とんだご提案ですわ
リゼル王子の時に、顔だけでなんとかなると思うなとか心の中で啖呵切ってたけど、この横顔にはグラリとしそうだ。
可愛いかっこいい顔、心をくすぐる甘えた態度。こいつ……あざといっ!
あざといとわかっていても心が揺れそうになるから、私は精一杯の言葉を喉から絞り出した。
「アアア、アロマオイル、がね? その、あの、アロマだよ、だから……私っていうか、アロマがねグッジョブでね」
もう何を言っているかしどろもどろの極地だ。
ふっと笑う気配がする。きっと成瀬に笑われたのだろう。
少し悔しい。
後輩なのに……年下なのに、翻弄されている気がして悔しい。
「だから兄上にはあなたとの婚約者候補解消をするように言ってきた」
あ、なんか話が元の軌道に戻ったようで少しホッとする。
「でも兄上は首を縦に振らなかった。それほどあなたに執着しているなんて予想外だった」
「私に執着じゃないわ、公爵家の後ろ盾に執着でしょ。でもどうせ最後にはあの令嬢と結婚するんだから、遅かれ早かれ私は捨てられるんだけどね。それは仕方ないのよ」
ガバッと唐突に成瀬が顔を起こしたので、肩の辺りが一気に軽くなる。
それを少しだけ寂しいと思ってしまった自分の気持ちは奥底に追いやっておく。
成瀬、というかシャリル王子のグリーンの瞳が大きく見開かれ私を見つめる。
「仕方ないって、もしかして兄上のこと……やっぱり好きなの? あれほど婚約者候補から外れたいと言っていたから安心していたのに」
「やっぱりって、全然好きじゃないわ。推しだった気持ちもこれっぽっちも残ってない」
「じゃあ僕と婚約してよ。それなら穏便に婚約者候補から外れることができるから」
「はああああ!?」
盛大に声を上げてしまい、もう夜遅いことに気がついて慌てて口を押さえる。
兄の婚約者候補がいきなり弟と婚約するとか、どう考えても穏便じゃあないよね?
それにだいたい結婚したくないから婚約者候補から外れたいのに他の人と婚約したら意味ないよね?
こいつは……こういうことを軽々しく言うんだから。
確かにシャリル王子は軽くてプレイボーイキャラだけど、その中身はヒロインに一途でギャップ萌えが売りだったのに、こんな雰囲気の中で軽口を言うなんて。
彼の軽口を信じてしまう令嬢が不憫だわ。ヒロイン以外には本気にはならない人なのに。
「政略結婚はお断りよ」
きっぱりと告げると成瀬は余裕そうに笑った。




