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判明いたしましたわ

 少しだけどこか隙間風を心に感じながら第二王子の執務室の扉を開いた瞬間、私は「あ――――!」と盛大に叫んだ。


 書類整理に精を出すエバンスと、その奥でデスクワークを続けるシャリル王子こと成瀬の顔を見た瞬間に思い出したのだ。


「ミキちゃん!! いやマキちゃんだっけ!?」


 そう、先ほど庇ってくれたファーストダンス令嬢、ミキール・タニターノ令嬢。

 彼女が受付嬢にして、あの日の飲み会に参加していた独身女子社員だったことを!

 どっかで見たことがあると思っていたが、まさかの元の世界の人だったとは!


(ミキールだからミキちゃんかな?)


 あの鷹のように成瀬を狙っていた美女さんだ。


「な、なにかありましたか? グラデュラス公爵令嬢」


 私の叫びにビクッと怯えたエバンスが問いかけてくるが、彼に事情を話すわけにはいかない。後で成瀬に色々と聞きたいところだが、彼は現在目元にクマがくっきりと浮かんでいるだけに、時間を取らせるのが申し訳ないところだ。

 部屋の中にまた書類の山が増えているのは、やはり細胞分裂で増殖しているに違いない。


「やけに早い戻りだけど、なにかトラブルでも?」


 疲れ切った顔を上げて成瀬が問いかける。なぜかその顔は成瀬よりシャリル王子の面影が強く感じられた。


「トラブルね、そうねえ」


 用意された自分のデスクに書類を運びながら何でもないようにさらりと告げた。


「リゼル王子殿下が私と結婚すると宣言したわ。私に拒否権はないとか」


「「は?」」


 同時に上がった二人の声を無視して書類の仕分け作業に入りながら続ける。


「もちろんお断りしてきましたけど」


 ツイと顔を上げた私は、ぽかんとこちらを見ている成瀬を睨む。


「どうにかしてよ、あなたの兄でしょう? もう本当に結婚とか勘弁して欲しいのよ。あのファストフード令嬢にし付けて譲るから、あなたからも言ってよ」


「ファス、ト? のし?」


 聞き慣れない言葉にエバンスが戸惑っているが、成瀬はしばし絶句した後にブハッと吹き出した。


「ちょ……ファストフード令嬢とか……いや、ははは、ちょっと! 面白すぎ!」


 笑いが止まらないようで、しばらく笑い続けていた。

 それから「久しぶりに笑った。うん、わかったよ、なんとかしてみよう」と頷いた。


「だいたいリゼル王子殿下はほとんどの仕事をこちらに回してきて、自分は視察だと称してよく街へ出ているんです。今日だってお茶会があるからと全ての仕事をこちらに運んできましたし、この際、仕事ができるアンジェリカ嬢は譲ってもらいましょう。交渉してください、シャリル王子」


 エバンスの言葉に苦笑する。


(やっぱり仕事してないのかーい、第一王子!)


 やけに余裕そうだなぁとは思っていたし、やけにこの部屋の書類が多すぎる気がしていたけど!


(リゼルぅぅぅ仕事しろよ、仕事。こっちに回すな――!)


 もう王子と呼ぶ気も失せてしまっていた。

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