三文芝居上演中ですわ
そうだった!
この王宮のお茶会では、初めて参加したヒロインに向けてアンジェリカが紅茶をぶっかけた事件が起きるんだった!
それを取り巻きの令嬢がいい気味とばかりにあざ笑い、ヒロインは涙を浮かべるや、そこに王子が颯爽と登場する。
って、やっぱり来てるぅぅぅ!
ヒロインの背後からタイミングを見計らったようにリゼル王子が駆け寄ってきた。
ストーリー通りの展開だった。
「なんの騒ぎか?」
問いかけながら、視線がヒロインのドレスに落ちるや、私を睨んできた。
「これは……アンジェリカ嬢が?」
「いえ――」
「はい、いきなり紅茶を私に……」
私の否定の言葉に思いっきり被せてきた。そしてフラッとよろめいて王子へとしなだれかかり、目にはうっすら涙が浮かんでいるがその口元にはほんのり笑みが見て取れた。
あ~、これわざとか。
彼女の意図が見えてしまって、なんだか一気にうんざりとした気分になってしまった。
ゲーム内では泣きそうなヒロインの肩を守るように王子がそっと抱き寄せるはずなのに、このヒロイン、自分から倒れ込んでますよ。あざといタイプか!
「なんだとっ、アンジェリカ嬢が? なぜこのような無体な真似を」
「いえ、私は何も――」
「皆さんが私を邪魔者にして……いいえ、わかっているのです。私のような下位貴族なのに王子殿下に見初められたのが皆さんは気に入らないことは。だからアンジェリカ様が笑いながら紅茶をかけるのも仕方ないことですが……私、怖かったですぅ」
また私の言葉を遮ってくるあざとヒロインが大きな瞳をうるうるしながら王子を上目遣いで見ている。
「このような悪意を向けられれば、それは怖かったであろうな。なぜこのような無体な真似をした、アンジェリカ嬢!」
おーい、他の人の意見も聞かずに決めつけるとか、この王子様大丈夫?
私の手元を見れば、私の紅茶が全然減ってないことわかるよね?
他の人にも聞かずにヒロインの言葉だけを信じるって、これってヒロイン補正ってやつなの?
もう紅茶じゃなくて酒をあおりたい気分だわ。
「そのようにアンジェリカ様を責めないでください。私のドレスが地味で皆様のお気に障ったのだと思いますの。このような地味なドレスしか持っていない私も悪かったのかもしれません」
全く悪いと思っていない口調だよ、このヒロインちゃん。そしてやけにドレス地味地味と連呼するなぁ。確かにシンプルだけど地味ってほどでもないと思うよ?
安くさい三文芝居を見せられているようで、ちょっと呆れている私は口を挟む気にもならなかった。
さっさと終われ、この三文芝居!
しかしここで芝居を続ける伏兵が登場した。
「お言葉ですがリゼル王子殿下、アンジェリカ嬢は何もされておりませんわ。わたくし、見ていましたが、そこの方が自分でいきなり紅茶をドレスにこぼされましてよ」
スッと立ち上がって異議申し立てをしたのは、舞踏会の時にリゼル王子とファーストダンスを踊っていた令嬢だった。




