酔ってらっしゃるの?
思わず額を押さえながらワインを一気にあおる。色々聞きたいことや謎が深まってしまったことに困惑を隠せない。
「ちょっと色々と整理させて。まず成瀬から見た私はアンジェリカにしか見えていないってこと?」
「う~ん、なんと言うか、もちろん柴崎先輩の姿も見えているんだけど、アンジーが重なって見えるというか……、説明が難しいな」
うーんと考え込んでいるが、最近、成瀬とシャリル王子が重なって見える現象と同じ事かと推察できた。
(そうか、成瀬は最初からこんな風に見えていたんだね)
「うん、そこは理解できそう。最近成瀬の顔がシャリル王子と重なって見えるようになってきたから、うん、わかる。それで言うとさ、成瀬にはミキール・タニターノ令嬢はどんな風に見えているの? 私には受付嬢のミキちゃんだかに見えているんだけど」
見慣れた美人さんのミキちゃん(マキちゃんかも)に見えた令嬢は元々シャリル王子だった成瀬にはどう見えているか気になった。
「あの受付嬢を初めて見たときは驚いたよ。タニターノ令嬢が座っていたからね。僕には茶色の巻き髪、淡いブルーの瞳の気の強そうな令嬢に見えていたんだ」
「そうなんだ、不思議だね。でもあのタニターノ令嬢は元の世界のことは何も知らない感じじゃない?」
「僕があの世界で見た感じではあと数人、こっちの人と思われる姿の人がいた。すれ違うだけの人にも、会社の人にも。あとカフェなんかで見かけた人とか」
「え、会社の人、他にもいたの?」
「でもあの世界では僕だけがこの世界のことを知っていて、みんな何も知らない感じだった。そしてこっちに戻ってからは、あの世界のことは僕と先輩だけしか認識していないみたいだから……」
そこで言葉を切ると成瀬はワインを一息に飲み干し、それから私の肩に頭を預けた。
「僕はアンジーさえいればいいんだ。他の人なんか関係ない。同じ記憶を持ってここに戻れたことが、それだけお互いの魂が引き合っているんだって」
「ちょっと、な、なに? 酔ってるの?」
いきなり雰囲気が変わった成瀬に私はあたふたして身を固くする。
肩にかかる重みに緊張しながら、カチコチになっているばかりの私の手に成瀬は手を重ねて来た。
「アンジー、良い香りがする。引き込まれそう」
(のお――! NO――! ぬお――!)
ちょっと、ちょっと、ちょっと!
この雰囲気はアラサー喪女には刺激が強すぎMAXです!
ガゼルからの甘い言葉にはなんとか耐えられたけれど、この体勢、この部屋の雰囲気、そして相手が成瀬となるとちょっと心臓がやばい。




