王子が強気ですわ
「だから今日のように他の令嬢に対する嫌がらせや、当てつけのようにシャリルの執務室に行くのはやめてもらおう。私の婚約者ならば品位を大切にしてもらわなければなら――」
「お言葉ですが」
強い口調でリゼル王子の言葉を遮る。
以前はいざ知らず今日の嫌がらせは無実だし、シャリル王子の手伝いも当てつけでもなんでもない。
こんなにアンジェリカのことを見ようとも理解しようともしない相手と結婚なんてたまったものじゃない。
こんな奴と結婚するなら、まだ隣国のおっさん国王の方がましでは? とまで思う。
金髪の髪が無駄にキラキラして、アイスブルーの瞳は吸い込まれそうに美しく、横顔など彫刻のように整っている……けど!
こんな奴と結婚できるか――!
人間、顔だけでなんとかなると思うほど初心ではありませんわ。
「何度も申し上げましたが私は婚約者候補から外れたいのです。つまりリゼル王子殿下とは結婚する気はありません。それに今日の出来事はミキール令嬢が証言してくれた通り、私は何もしておりません。私の話も聞かず、それさえ信じてもくれない相手に対して、私が結婚を望むことはありません」
はっきり、きっぱりと言い切ると、リゼル王子は目を見開きながら絶句し、はくはくと何度か口を開いて閉じてと繰り返してから、眉間に皺を寄せた。
「あなたは私に選ばれるためにつきまとっていたではないか。本気で婚約者になりたくないとは思えない。私の気を引きたいのはわかるが、これ以上、品のないことはしないで欲しいと言っているだけだ」
ちょっとー、この人、話が通じないんですけど!?
どう言えば理解してくれるの?
本気でこの国の先行きが心配。と言うか、リゼル王子は執務大丈夫なのか?
シャリル王子のところには山積みの書類仕事や決済仕事があったけど、この人はなんだか余裕に見えますねえ。まさか有能なの?
「とにかく私がアンジェリカ嬢を選ぶと決めた。あなたに拒否権はない。私と結婚するのは既に決定事項だ」
やけに強気に出てきたよ、この王子。
ヒロインは愛妾かなんかとして侍らせて、私は後ろ盾のためにお飾り王妃にでもなれと?
と言うか、おまえに拒否権はない、俺の女になるのは決定事項だって、あんた……独占欲的な? ただしイケメンに限る的なセリフですか?
いや、いくらイケメンでもこんなこと本気で言ってるならドン引きですわ。
相手の意見くらい聞けや、大人なら。いや子ども同士でももっと相手の意見聞けるよ?
だいたい、シャリル王子調査によれば、公爵家から殺されかけている私の現状を知らないのか、こっちの王子様は。リサーチ不足だね、全く。




