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不安しかないのですわ

 この世界に来てから怒濤の日々で、この先の自分のありようが何も考えられていなかった。この先……か。


 できれば元の世界に戻れるのが一番だが、それが無理ならば目立たず騒がずに穏やかに過ごさねばならない。

 すでにヒロインとトラブル予感のフラグが乱立しているので、これを避けながら生きねばならない上に、どうやらアンジェリカの自宅も生死の戦いの最前線らしい。


 ここは紛争地の地雷原かっ!


 やっぱり元の世界にはなんとしても戻らなければと強く思う。

 そんなことを考えていたから、目の前で二人がボソボソと「急がないと」とか「兄上を出し抜くには……」など何やら話し合っていたことなど、全く気がついていなかった。


 だから「今から間に合うドレスショップをエバンスは探して。なんとかするからね、アンジェリカ嬢」という成瀬の言葉の意味が理解できなかった。


「?」


「もう来週だから既製品を手直しになりますが、グラデュラス公爵令嬢でしたらどんなドレスも着こなせるでしょう。もちろん我がシャリル王子殿下も然り」


 これで完璧! とエバンスが叫んだ言葉に、私は一抹の不安を覚えた。


「ちょっと、今の話の流れを私にも説明してよ」


「ああ、来週の舞踏会のアンジェリカ嬢のドレスを僕の方で用意するって話だよ」


「え、なんで? 要らないわよ。私はその日体調を崩す予定だもの」


 即お断りしたが、成瀬は首を横に振った。困ったことに、と前置きをしてとんでもない事を言い出した。


「その日、兄上はアンジェリカ嬢を婚約者に選んだとみんなの前で発表するつもりらしいんだ。噂だけど、割と信憑性ありそうなんだ。その婚約発表を阻止するために必ず僕と出席しないといけないよ」


「はああああああ!?」


 あいつ、アホか――――!!!

 勝手に発表するつもりになるなぁぁぁ!!!


 唖然とする私はぐったりとソファーの背もたれに倒れ込んだ。


 どんな展開よ、これ。


 今回の舞踏会ではヒロインにドレスを贈ってお揃いのスタイルでエスコートしてくるはずでは? 確か紅茶事件後すぐの舞踏会だったもん。どこでこじれたの、これ?


 それでシャリル王子とエバンスの計画はこうだった。


 アンジェリカのドレスをシャリル王子の瞳の色にして、シャリル王子のデザインと似通わせ、アンジェリカはリゼル王子ではなくシャリル王子を選んだと思わせる作戦だと。


「それもイヤよ」


 社交界はすぐに噂になる。

 本当に火の気がなくても煙がモクモク立ち上るほどに噂に火がつくのだ。

 これでシャリル王子と噂になれば、なんだか更にややこしいことになる未来しかない。

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