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寂しさを覚えますわ

 だがこの世界では女性は結婚をするしか選択肢がない。仕事は男性、家庭は女性と分業がはっきりとしている。


 特に結婚をしない貴族女性は聖職者となり一生を修道院で過ごすしかないのだ。だから若くして死別したり離婚したりした女性は、嫌でもまた別の男性へと嫁ぐしかない。

 庶民でも老後保障などの手厚くないこの国では、老後のために子どもを産むしかない。子どもに迷惑をかけたくない、なんて殊勝な考えはこの国ではあり得ないのだ。


(福祉が整っていないから女性に厳しすぎるわ。特に独身女性には人権がないも同然だし。私は独身を謳歌したいからこの世界からはなんとか脱出しないといけない)


 決して男尊女卑な風潮もなく女性への扱いが低い訳ではないので不本意な婚姻だと離婚も出来る。だがその後はどうしても条件の良いところへ嫁ぐのが難しいから不満のある結婚生活を我慢する女性も多い。


「何か考え事? 仕事で困ったことでも?」


 私が黙ってカップの中を見つめていたからか成瀬が問いかける。

 さっきの本の時でもそうだが、彼は自分が忙しくとも周囲にちゃんと目が届く人だ。そして気遣いのできるできた男だ。


 だが! 年下、王子、イケメン、筋肉。


 絶対に近寄ってはいけない部類の相手だ。間違っても好意など抱いてはいけない。

 私はフッと小さく笑みを浮かべ首を傾けた。


「仕事が案外楽しいと思っていたの。でもきっとこの時間は期限付きで……私はいつかここから出て行かなきゃいけないから」


 そう思うと、少し寂しいかも。と続けた瞬間、二人が同時に息を呑んだ。


 なぜ? そんなに驚く?

 疑問に思うほど二人はとても驚いた表情をしていた。


 エバンスに至っては驚きすぎて顔から血の気が引いている。漫画であれば縦線が顔に書かれているレベルの顔色だ。

 成瀬も目を丸くして時間が止まったように動きを止めている。


(そ、そこまで変なこと言った? え、言ってないよね?)


 自分の発言を振り返るが、そこまでおかしなことを言った覚えはない。


 多分、王の外遊が終われば執務は王に戻り、この王宮に公爵令嬢のアンジェリカが留まっている不自然は解消されて、そうしてこの執務室に来ることもなくなるんだろう。


 その時、私はきっと寂しくなるだろう。


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