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数字は語るのですわ

 机に向かいひたすらサインを記入している成瀬と補佐官エバンスが揃って顔を上げ、どれどれと書類を覗き込む。


「この王家直轄地の地方財源の中で、西部地方だけ他と桁が一つ違うの。ここ数年ずっとこの数字だけど、別に不作の食糧難や人口増加とか要因がなさそうなんだけど」


「ああ、西部地区か。確か隣国との小競り合いがあるからと、兵力配備のために数年前に増額したんだが……確かに最近は隣国ともめていないはず」


「それに兵力を増やしたために発生する費用などの詳細も上がっていませんね」


 二人してパラパラと書類をめくると、どんどん眉間の皺が深まっていく。

 これは……と二人で顔を見合わせた。


「不透明な資金の流れがありそうですね」


「うん、これらの全てがシュバリエ大公の承認となっている」


 おっと、出ました。先日の襲撃の黒幕、国王陛下の弟のシュバリエ大公の名前が!


 この大公はゲームの中では最後にしか顔を見せないラスボス的な存在だが、暗殺だのヒロインの誘拐、果ては密輸だのと、なかなか悪いことをしでかす奴だ。イケオジだけど。

 それもこれも第一王子のリゼル王子を失脚させて第二王子であるシャリルを王位に就かせたいためだ。

 なぜなら大公はシャリル王子の母である現王妃を幼い頃から好きだったのだ。

 だが残念なことに彼女は大公にはなびかず、リゼル王子の母である前王妃が亡くなるや十八歳ですぐに彼の兄である王に嫁いでしまった。そのことで大公は闇落ちしてしまった。


 思考をこじらせた彼は、自分は兄である現王よりも彼女から愛されるべきだったのにと思い込み、愛する人を奪った王から王位を、彼女が産んだ息子シャリルへと取り戻すべきだと様々な陰謀を企てる。

 拗らせすぎているし、若干ストーカー気質があるような気がする。


 失恋が手痛いものだとは身を以て知っている。だがそこに留まっていても何も進まないことも、世の中には他にもたくさんのことがあるとも今の私は知っている。


(ある意味、可哀想な人よね)


 しかもリゼル王子にはない魔法の力をシャリル王子が持っていることを知ってからの大公は暴走気味になっていく。正当な王位継承者はシャリ王子ただ一人だと。


「これは精査する必要がありそうだし、監査官を西部地区に派遣し調査を依頼しよう」


「大公の承認を得ていますが、そこまで殿下が決断をして大丈夫でしょうか?」


 心配そうなエバンスの瞳が眼鏡の奥で揺れる。この補佐官、嫌みなことも言うけれど、心からシャリル王子に仕えているのだろう。


「父上からは一任されているから大丈夫だと思う。エバンス、監査官と話をしたいから呼んできてくれる?」


 この指摘が後に大事件に繋がることになるとは、この時誰も気がついていなかったのだ。


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