尻に響く。


「馬車って、狭いし乗り心地わる」


 さんざんアプリゲームで見た馬車と同じ内装なので、これが馬車だとすぐに気がついた。


 本来はヒロイン(自分)が攻略相手と一緒に乗り、好感度が上がれば額にキスなどもらえてしまう特別な乗り物なのだ。


 ところで、タクシーって馬車でしたっけ?

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