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続・夜のお時間ですわ

 芳醇な香りが口の中に広がり、適度な酸味が喉元を過ぎる。その心地よさの中で聞き慣れた成瀬の声が耳に響く。


「せっかく二人きりになれた夜なんだから、そばにいたいって思うの当然だよね」


 この軽口め。その顔でこういうことを言うから、シャリル第二王子は軽薄だってイメージになっちゃうんだよ。

 奴の言葉は軽く聞き流し、さて、どのことから聞こうかと迷いながら少し言葉を探す。


「色々と聞きたいことがあるけど、とりあえず一番聞きたいことは元の世界への帰り方だわ。成瀬は知っているの?」


 成瀬は何度か軽く頷き、それから彼もワインを一口含む。


「んー、それについては……実は僕もわからない」


「じゃあ、成瀬も気がつけばいきなりシャリル王子になっていたってこと?」


「僕の場合は、先輩とはちょっと違うな」


「違う?」


 成瀬の言った意味がわからずに眉根を寄せた私を、真っ直ぐに見つめてくる瞳がなぜか美しいグリーンの色をしている。


(なぜ?)


 時々、成瀬がシャリル王子の姿と被ってくるしまうことがある。成瀬なのかシャリル王子なのか、一瞬見紛うこともある。

 その理由を考えていた私は、成瀬の意外な言葉に目を見開く。


「気がつけば、成瀬春人になっていた、ということかな」


(……え? じゃあ、あの営業から来た好青年の成瀬春人の中身がシャリル王子だったってこと?)


 そんなパターンがあるの!?

 この中世ヨーロッパのような世界から、現代にって……


「あああ、相当苦労したんだろうね、成瀬。いきなり見知らぬ世界に飛ばされて」


 この世界はゲームの世界として私にとっては全く見知らぬ世界ではないが、シャリル王子にとってあの元の世界は全く未知の世界、その苦労たるや半端ないことだろう。

 同情した私に成瀬はニコリと笑みを浮かべる。


「それよりアンジーは、やっぱり元の世界に戻りたいの?」


「アンジーって……いきなりのあだ名呼び? 相当親しくないと呼ばないんじゃないの?」


「二人きりの時はそう呼ばせてよ」


「逆に二人の時は先輩でいいのに」


 呟くと成瀬はゆるゆると首をふる。


「いや、僕には柴崎先輩は最初からアンジェリカ・グラデュラスにしか見えていなかった。最初に配属された時、まさに運命だと思った」


 ええええ!!!

 またもや爆弾発言ですよ、皆さん!


 私が、元々、アンジェリカ?

 どう言うこと?


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